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EP11 反逆

魔王軍幹部を消滅させた俺の脳内に、再び無機質なシステムアナウンスが鳴り響いた。


『――必須イベント《魔王軍幹部の撃破》をクリアしました』


『討伐報酬として、対象の所持スキル【【転移】】を獲得しました』


『次期フェーズへ移行します。イベント《元仲間への復讐ざまあ》が発生。対象に絶望を与え、カタルシスを獲得してください』


「……ほんと、どこまでも悪趣味なクソスキルだな」


俺はため息をつき、強烈な自我でスキルに干渉した。


「イベント《元仲間への復讐》を削除。俺はそんな安っぽいシナリオには乗らねえよ」


俺が強い意志で上書きすると、システムはピィンという悲鳴のような音を立てて沈黙した。


俺は先ほど幹部から報酬として獲得した上位スキル【【転移】】を発動し、かつて俺がアリアたちと共に暮らしていた屋敷へと跳んだ。


エントランスには、俺に冷酷な言葉を投げつけて扉を閉ざした三人の姿があった。


俺の姿を認めるなり、アリアたちが忌々しそうに口を開きかける。


「……あら、無能が何の――」


解除キャンセル


俺が指先を軽く鳴らした瞬間、彼女たちの体を縛っていた『追放イベントの配役』という見えない糸がプツリと切れた。


同時に、三人の濁っていた瞳に、本来の瑞々しいハイライトが急速に戻っていく。


「え……? あ、れ……? 私……?」


我に返ったアリアが目を瞬かせ、リルがキョトンと首を傾げ、マリーが静かに目を見開いた。


そして次の瞬間、自分たちが「自分の意志ではない何か」に操られ、俺に対して信じられないほど冷酷な言葉を浴びせて追放した記憶が蘇ったのだろう。


「アイン、様……? 嘘、私……私、なんてことを……っ!!」


アリアの顔面が蒼白になり、その瞳からボロボロと大粒の涙が溢れ出した。


「違う、違いますアイン様! 私、なんであんな酷いことを……ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」


「恩人、様……私、私……っ!」


リルもガタガタと震えながら嗚咽を漏らし、マリーすらも血の気が引いた顔で、深く頭を下げようとした。


自責の念と罪悪感でパニックになりかける彼女たち。


「ストップ」


俺は優しく、だがはっきりとした声で三人の言葉を遮った。


「謝らなくていい。お前らが俺を裏切ったんじゃない。俺に憑りついていたふざけた呪いが、お前らを無理やり操ってただけだ。だから、お前らには何の罪もないし、責任もない」


俺は【【アイテムボックス】】から、これまで荒稼ぎした金貨が詰まった袋をいくつか取り出し、そっとエントランスの床に置いた。


「俺はこれから、その呪いの大元と決着をつけに行く。お前らにはもう『主人公の都合のいいヒロイン』みたいなふざけた役回りは回ってこないから、安心しろ。その金で、これからは誰のシナリオでもない、自分たち自身の人生を自由に生きてくれ」


「アイン様……? 待ってください、嫌です! 私たちも一緒に――」


すがりつこうとするアリアに対し、俺はただ、憑き物が落ちたような穏やかな笑みを向けた。


「今までありがとう。元気でな」


それだけを言い残し、俺は彼女たちが駆け寄ってくる前に再び【【転移】】を発動させた。


視界が切り替わる直前、屋敷の扉の向こうで三人が俺の名を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、俺の心は驚くほどに晴れやかだった。 彼女たちを許したからではない。


最初から、彼女たちは被害者だったのだ。 罰せられるべきは、この狂ったシナリオを強制してきたシステムと、それを設計した『神』だけである。


「さて……いくぞ」


俺は誰もいない荒野で空を見上げ、深く息を吸い込んだ。 安っぽい復讐劇ざまあなどという寄り道は、完全に終わった。 ここから先は、真の意味での反逆の始まりだ。

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