episode:36 最終章突入──誕生! 悪魔の戦隊
この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。
オープニングテーマ「your kind!」
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11月下旬某日、朝。
マンションの一室に響く、重く乾いた打撃音。
天井から吊り下げられたサンドバッグを赤いボクシンググローブが打ち続ける。
古森彰21歳。
かつて、日本ボクシング界期待の新星と持て囃された男。
その拳から打ち鳴らされる音に、あの頃とは違う血生臭い熱が込もる。
揺れるサンドバッグに、彰の飲み物を大会で禁止されている筋肉強壮剤入りのドリンクとすり替えた男が優勝記者会見で見せたにやけ顔が重なり、無駄な力を全身から集めた一撃が叩き付けられる。
歪な形に破れたサンドバッグから大量の砂が静かに零れ落ちる。
彰はそれをぎらついた目で見つめながら息を整える。
と、後方で何か小さな物が落ちる気配がして振り返る。
床に黒い帯に銀色の円形の金属が付いたブレスレットと、赤い人型にコウモリを思わせる顔と翼が付いた怪物の姿が描かれたカードが落ちていた。
「…………何だ?」
「夢幻戦隊ヨーカイジャー」
episode:36 「最終章突入──誕生! 悪魔の戦隊」
都内某所の国立大学。
無造作な黒髪に緑色の眼鏡、皺の目立つ白衣。
いかにも研究員といった出で立ちのこの男は捻木学20歳。
大学院長から告げられた言葉に数秒間呼吸を忘れる。
「えっ…………と、それはどういう…………」
大学院長は深く息を吐く。
「君はとても優秀な男だ。才能もある。努力もできる。それは大変素晴らしいことだ。だが、だからこそ、君にこのまま研究を続けさせるわけにはいかない」
「いや、え……」
学は頭を掻く。
「僕の研究は絶対、人の役に立つはずなんですけど」
「確かに、君が目指しているものは、人類の大きな夢の一つと言える」
「でしょ? だから……」
「しかし君は、我々が決して踏み込んではいけない領域に足を踏み込もうとしている」
「いや、でも、みんな喜ぶと思いますよ? 死んだ人が生き返ったら」
眼鏡のレンズをすり抜ける曇りの無い視線を浴びて、大学院長はまた深く息を吐く。
「とにかく、君の研究はもう終わりだ」
「なんでですか?」
「人の生き死には神の領域だ。我々がどうこうしていいものではない」
学は顎に手を充てて暫し考えを巡らせる。
「あ、じゃあ! 連れてきてください神様。僕が話して許可もらうんで!」
ぱっと明るくなった屈託ない笑顔。
研究資料、全データを没収され、学は大学院を追放された。
白衣のポケットに手を突っ込み、学び舎の門を出て空を見る。
「おーい! いるんだったら院長に説明してくださいよー! 僕の研究は間違ってないってー!」
その時、空から降ってきたブレスレットが学の足元に転がり、その上に緑色の金属的なオランウータンのような怪物が描かれたカードが重なり落ちた。
学はそれらを拾い上げ、カードに描かれた怪物をまじまじと見つめる。
「これは神様……………………じゃないよねぇ?」
関東某所、賃貸一戸建て2階の一室。
平日昼間、黒髪ショートヘアーの整った顔立ちの少女が、ベッドで布団に包まってピンク色のスマホをいじっている。
美山雫18歳。
SNSに流れるショート動画を3時間弱スクロールし続けたところで手が止まる。
軽快な音楽に乗せて同年代の少女が歌う「学校あるある」。
≪文化祭 ノリ悪い奴 マジうぜえ!≫
七五調のリズムと動画の少女の首振りが、雫の脳内に染み付いた忌まわしい記憶を引きずり出す。
あの日、雫は学年で一番人気の男子に告白された。
だが内向的な性格で恋愛はおろか友達付き合いすら碌にしたことがなかった雫は、どうすればいいかわからず交際を断った。
その翌日から、その男子に憧れていた数人の女子からのいじめが始まった。
始めは無視、そこから物を隠され、壊され、悪い噂を流され、直接的な暴言や暴力まで発展していった。
周りの同級生も、先生も、告白してくれた男子も、誰も助けてはくれなかった。
学校でロッカーに閉じ込められて浴びせられた言葉が雫の頭の中を飛び回る。
「美山~! ノリ悪いぞぉ~!」
