episode:35 踊る妖怪会議
この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。
オープニングテーマ「your kind!」
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ヨーカイジャーとベルゼブルの最後の戦い、そして新幹部アーリマンの襲来から一夜明け、妖怪女子刑務所にいつもの尋問の時間がやってきた。
「そう、ベルゼブルが…」
グレモリーの長い睫毛が下を向く。
エージェント66βは、なるべく冷静に、それでいて機械的にならないように寄り添う姿勢を見せる。
「やっぱり、辛い?」
「そうですわね、ベルゼブルはワタクシに巨大化魔法を教えてくれたけど、今のワタクシは妖怪ちゃんに、失う辛さを教えられてしまってる」
天井の向こうを見つめる視線が、収監された頃より少しだけ柔らかくなったように見えた。
「実は私も、先輩を亡くしてるの」
「あら、ロクロクビちゃんも?」
「そう、妖怪諜報部の先輩。勇気があって、真っ直ぐで、だからあの日も、人間を襲うジャミリアーの群れに飛び込んでいって…」
机に置いた手の、押さえようとして零れた震えがグレモリーの言葉を詰まらせる。
「私はあなた達を許さない。人間を守るため、悪魔に戦いを挑んだカサバケ先輩のように、あなたに殴りかかりたくなったこともあった。だけど、私じゃあなたに敵わないし、そんなのは私のやるべきことじゃない。それに今のあなたは、私と同じ痛みを知ってる」
瞬きも忘れて話を聞いていたグレモリーの胸の奥から、ふっと小さな笑いが漏れる。
「不思議ね、私達がここで話してることが」
「そうね。もちろん、あなたのことも許すつもりはないけど、あなたと話すの、ちょっとだけ楽しい」
「そう? 嬉しいわ」
向き合う悪魔と妖怪の間に、今まで知らなかった色の時が流れる。
「それで、新しく地球に来た幹部がアーリマンって名乗ったそうだけど…」
「アーリマン!?」
グレモリーの口元があからさまに歪む。
「どんな悪魔?」
「嫌われ者ですわ。目的のためならどんな犠牲も厭わない、ベルゼブルとは真逆のタイプですわね。あんな奴を寄越すなんて、サタン様は何をお考えなのかしら」
「実はベルゼブルを殺したのはヨーカイジャーじゃなくて…」
「アーリマンですの?」
グレモリーは冷めた深いため息を吐く。
「あいつのやりそうなことですわ。本当に、サタン様は何をお考えなのか……」
「夢幻戦隊ヨーカイジャー」
episode:35 「踊る妖怪会議」
数日後、妖怪の里・河童ヶ沼。
沼から上半身を出したメガガッパーと、沼の畔に足を投げ出して座るヒルコ。
「やっと二人きりになれたね」
〔他の連中がまだ来とらんだけじゃ〕
「あーもぉ、照れちゃってぇ!」
〔勝手に言っとれ〕
巨大妖怪と人間サイズの巫女衣装の女妖怪。
体の大きさ以外に両者の距離は感じられない。
その時、冷たい北風が沼を吹き抜け、赤い和服を着た巨大なヤギのような妖怪が姿を現した。
「氷剣妖怪オオタケマル、参上したが邪魔だったかな?」
「うん邪魔だった~」
〔黙っとれ!!〕
続いて、沼の周りを9個の火の玉が淡い光を発しながら飛び回り、それらが沼の畔に描いた輪の奥から、白い体毛から金色の光を放つ巨大な九尾の狐が歩み出てくる。
「狐火妖怪タマモノマエ、来たぞ。メガガッパー、いつも娘が世話になっている」
〔いやいや、ワシのほうこそキュービルンにはいつも助けられておる〕
他方から、青い甚平を着た巨大なコーカサスオオカブトのような妖怪が、徳利と御猪口をもって千鳥足で歩いてきた。
「ヒック! 豪傑妖怪シュテンドウジ、ヒック! 一滴も呑まずに来てやったぞ~」
〔バレる嘘をつくな〕
