プロローグ
お手にとっていただきありがとうございます!
可愛いヒロインが出てくるラブコメ系異世界モノです。ぜひお読みいただけると嬉しいです。
甘い香りが漂っている。
ルギャルー公爵家の広いキッチンにはありとあらゆる料理や菓子に対応した料理道具が揃っていた。どれも最強級品で見栄えも使い心地も抜群だ。
「カイノ様、材料が揃っております」
ルギャルー公爵家専属メイドが運んできた2段カートには最高級の食材が並んでいる。王宮御用達の小麦粉、最高級バターやシュガー、そしてフレッシュミルク。フルーツは形も色を美しく水が滴るほど新鮮で、手に取るとずっしりと重い。
「お嬢様、今日は何を?」
俺の視線の先には美しい令嬢がいた。優しい微笑みを携えた彼女はサファイアの瞳を俺に向けている。フィーリア嬢は、このルギャルー公爵家の次女。俺と同じ16歳で、俺の雇い主である。
「カイノ、私……ふわふわのシフォンケーキが食べたいわ」
「かしこまりました」
「あのね、盛り付けは二人分お願い」
「二人分ですか」
「そ……その」
彼女は何かを言いたげにこちらを見つめている。金色のロングヘアと薄桃色のワンピースの裾が少し揺れた。引っ込み思案で、口下手なご令嬢は俺を見つめるばかり。
しばらくそうして見つめあった俺とフィーリア、彼女の前にすっとメイドが入り込む。
「カイノ様、お嬢様はカイノ様と一緒にシフォンケーキが食べたいとおっしゃっています」
メイドの後ろに隠れ、こっちをこっそり見るフィーリア。俺と再び目が合えばぱっとまた隠れてしまった。
「俺はただの雇われパティシエですよ」
「一緒に……食べたい、から。カイノの作るスイーツはすごく美味しいから」
そういった彼女は恥ずかしそうに笑って見せた。かと思えばすぐにメイドの後ろに隠れてしまう。頬も耳も真っ赤になっているのは、数週間ぶりに外の人間と話しているからだろう。
彼女は、開花した<スキル>のせいで外出することができないから。
「わかり……ました。じゃあ、俺の分も用意します。あのお嬢様、フルーツは何がよろしいですか」
「私、いちごが好き」
「いちご、ですね」
「うん」
ぎこちない会話、ちらちらとぶつかる視線。彼女を見ていると美しすぎて見惚れてしまいそうになるけれどそれもだいぶ慣れてきたな。あっちは、慣れていないようだれど。
「カイノ、今日はここで貴方を見ていてもいい?」
「怪我をしたら危ないので、お嬢様はお部屋で」
「お願い、美味しいスイーツが出来上がるのを見ていたいのよ」
スッとメイドがフィーリアと俺の間に入る。
「お嬢様は、カイノ様と会話をもっと楽しみたい。とおっしゃっております」
「ち、違うわっ、クリスティン」
メイドに反論するも、メイドは彼女の本音を代わって言葉にする。
「お嬢様は、カイノ様を心待ちにしておられたでしょう。嘘はいけませんよ」
「んなっ……で、でもぉ」
うるうると涙をうかべ、メイドの肩をぽかぽか可愛らしく叩くフィーリア。どうやらメイドの言葉は図星だったようだ。
図星だったようだ……?
彼女は俺と話したくて、俺を心待ちにしてくれていたというのか? 庶民である俺を?
顔を上げて彼女を見てみるとラズベリーみたいに真っ赤になって、こちらを見つめていた。目が合うとまた隠れてしまうけれど。
「お嬢様はカイノ様がおす……むぐっ」
フィーリアがメイドの口を手で塞いだ。
「カイノ、やっぱりいいわ。部屋で待ってるわね」
「そ、そうですか」
「うん、また今度……その、うん」
フィーリアは、小走りで部屋の方へ戻って行ってしまった。残された俺とメイド。彼女はやれやれとばかりに肩をすくめた。
「貴方たちって本当にじれったいのね」
メイドは「はぁ」とため息をついて俺の前から姿を消した。
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