「こいつ震えてんのウケるー!」
「オラ涼しくしてやるよ!」
「あーあ、可愛いお顔が台無しだね~」
「ウケるー!」
バケツで泥水をかけられた感覚、踏みつけられた痛み、それらが一人部屋に閉じ籠った雫の体に甦ってくる。
ほとんど無意識に、雫はSNSのコメント欄に同じ2文字の言葉を幾つともなく書き殴る。
≪死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね≫
送信ボタンをタップしようとしたその時、寝転んだ腰の辺りに何かが落ちてきた感触がして起き上がる。
見るとそこには、ブレスレットと、ドリル状の尻尾が生えたピンク色のレッサーパンダのような怪物が描かれたカードがあった。
「かわいい……」
関東某所、国道沿いの歩道。
フェンシングの情報が載った雑誌を読みながら歩く、青い目でブロンドヘアーの男。
ウルフ大原21歳。
前方から歩いてきた男にぶつかり、そのまま立ち去ろうとするが肩を掴まれる。
「おい待て、謝れよ」
立ち止まり振り向く。
「外人か?」
「お前……俺が外国人だからこんなことするのか?」
「は?」
「外国人差別だああああああああ!!!!」
「は!?」
掴み返し殴りつける。
「うわ!! やめろ!!!」
「差別主義者め!」
「何言ってんだやめろって!!!」
何度も何度も殴り続けていると、通行人が通報し警察が駆け付けた。
警官二人に取り押さえられながら、ウルフは叫び続ける。
「離せ排外主義者ども!!! 外国人差別だ!!! 人種差別だ!!!」
拘置所に入れられ、一人項垂れていると、床に何かが落ちる音に気付く。
そこにはブレスレットと、二本足で立つ青いオオカミのような怪物が描かれたカードが落ちていた。
都内某所、マンションの一室。
黄色い部屋着を着た金髪ロングヘアーの女が電話を掛けている。
奈雲衣歩(なぐも いふ)24歳。
「あの、私、一つしか注文してないんですけど……」
部屋には健康器具が入った通信販売会社の段ボール箱が山のように積み上げられている。
《あれ? おかしいですね、こちらには確かに30個ご注文されたと記録がありますが……》
「いえ、私は確かに一つしか…………もしもし? もしもし? も……」
電話が切れた。
もう一度掛けても繋がらない。
積み上げられた段ボールを見つめ、交際相手の番号に電話を掛ける。
「もしもし和樹君? 法事はもう終わった? あのね、ちょっと困ったことがあって……」
《カズくんどうしたの~?》
電話の向こうから知らない女の声。
《カズくんだ~い好き!》
電話が切れた。
暫く放心状態で段ボールに印刷されたよく分からない動物のキャラクターと目を合わせた後、部屋を出て外を歩き始めた。
昨日、通信販売会社の問い合わせ受付時間を過ぎてから届いた大量の健康器具。
その不安で昨夜はほとんど眠れなかった。
足も視界もふらつくが、衣歩はここで気分を変えなければまた今夜も眠れなくなる気がして、疎らな人通りの住宅街を歩いている。
一瞬、頭の中が真っ白になり、衣歩は冷たいアスファルトに倒れた。
意識はあるが動けない。
何とか声を絞り出そうとしていたところへ、通り掛かった50代くらいと思しき男が駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか!?」
返事をしようとするが声が出ない。
男が近くに設置されていたAEDを持ってきた。
ケースを開け説明を読んでいると、通り掛かった男と同年代と思しき女が男をスマホのカメラで撮影し始めた。
「何を撮ってるんだ?」
「あんた、AEDを使うフリして痴漢する気でしょ?」
「するわけないだろ! 人が倒れてるんだぞ!」
「怒るってことは痴漢する気だね? 痴漢しないなら怒らないはずだもんね?」
「何を言ってるんだ!!」
「やっぱり怒った。痴漢する気なんだ。動画撮ってネットで拡散するからね!」
「ふざけるな!!」
男は走り去り、女はそれを撮影しながら追いかけていった。
衣歩は顔も眼球も動かせないが、耳から入る情報で状況を知る。
(なんで……? なんでこんな目に合わなきゃいけないの? 私はただ、真面目に生きてきただけなのに。悪いこともしてないし、それなりに人の役に立ってきたつもりだった。なのに、これは何?)