続いてまた他方から、8個の頭と8本の尾を持つ巨大なアナコンダのような妖怪が地響きを立てながら這ってきた。
「八頭妖怪ヤマタノオロチ、来たぞ」
「来たぜ!」
「来たで~」
「来たじゃん?」
「来たんだナ」
「来たわよ~」
「べっ……別にお前のために来てやったわけじゃないんだからな!」
「来たというのは、別の所から移動したということです」
「おぉ~、ヤマタの! ヒック! お前も呑むか?」
「呑むぞ」
「呑むぜ!」
「呼ばれよか~」
「呑むじゃん?」
「呑むんだナ」
「呑むわよ~」
「べっ…別にお前の酒だから呑むってわけじゃないからな!」
「呑むということは、飲酒するということです」
〔呑むな! もうすぐ会議なんじゃ。お主は呑むとすぐ眠くなるじゃろ?〕
「ヒック! じゃあ儂だけが呑むぞ~!」
〔呑、む、な!〕
続いて、沼の周囲の林から4匹の獣の気配が漂い始める。
ニホンザル、タヌキ、トラ、アオダイショウ。
それら4匹は木々の間から瞳を光らせ、飛び出すと同時に合体。
ニホンザルの頭、タヌキの胴体、トラの手足、アオダイショウの尾を持つ人間サイズの妖怪が姿を現す。
「参上、合身妖怪ヌエ! そしてこれが我が余剰パーツ!!」
手を翳す先に4匹の獣の合体に使わなかった部分が積み重なっている。
〔その余剰パーツを誇らしげに紹介するのは毎回やらんといかん決まりなのか?〕
「毎回やらんといかん決まりなのだ!」
〔毎回やらんといかん決まりなのか! なら仕方ない!〕
そして他方から、ハイエナの仮面を被り、薄茶色に黒いドット模様の神御衣を着た紫ストレートロングヘアーの人間の女に似た妖怪が、左右にふらつきながら歩み寄ってきた。
「美醜妖怪ヨモツシコメ、来……来……来……来まし……」
ヨモツシコメは音を立てて俯せに倒れた。
「ヨモたん!!」
ヒルコが駆け寄り助け起こす。
「ヨモたんまた無茶なダイエットした?」
「だってだって、みんなに会うんだから、少しでも綺麗にならなきゃと思って…」
「そんなことしなくていいの。ヨモたん美人なんだから!」
ヒルコがハイエナの仮面をひっぺがすと、紫の髪色がよく映える透き通るような肌と、愁いを帯びて揺れる瞳が曝け出される。
「か……か返して……こんな不細工な顔見ないd……」
ひっぺがされた仮面に伸びていた手が枯れ葉のようにふらりと落ちる。
「だから不細工じゃないって……。メガガッパー、なんか食べるもの無い?」
「ヒック、酒ならあるぞぉ!」
「いや、今のヨモたんにアルコールは猛毒。メガガッパー、食べるもの無い?」
〔ネネコー! 冷凍タコ焼きが残っとったろ? アレ全部解凍してもってきとくれー!〕
沼の底からネネコガッパの「あいよー!」という声が聞こえる。
「カッパの、ヒック! 孫娘のネネコの、だいぶデカくなったろう?」
〔お主、ついこの前会ったばかりじゃろう。そんなに変わっとらん〕
〔そうだったか? ヒック!〕
そうこう話しているうちにネネコガッパが沼の底から泳いできて水面から顔を出した。
「ジジイ、冷凍タコ焼き無かったんだが」
〔おお、アレは昨日の夜に全部食ってしまったんじゃった〕
上半身だけ起き上がっていたヨモツシコメがまた倒れる。
「ヨモたああああああん!!!!!」
「ネネコガッパ、ツララオンナは元気でやっておるか?」
「あー、タマモノマエ様。姪っ子さん優秀ですし、明るく楽しい子なんで、すごい助かってますよ」
「そうか。それは何よりじゃ」
タマモノマエは狐目を柔らかく細める。
〔ネネコ、他に食い物、何か無かったかのう?〕
「他は……キュウリぐらいしか」
〔キュウリは無茶なダイエットで倒れた者に食わすには微妙じゃが……まぁ持ってきとくれ〕
「あいよー」
ネネコガッパはまた沼の底へ潜っていく。
水面に広がる波紋をくぐっていく頭の皿を眺めながら、オオタケマルが腕組みをして唸る。