残酷なほど静かな町。
その後は誰一人通り掛からないまま、衣歩の意識は薄れていく。
(嫌い……嫌い……みんな大っ嫌い。みんなみんな、消えてしまえばいいのに……)
気が付くと衣歩は自室のベッドにいた。
服も着替えてある。
そしてシンプルな柄の掛け布団の上に、ブレスレットと、魔法使い風の帽子を被った黄色いジョロウグモのような怪物の姿が描かれたカードが乗っている。
「夢……じゃないか……」
ブレスレットの手触りも、山積みの段ボールも確かにそこにある。
5年前、東日本某所の山道。
革木雅人38歳は、銀色の乗用車を運転し、ドライブを楽しんでいた。
制限速度を守っていれば安全に曲がれるカーブを曲がった直後、酒気帯び運転のトラックと衝突し、車ごと崖下に落下した。
そして現在。
木々が生い茂り、滅多に人が立ち入らない崖下の森を歩く巨大な影。
銀色のオオトカゲが全身に銀色の包帯を巻いたような姿の巨大妖怪・不滅妖怪ミラザウラー。
全長60メートルほどのミラザウラーの頭の上に、丈夫そうなトランクを持った学が座っている。
やがてミラザウラーは、ひっくり返ってボコボコにへこんだ銀色の乗用車の前に辿り着いた。
「ここ?」
〔ギャアアアアアス!〕
学に妖怪語はわからないが、恐らくイエスの返事であろうことは察することができた。
ミラザウラーが頭を下げ、学が地面に降りて乗用車の様子を見る。
「あー、これはあれが必要だ。あれ持ってきて正解だった」
学はトランクから、明らかにサバ缶の空き缶を材料にして作られている道具を取り出し、ひっくり返った乗用車のドアに取り付ける。
火花が散り、ドアはだらしなく地面に落ちて倒れる。
〔ギャアアアス……〕
「引いた? このくらいで引いちゃってたら、この後大変なことになるからね?」
学が乗用車の中を確認すると、ミイラ化した雅人の死体がシートベルトで座席に固定されているのが見えた。
「はいはいはいはいはい、これね。はいはいこれなら、あれとあれとあれを……」
学は死体に、トランクから取り出した名状しがたい色の薬品を数種類ぶっかけ、珍妙な機械のコードを張り付けて電流その他を流し込み、また薬品をぶっかけ、粉を振りかけ、また電流その他を流し込む。
「最後にこれを……」
ペットボトルに入った透明な液体を死体の口に流し込み、重力で零れないように無理矢理口を閉じさせる。
〔ギャアアス?〕
「これ? これはただの水道水だよ」
死体が激しく振動しだす。
学は素早くシートベルトを外して乗用車から離れる。
30秒後、雅人がボコボコの乗用車から這い出てきた。
「俺は……一体…………?」
「やったああああああああ!!!!!! 僕の理論は正しかったんだ!!!!!!!!」
「誰だ…………?」
〔ギャアアアアアス!!!!〕
「うわああああああああ!!!!!!」
雅人はミラザウラーが目に入り腰を抜かす。
「うん、自然な反応だね! 大丈夫、多分こいつはあんたのこと食べたりしないから」
「多分じゃ困るんだよ!!」
〔ギャアアアアアアアアス!!!!!!〕
「えーっとじゃあ、食べられたくなかったら、これ受け取ってよ」
学はトランクから、ブレスレットとミラザウラーの姿が描かれたカードを取り出し、雅人に差し出す。
「一緒に面白いことしようよ!」
雅人の蘇生から数日後の夕食時。
拓実はベルゼブルが通っていた店で中華丼を食べていた。
一口一口を噛みしめる度に、交わした拳と軽快なラップの記憶が甦ってくる。
ムゲンブレスに智和からの通信。
その内容を聞いた拓実は中華丼を急いでかき込み、
「釣りはいらねえ!」
と言って代金ちょうどの金額をレジに置いて店を飛び出し、人気の無い路地裏に走る。
その上空で既に待機していたステルスモードのカラステングに目からビームでコクピットに転送され、仲間達と共に現場へ飛ぶ。
星も疎らな大都会の夕暮れを揺るがす爆発音。
二本足で立つ青いオオカミのような巨大妖怪が、両手の爪と刃物のような尻尾でビルを切り裂く。
高速道路を砕き飛び出したドリル状の尻尾がトラックを破壊、後ろ向きに地中から這い出たピンク色のレッサーパンダのような巨大妖怪が尻尾を振り回してトラックと巻き込まれて追突した車の残骸を弾き飛ばす。
サイレンを鳴らし駆け付けた消防車や救急車が巨大な黄色い蜘蛛の巣のような物にぶつかり絡め捕られ、飛び降りてきた魔法使い風の帽子を被ったような頭部をした黄色い巨大なジョロウグモのような巨大妖怪に踏み潰される。