「ウーム。ネネコガッパ、あの若さで妖怪治安維持部隊の隊長を立派に勤め上げている」
「ツララオンナも、ネネコガッパのことを随分慕っておるようじゃ」
〔いやあ、あれもまだまだじゃが、お主らに褒めてもらえるなら、ワシも皿が、いや鼻が高いわい〕
そうこう話しているうちにネネコガッパが沼の底から泳いできて水面から顔を出した。
「ジジイ、キュウリも無かったんだが」
〔おお、アレは今朝全部食ってしまったんじゃった〕
膝まで立ち上がっていたヨモツシコメがまた倒れる。
「ヨモたあああああああああああああん!!!!!」
その後、ヨモツシコメはヌエが調達してきた大量のタケノコを食べて生気を取り戻す。
「美味しい……美味しい……お…………あら? なんか1個嚙み切れないのが……」
「おお! それは我が余剰パーツ!! 旨いか?」
「何の味もしないし嚙み切れない……」
〔止めんか!! 体の一部が食われかけとるんじゃぞ!! ……とにかく、始めるぞ。長老であるワシ、メガガッパーと、お主ら妖怪評議員による、定例会議を!〕
ネネコガッパは評議員妖怪達に挨拶を済ませ、妖怪治安維持部隊のミーティングに向かった。
本日の議題は、ヨーカイジャーのこれまでの活動と今後の運用について。
〔何か意見のある者は?〕
ヒルコが手を挙げる。
「みんなよくやってると思う。最初は智和がメガガッパーのパートナーになって、仲間を集めて」
〔ウム。智和を中心に、ヨーカイジャーは良いチームになった…〕
【episode:8 「発見!? 幻のユキオトコ」より】
ムゲンオーSWATの目からビームが放たれ、ヨーカイジャー達はまだ蹲っているユキオトコの傍に転送される。
グリーンは深い呼吸を繰り返しているユキオトコの腹に手を触れる。
「応急処置は上手くいったようだが……このままではまずいな。妖怪の里に連れていけば適切な治療を受けさせることもできるが、移動中に体力を消耗してしまうと……」
「カラステングー! ムゲンオーのエネルギーをユキオトコに分けてやるとか、そういうのは無いのかー?!」
〔いや、俺らにそんな能力があったら良かったんだけど〕
「そうだ!」
グリーンが何かを思い付き、ムゲンオーSWATを見上げる。
「カシャ! ヌリカベ! ユキオトコに換装カードの作り方を教えてやってくれ!」
〔バウ?〕
ヌリカベの触角が生えて首を傾げるような動きをする。
「ユキオトコがムゲンオーに合体すれば、他の妖怪のエネルギーを分け与えながら移動できるかもしれない」
「そっか!」
「またまた『やってみよう精神』ね!」
「そんなこと思い付くなんて、やっぱお前はヨーカイジャーの知恵袋だな!」
「なんかお婆ちゃんみたいにされたけど、ユキオトコ、少しだけ頑張れるか?」
〔ヴヴホ……〕
ユキオトコはゆっくりと頷く。
「よし……頼むぞお前ら!」
ムゲンオーSWATからカシャとヌリカベが分離し、ネコマタンとカマイタチが合体して通常のムゲンオーになる。
ユキオトコは震えを押さえながら上体を起こし、両手を向き合わせて精神を集中させる。
するとユキオトコの体が光に包まれ、その光が集中して3枚のカードになり、智和の手元まで降りてきた。
「俺に? しかも3枚……」
「そりゃ今回、一番活躍したのはあんたでしょ?」
「そうか……」
智和はユキオトコの換装カードをムゲンブレスに差し込む。
するとユキオトコの体が浮き上がり、両手足が折りたたまれ、頭が胴体の中に格納され、胴体の下の部分が少し下にスライドして大きな拳のような形になる。
ムゲンオーの左腕のネコマタンが外れ、拳の大きな腕の形になったユキオトコが代わりに左腕に合体する。
「できた!」
「結月、名前は?」
「えっと……これもシンプルなほうが良さそうな気がするから……お!」