ミラザウラーが低層ビルや商店を踏み潰しながら歩き回り、尻尾の一振りで救助ヘリを叩き落す。
それらの惨状がモニター越しにカラステングのコクピット内のヨーカイジャー達の視界に叩きつけられる。
「ひどい…」
「智和、あやつらは本当に、悪魔ではないのでござるか?」
「ああ、あいつらは……」
その時、緑色の金属的なオランウータンのような巨大妖怪が高層ビルを踏みつけ崩しながら飛び移り飛び移り、都市の中央にあるショッピングモールの上に飛び乗り、瓦礫を飛び散らせた。
〔日本の皆さんこんばんはー!! 僕の言葉わかるよねー? 僕は鋼鉄妖怪フランケン! そしてあのピンクのが、愛憎妖怪ピンクシー!〕
〔ギューーーーーーーッ!!!〕
〔青いのが、斬月妖怪ワーウルフ!〕
〔ワオオオオオオオオオン!!!〕
〔黄色いのが、魔法妖怪マジョローグ!〕
紹介の直後、ヨーカイジャーやカラステングを含むその場にいる者達の頭の中に不快な金切り声が響く。
〔アテクシハ アータタチノ ノウミソニ チョクセツ カタリカケテル ザマス!〕
〔銀色のが、不滅妖怪ミラザウラー!〕
〔ギャアアアアアス!!!〕
〔そしてそして、忘れちゃいけないあいつの登場!〕
爆炎に照らされた夜空の彼方から、赤い人型にコウモリを思わせる顔と翼が付いた巨大妖怪が、その手に6人の人間を乗せて、フランケンの後方にあるこの地域で最も高いビルの上に鉄筋をへし折りながら降り立つ。
〔吾輩は、吸血妖怪ドラキュラであーる! 今宵は我ら、人類排斥派西洋妖怪により、貴様ら人間どもを……ピンクシー、どうしてやるか教えてやるのであーる!〕
〔ギュギュギュギュギューッ!!!〕
〔そういうことであーる!〕
〔ドラキュラぁ~、今の人間には伝わってないよ~〕
〔それはそうであーる。我らの言葉がわからない下等生物どもよ、覚悟するのであーる!!〕
コクピット内の拓実が前のめりになる。
「人類排斥派!?」
「妖怪の中にも人類保護に反対している者はいるが、その中でも特に危険な思想を持ってる奴らだ。しかし、それぞれの国のルールに従っておとなしくしていたはずなんだが……」
「なんだよあいつら、オイラみたいに人間と仲良くすればいのに!」
「見て!」
結月がモニター越しにドラキュラの手の上を指さす。
そこに乗っているのは、赤いシャツに黒いレザージャケットを羽織った彰、白衣に緑の眼鏡の学、髪をピンクに染め左頬に割れたピンクのハートのメイクを施しパンク調の服装を着こなす雫、ヨーロッパの貴族を思わせる青いタキシードを着たウルフ、仕事着であるバーテンダー衣装を着た衣歩、頭に包帯を巻き銀のスカジャンを羽織った雅人。
「人間!?」
「捕まってるのかな!?」
〔拓実、オールフレンズ召喚だ! 他の奴らはみんなに任せて、俺達はあの人間達を助けに行こうぜ!〕
「よし。妖怪変化!」
コクピット内で6人変身。
レッドはムゲンブレスに召喚カードを入れる。
「サモン、オールフレンズ!!!!」
全員で叫ぶが、何も起こらない。
「あれ? ……サモン、オールフレンズ!」
やはり何も起こらない。
グリーンのムゲンブレスで試しても同じ。
そこでイエローがキュービルンの召喚カードを取り出す。
「他のカードでやってみようよ」
グリーン、ピンク、ブルー、イエローはそれぞれのパートナー妖怪の、レッドはダイダラスの召喚カードをムゲンブレスに入れる。
シルバーはブルクダン、オボログルマ、イッタンモメンの召喚カードをムゲンライザーに入れる。
「サモン、パートナーズ!!!!」
カラステングの近くに7つの光が降り立ち、召喚された妖怪達のうちダイダラスを除く7体の巨大妖怪が降臨した。
「あれ? ダイダラスは?」
「長老!」
〔わからん……が、とにかく今は西洋妖怪達を!〕
〔ああ、任せたぜみんな!!〕
ダイダラスのことは気になるが、とにかく今は目の前の状況を治めるため、巨大妖怪達は前進を開始。
ヨーカイジャーを乗せたカラステングはドラキュラに、他の巨大妖怪達もそれぞれ自分と同じ体色の西洋妖怪達に向かっていく。
カマイタチが鎌を振るい、ワーウルフがそれをかわしながら爪の一撃を繰り出す。
ネコマタンがピンクシーに飛び掛かり、両者絡まりながら転がり回る、まさに獣同士の喧嘩のような戦いを繰り広げる。
キュービルンがマジョローグの蜘蛛の巣に絡まった、と見せかけてそれは幻。
本物のキュービルンは背後から迫ろうとするが地面にも巣が張り巡らされており粘着質で足を取られる。
〔ニッポンノ ヨウカイ アマイ! マロングラッセノヨウニ アマチャンザマス!〕
〔コン……???〕
ブルクダンが突進、ミラザウラーが角を掴んで受け止める。
両者が押し合う中、オボログルマはガトリング砲で、イッタンモメンは体当たりで攻撃、ミラザウラーの体に火花を散らす。
ミラザウラーは痛がる素振りを見せながらも角を離さず押し合いを続ける。
フランケンと対峙するメガガッパー。
〔お主ら、なぜこんな真似を!〕
〔あー、君! 知ってるよ。日本で一番偉い妖怪でしょ? つまり君をやっつけたら、僕が日本で一番偉い妖怪になれちゃうのかなー?〕
〔んなわけあるかー!!〕
メガガッパーが口から水流を発射。
フランケンが森を駆ける猿のような動きでそれをかわし、メガガッパーは更に水流を連射してフランケンをその場から引き離す。
カラステングの目からビームで、ヨーカイジャーはフランケンが離れた地上に降りてビルの上のドラキュラを見上げる。
「おいドラキュラ! その人達を離せ!」
〔フッ……〕
ドラキュラがほくそ笑み、手の上の6人は地上のヨーカイジャーを見下ろす。
「そうかー! お前らがヨーカイジャーかー!」
彰が声を張る。
ヨーカイジャー達が顔を見合わせる中、ドラキュラの手の上の6人は、左腕に巻いた「デビルブレス」にそれぞれの変身カードを入れる。
「あれは……」
「カードとブレスレット…………まさか!?」
「悪魔降臨!!!」
6人全員で叫ぶ。
彰は一瞬にして赤い戦闘服を身に纏い、右腰にはカードケース、左腰のホルダーにはムゲンソードに似た剣「デビルソード」、頭にはコウモリの超感覚とドラキュラの高い戦闘力を彷彿とさせる赤いフルフェイスマスクを装備。
学は一瞬にして緑の戦闘服を身に纏い、右腰にはカードケース、左腰のホルダーにはデビルソード、頭にはオランウータンの知性とフランケンシュタインの怪物の屈強さを彷彿とさせる緑のフルフェイスマスクを装備。
雫は一瞬にしてピンクの戦闘服を身に纏い、右腰にはカードケース、左腰のホルダーにはデビルソード、頭にはレッサーパンダの愛嬌とピクシーの魔性の魅力を彷彿とさせるピンクのフルフェイスマスクを装備。
ウルフは一瞬にして青い戦闘服を身に纏い、右腰にはカードケース、左腰のホルダーにはデビルソード、頭にはオオカミの凶暴性とワーウルフの残忍さを彷彿とさせる青いフルフェイスマスクを装備。
衣歩は一瞬にして黄色い戦闘服を身に纏い、右腰にはカードケース、左腰のホルダーにはデビルソード、頭にはジョロウグモの狡賢さと魔女の魔力を彷彿とさせる黄色いフルフェイスマスクを装備。
雅人は一瞬にして銀色の戦闘服を身に纏い、右腰にはカードケース、左腰のホルダーにはデビルソード、頭にはオオトカゲの貪欲さとミイラ男の不死を彷彿とさせる銀色のフルフェイスマスクを装備。
「変身…………した!?」
変身した6人はデビルソードを銃形態「デビルシューター」に変形させ、動揺するヨーカイジャー達に向けて一斉射撃。
ヨーカイジャー達はギリギリでかわし、地面のコンクリートの所々が抉れて土がむき出しになる。
「何なんだあいつら! 人間だよな!?」
「私達みたいに変身したってことは、あの西洋妖怪達が、あの人達のパートナー!?」
「あやつらが何者であろうと、我々の大地を穢す者を捨て置くわけにはいかぬ」
ブルーの言葉がウルフの耳に歪んだ角度で突き刺さる。
「我々の大地だと!?」
ウルフはドラキュラの手から飛び降りながらデビルブレスに装備カードを入れて青い西洋の剣を思わせる武器を装備。
着地と同時に走り出し、フェンシングの構えからブルーに連撃を繰り出す。
ブルーはムゲンソードを抜いて応戦、切っ先が体に到達することはギリギリ防いでいるが防戦一方のまま後退し仲間達から離れていってしまう。
「こやつ、太刀筋に一切の迷いも無い……」
「我々の大地……!? 日本の大地は日本人のものではない!!」
「何を申しておる……?」
「排外主義者め!!」
彰は青い二人を遠目に見ながら舌打ちする。
「あいつ先走りやがって……」
手の上の5人が飛び降り、危なげなく着地。