ピンクが手を「ポン!」と叩く。
「ムゲンオーナックル!!」
〔ウホウホ……!〕
ムゲンオーナックルの左腕から少しだけ生気が戻ったような声が聞こえる。
〔俺らのエネルギー、バッチリ左腕にも流れてるみたいだぜ!〕
「よかった。それじゃあ帰るか!」
ヨーカイジャーをコクピットに乗せたムゲンオーナックルは、ネコマタン、カシャと並んで飛んで妖怪の里へ。
ヌリカベは先日戦った悪魔デカラビアの真似をして身に付けた回転飛行。
グリーンはコクピットのモニターに映る空を見つめ、座席に深く座り深呼吸する。
【再び河童ヶ沼】
〔あの時も智和の知恵がユキオトコを救ったんじゃ〕
「それはそうだが…」
オオタケマルが腕組みをして唸る。
「そもそもユキオトコが悪魔に狙われたのは、ユキオトコを発見した人間がネットに情報を流したせいだ」
〔確かに。じゃが、人間は妖怪のことも悪魔のことも知らんのじゃ。珍しいものを見れば誰かに教えたくなるし、その結果、別の珍しいものが悪さをしだずなんぞ、想像もできんじゃろう〕
ヒルコが石に腰掛けて頬杖をつく。
「だからさー、隠すのやめようって言ってんの。人間にとって妖怪がそこらへんにいる見慣れたものになれば、わざわざ情報拡散したいとは思わなくなるでしょ?」
「人間はそこらへんにある見慣れたものでも写真を撮って拡散するぞ。ラーメンとか、犬とか」
「あー…」
〔人間に妖怪の存在を隠すのは、互いの平穏な生活を守るため。というのが国際基準じゃから、日本の妖怪だけが隠すのをやめることは簡単にはできん。じゃが、人間と妖怪の交流は、時に思いもよらぬ奇跡をもたらすこともある。合体巨大なんてモンになれるとは、ヨーカイジャーに出会うまで想像もできんかった〕
「合体巨人……どれも余剰パーツを出さずに合体できていて感心させられる」
〔お主が余剰パーツ出しすぎなんじゃ。もっとこう、ゴッドムゲンオーのときのゲキリンダーの前足と尻尾みたいに上手いことできんのか?〕
「できん!」
〔できんのか! できんなら仕方ない!〕
「ヒック! ゲキリンダーって言やぁ、あのキンキラ野郎、タマモのンとこの娘っ子と結構相性いいんじゃねぇか?」
「わらわもそう言っておるのじゃが、あれも誰に似たのか頑固での。わらわのことを『お母様』と呼ぶのをわらわからも怒ってくれなどと言っておった」
「怒るのか?」
「いや、母として見守るだけじゃ」
「ヒック! あんまり面白がってると嫌われるぞ?」
「ハハハ、その時はその時じゃ」
〔ゲキリンダーのぉ。人間を避けておったヤツの心を開いたのは、ヨーカイジャーの拓実じゃったな……〕
【episode:11 「時を戻そう」より】
「そういえば、聞いたことある。中国で何十年も見た目が変わらなかった俳優が、突然自殺したって」
〔それが俺の友達だった男だ〕
「じゃ、時を戻すのはやらなくていいや」
歩き出していたゲキリンダーの足が止まった。
「単純な戦闘力だけでも強いんだろ? それなら時を戻すとかしなくても悪魔との戦いで活躍できるだろ。それと、カラステングみたいに合体巨人の中心になる合体ができたらもっとありがたい」
〔時を戻す力は?〕
「使いたくないなら、使わなくていいよ。でも一緒に戦ってほしいし、面白いからもっと話したい」
ゲキリンダーは首を下げ、足を広げ、なるべく拓実と目線を合わせようとする。
「そのポーズ疲れない?」
〔長くやっていれば疲れるだろう。だが少しならイイ! ……キュービルン、カードの作り方を教えてくれ〕
〔コン……!? コンコンコン!!〕
〔少し登ればキミのように美しい景色が見えるスポットがある。是非そこで教えてくれ!!〕
キュービルンは無言でどこかへ飛んでいこうとする。
「おい早くここで教えてくれって言え」
〔…………それも悪くないだろう〕
【再び河童ヶ沼】