「何なんだお前ら!!」
「俺達は、悪魔戦隊!」
「デーモンジャー!!!!!」
ウルフ以外の5人で声を揃えて叫ぶ。
「悪魔戦隊……」
「デーモンジャー!?」
ヨーカイジャー達は心の奥底から湧いてくる、これまでの戦いでは感じたことのない言い知れぬ感情を拳で握り締める。
「ったく、こういうの全員で言わなきゃカッコつかねえだろ……おいウルフ! いっぺん戻れ!」
「排外主義者めええええええ!!!!!」
「あーわかったわかった! ハイガイシュギシャは後で串刺しにする時間あるから! いっぺん集合!」
ウルフは深く一歩を踏み込んだ突きを放つが、武士は軸をずらしながらさらに深い一歩を踏み込みウルフの剣を撥ね退ける。
「お主、よく腕を磨いておる。だが……」
ウルフはマスクの奥からブルーに冷ややかな視線を向け、剣を下ろし彰達の陣形に戻る。
レッドが日本の妖怪達と戦っている西洋妖怪に目を向け、またデーモンジャーに視線を戻す。
「お前らのパートナーは、あの西洋妖怪達?」
「おう!」
「俺達と同じように妖怪の力で変身してるのに、なんで『悪魔戦隊』なんだ?」
「それはなあ……言ってもいいんだっけ?」
彰が学を見る。
「えっとねえ、言っても言わなくてもどっちでもいいんじゃない?」
「そうか。じゃ、言わねえ!」
「何だそれ!?」
「で、お前らが…」
「俺達は……」
「誰が呼んだか旅烏 鼻高々にてんつくてん 天に代わって只今参上! 空の勇者、ヨーカイレッド!」
「誰が言ったか川流れ 流れるどころか掻き分けて 登って飛び出せナイアガラ! 水の戦士、ヨーカイグリーン!」
「誰が言ったか猫かぶり 花も恥じらうJK3 嘘はいらない夢見る乙女! 獣のアイドル、ヨーカイピンク!」
「誰に言われどカマわない イタチごっこにピリオド刻み 腹を切らずに悪を斬る! 風の剣士、ヨーカイブルー!」
「誰を染めるか狐色 こんこん今夜も手鞠歌 お目にかけましょ万華鏡 幻の賢者、ヨーカイイエロー!」
「誰もオイラを止められねえ! 当たるも八卦の大予言! 爆走疾風ギンギラギン! 閃光の覇者、ヨーカイシルバー!」
「夢も現も守るが仏 夢幻戦隊!」
「ヨーカイジャー!!!!」
思わず名乗りを最後まで聞いてしまったデーモンジャー。
雫がヨーカイジャーを指さしながら飛び跳ねる。
「かっこいいい!!! ねえねえねえ! あたしらもああいうの作ろうよ!」
「いいなあ。じゃあコイツらをブッ殺してから考えるか!」
「ああ。排外主義者を串刺しにしてからだ」
「俺達、戦わなきゃいけないのか?」
「難しいことはどうでもいい。俺はお前らをブッ殺してえ。楽しそうだからな」
「智和、どうする?」
「殺しはしない。だが、止める」
「だな」
身構える両者。
そんな中、ピンクは雫が飛び跳ねたとき「あること」に気付いていた。
「いくぞ!」
「オウ!!!!!」
グリーンの号令でヨーカイジャーが走り出す。
「やっちまえ!」
「わーい!」
「ウケるー!」
「フン…」
「オッケー!」
「よっしゃあ!」
彰の号令でデーモンジャーが走り出す。
同時に、上空でカラステングとドラキュラが拳と拳をぶつけ合い火花が散る。
〔うっ……〕
カラステングが息を漏らす。
〔若いの、まだまだであーるな?〕
ヨーカイレッドがフェザーガントレットを装備して彰=デーモンレッドにパンチを繰り出す。
だが、デーモンレッドは脇を締めた構えのまま体幹をスライドさせてそれをかわし、全身のバネを使った左フックをヨーカイレッドの脇腹に叩き込む。
「うっ……」
「遅いんだよォ!」
怯んだ隙を突いての連続ジャブ。
全身を抉る拳がヨーカイレッドの体力を奪っていく。
ヨーカイグリーンと学=デーモングリーン。
両者の武器はどちらも両手持ちの大型ハンマー。
それらをぶつけ合い、飛び散る火花が向き合う緑のマスクを照らす。
「お前らの目的は何だ?」
「うーん、一番自分らしくいられる場所にいること、かな?」
「じゃあ、ここよりもいい所を教えてやる」
「どこ?」
「刑務所だ」
「なるほど! 君面白いね!」
デーモングリーンは更なる力をジニアスハンマーに込めて大きく振りかぶる。
ヨーカイグリーンもガチコンハンマーを握り締めて大きく振りかぶり、振り抜くと見せかけて手を放す。
勢いのまま飛んできたガチコンハンマーを避けるため体を反らしたデーモングリーンに、ヨーカイグリーンはユキオトコの能力カードによる冷気を放つ。
「ゑゑゑ!? 何それひどい!!」
デーモングリーンは振りかぶったポーズのまま氷漬けになるかと思われたが、どこかから伸びてきた黄色い糸に吊り上げられ、数十メートル離れた位置に落とされる。
「地獄に蜘蛛の糸! からの痛っ!!」
低層ビルの屋上にいた衣歩=デーモンイエローが、手にしている魔法のステッキのような武器・マジョスティックを振り、先端から伸びていた黄色い糸を消すと同時に前方に翳して蜘蛛の巣状のバリアを発生させ、ヨーカイイエローからの銃撃を防ぐ。
「そういうのもあるのね。だったら……」
ヨーカイイエローはデーモンイエローの足元を狙ってムゲンシューターを連射。
砂煙が上がり、それが晴れた視界にヨーカイイエローはいない。
気配に気付いたデーモンイエローが振り返ろうとした次の瞬間、デーモンイエローはヨーカイイエローが乗ったバイクサイズのライジュウに撥ね飛ばされていた。
「ありがとう、あんたは来てくれて」
〔ブンブブン!〕
「にしても、ダイダラスどうしたんだろう……」
デーモンイエローは起き上がり、クイックターンからまた向かってくるライジュウとヨーカイイエローを見ながら体の埃を払う。
「そういうのもあるのね。だったら……」
デーモンイエローは自分の足元に向けてマジョスティックを振り、黄色い円盤に蜘蛛の顔と足を思わせる装飾が付いた物体を生成する。
「昔の魔女は箒に乗ったらしいけど、私はこれ!」
円盤状の物体に飛び乗ると、物体はデーモンイエローごと浮き上がり、電撃を纏って突進してきたライジュウをかわす。
「あれは……ロボット掃除機!?」
「あなたのバイクとどっちが速いかしら?」
空飛ぶ魔法のロボット掃除機に乗ったデーモンイエローを追って、ヨーカイイエローはライジュウのアクセルに気合いを込める。
ヨーカイピンクはスキャットクロウを、雫=デーモンピンクはドリル状の武器・ズッキュンドリルをそれぞれ右手に装備。
「オラオラー!」
叫びと共に振り回されるズッキュンドリルを、ヨーカイピンクは胸に直撃を食らう寸前のところでかわし続け、わずかな隙を突いてスキャットクロウを下から振り上げる。
「うあああっ!!」
攻撃はデーモンピンクの胸を掠り、火花が散る。
「うっぜェんだよォ!!」
勢いを増して振り回されるズッキュンドリル。
ヨーカイピンクはまたも胸に直撃を食らう寸前のところでかわし続け、わずかな隙を突いてスキャットクロウによる突きを繰り出す。
「うっ……!!!」
デーモンピンクはふら付く足を強く踏みしめ、踏み込みからの突きを繰り出すが、やはりその攻撃はヨーカイピンクの胸に到達する直前でかわされる。
「…………」
デーモンピンクは腕組みをして考えた後、ヨーカイピンクに格闘ゲームの「挑発」のような手招きをする。
「え……?」
ヨーカイピンクは戸惑いながらもスキャットクロウを振り下ろす。
と、避けようとしたデーモンピンクの胸を掠め軽い火花が散る。
デーモンピンクは息を整え、また腕組みをして考えた後、ヨーカイピンクの胸を狙ってズッキュンドリルを振り下ろす。
ヨーカイピンクはまたも胸に食らう直前に攻撃をかわす。
「ウケる! こいつおっぱいちっちゃすぎて攻撃当たんないんだ!」
「なんか……なんかすっごく悔しい!!!」
激しく打ち合うヨーカイブルーとウルフ=デーモンブルー。
ヨーカイブルーにブライブレードを装備する余裕があったため先程とは違い一方的に押されることはない。
和の剣術とフェンシングが鋭い金属音を響かせぶつかり合う。
「首相自ら『日本人ファースト』などという排外主義的な言葉を吐く民族こそ、日本から出ていくべきだ!」
「あれはそのような意味ではない! さてはお主、ネットニュースの見出しだけを読んで頭に血を上らせておるな?」
「黙れ!!」
ぶつかり合う金属音はより激しく戦場に響く。
ヨーカイシルバーと雅人=デーモンシルバーは大砲を抱え互いに仕掛ける隙を探しながら走る。
崩れたビルの破片を通り過ぎた直後、ヨーカイシルバーがブルブラスターの引き金を引く。
デーモンシルバーはそれをかわし、直後にミラザウラーを模した大砲を発射。
ヨーカイシルバーは側転でかわしてイッタンモメンの能力カードを発動。
空中からデーモンシルバーに狙いを定める。
「おいおい飛べるなんてチートだろ!」
問答無用で空中からの砲撃。
デーモンシルバーは吹っ飛び背中から倒れる。
ヨーカイシルバーが着陸してブルブラスターを構えながら近付こうとすると、デーモンシルバーは全身から煙を立たせながらミラザウラーの能力カードを発動。
デーモンシルバーの体が銀色の光に包まれ、受けていた傷が無かったかのように回復して起き上がる。
「よっし!」
「いやそっちのがチートだろ!!」
ヨーカイレッドはカラステングから受け付いた動体視力を駆使して反撃を試みるが、攻防どちらにおいても技術で勝るデーモンレッドに決定的な一撃を与えるには至らない。
重く鋭い拳をボディに食らい、ヨーカイレッドはビルの外壁に背中から叩き付けられる。
その動きにシンクロするかのように、カラステングもドラキュラからの一撃を食らって大病院の外壁に叩き付けられる。
デーモンレッドは迫る足音に余裕を含ませながら、必殺カードを取り出しデモンブレスに入れ…………ようとしたところで耳に殴り込んできた凄まじい叫び声に全意識をかっ拐われる。
〔ぎゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!〕
ドラキュラが突然叫びながらどこかへと飛び去っていった。
その声は両陣営全員の戦いへの集中力をぶった切り、人間も妖怪もただただ、不恰好な軌道を夜空に描くドラキュラの後ろ姿を見つめるしか無かった。
そんな中、ヨーカイジャーとデーモンジャーが戦っていた地点から少し離れた所で逃げ惑う人々からデビルギーを回収していたアーリマンが、叫び声に引っ張られて視界に入れた大病院に付いている緑の十字マークを見て、ドラキュラが突然飛び去った理由を察した。
「なるほど……」
ドラキュラが飛び去ったのと逆方向の空から、ユキオトコを背に乗せたゲキリンダーを先頭に、カシャ、ヌリカベ、ユキオンナ妖獣形態が飛んでくる。
〔おーい! 呼ばれてないけど来たぞー!〕
なぜか召喚できないダイダラスと、未来にいるので召喚されなければ来られないアミキリを除いた巨大妖怪達が戦場に揃った。
〔ナンカ ゾロゾロ アツマッテキタ ザマス〕
〔こっちは1体飛んでっちゃったのにねー〕
アーリマンが空中の、両陣営の視界に入る位置から叫ぶ。
「もういい、退くぞー!」
ヨーカイレッドは壁にめり込まされたまま、ベルゼブルの最期の姿が脳裏に甦り拳を握り締める。
デーモンレッドは不服そうに舌打ちしながら必殺カードをカードホルダーに納める。
直後、マジョローグが打ち上げた光弾が落下と同時に強烈な光を放つ蜘蛛の巣に変化。
その光にヨーカイジャーと日本妖怪達が目を眩まされている間に、デーモンジャーと西洋妖怪達、そしてアーリマンは姿を消していた。
暫し流れる静寂。
戦闘中よりも強く感じる全身の痛みに奥歯を噛み締める者、打ち合った刃から流し込まれた感情に思いを巡らせる者、人間と傷つけ合ってしまった感覚に指先を震わせる者……
グリーンのムゲンブレスの着信音が鳴る。
妖怪治安維持部隊隊長のネネコガッパからの通信。
《逃がせる人間は逃がしたぜ》
「そうか……ご苦労だった」
《しかしヤバくねえか? あいつらはっきり言っちまったぜ、吸血『妖怪』とか、鋼鉄『妖怪』とか》
「今回はいつも以上に、情報統括部に無理をしてもらうことになるな」
《ちょっとでも情報流れるとマズいからなぁ》
「妖怪への恐怖が、人間達に広まってしまったら……」
カラステングがユキオトコに助け起こされ、ユキオンナがネコマタンの打撲傷を冷やし、キュービルンに絡まった糸がカシャの口からの炎で焼き切られる。
ヨーカイジャーは変身を解除。
ダイダラスの様子を見に行くと言う拓実を智和が明日にしろと諭し、ヨーカイジャー達はゲキリンダーのコクピットに転送され、巨大妖怪達と共に帰路に就く。
その頃、智和の一族の人間によって住処の森の奥深くに設置されたモニターで戦いを見ていたダイダラス。
モニターの電源を切り、溜息をつくように唸り声を漏らして森の見回りを始める。
【to be continue…】
本編を読んだ後は「ヨーカイジャー悪魔データベース」で、登場した悪魔の情報をチェックしよう!
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