〔人間に力を与えることに反対していたゲキリンダーが、拓実の2体目のパートナーとなり、ムゲンビルダーへの合体の中心となって悪魔と戦っておる〕
ヒルコは沼の傍にニンギョ柄のレジャーシートを敷き、その上に投げ出した足を揺らす。
「ムゲンビルダーがいなかったら、レヴィアタンの巨大軍艦を倒せなかったんだよね~」
〔ウム……〕
【episode:12 「沈め!悪魔の軍艦」より】
「拙者がマグナムの銃口に入り、カシャの能力カードとカマイタチの必殺カードを発動させ、必殺妖技・業火一閃の体勢に入る」
「え、まさかマグナムで武士君を撃ち出せってこと!?」
「いかにも!」
「ここまで聞いて『何言ってんだこいつ』って感想しか出てこないんだが」
「悪魔も燃やせる火力ってわかってる?」
「わかっておる。そこでコナキジジイの能力カードだ」
「そうか、石化してカシャの火球を食らう特訓は……」
「その技を完成させるためであった!」
煙が晴れ、視界を取り戻した巨大軍艦バジマが再び砲撃を開始。
ムゲンビルダーマグナムは火球を連射するが、撃ち出される弾数はあちらが上で、火球を潜り抜けクロノジャベリンでも弾ききれなかった数発が命中、金色のボディに傷を付け、コクピットに伝わる振動がヨーカイジャー達に先日の敗北を思い起こさせる。
バジマに向かった火球は砲撃に威力をかき消され、黒い機体を微かに焦がすのみ。
〔不意打ちが成功しなければこんなものか……〕
「だから奴の予想外の攻撃を叩き込んでやるのでござる」
「さっき俺が見ていた特訓では、確かに石化すればカシャの火球に耐えられていたが……」
「そうであろう? 拙者がマグナムに入り、準備ができ次第、カマイタチに合図をさせる。そうしたら拓実、炎熱魔燃弾を撃ってくれ」
「いやいやいやよりによって必殺大妖技かよ! んな命懸けの攻撃、責任持てねえよ!」
「心配いらぬ。命を捨てるような攻撃であれば、その責任を仲間に負わせたりはせぬ。いつも言っておろう? 『腹を切らずに悪を斬る』、それが令和の武士道でござる」
「そうか…………お前の命と武士道、俺達が預かった!」
「かたじけない!」
ムゲンビルダーマグナムは目から自分の右肩に向けてビームを発射。
ブルーは日頃の鍛錬により獲得した脚力と握力を駆使して、砲撃による振動に耐えながら右腕を移動、マグナムの銃口に入る。
ブライブレードを装備し、カシャの能力カードとカマイタチの必殺カードを発動させ、刀身に青い輝きと紅蓮の炎を宿す。
そしてコナキジジイの能力カードを発動する直前にカマイタチに叫ぶ。
「カマイタチ頼む!」
〔ビビビーッ!!〕
カマイタチはムゲンビルダーマグナムのコクピットまで響くように叫び両手の鎌を打ち鳴らす。
「よし……いくぜ!」
レッドはムゲンブレスにカシャの必殺カードを入れる。
ピンクが考えた新しい技の名前が耳打ち伝言ゲームによってコクピットにいる全員に伝わる。
レヴィアタンはヨーカイジャーの作戦が聞こえてはいないが、何かを仕掛けてきそうな雰囲気は察知し、主砲のエネルギーをチャージし始めていた。
「何を企んでいるかは知らんが、全て吹き飛ばしてしまえば問題ない。撃てええええええええええ!!!!!」
「いくぜ武士……!!」
「必殺大妖技・炎熱武士道魔燃弾!!!!!」
技の名前はコクピットの全員で叫ぶ。
バジマの主砲のエネルギー波と、ブライブレードを構えたブルーを押し出す火球連打が正面からぶつかり合う。
妖怪の力と霧崎一刀流の妙技を合わせた切れ味が、エネルギー波を切り裂きバジマの船橋に迫っていく。
石化していてもさすがに必殺大妖技の熱量は平気とは言えない。
だが、技を破られたあの日から磨き上げてきた技と積み上げてきた思いがまさに今、己の武士道への誓いを成就させんと刀と心に力を与える。
「レヴィアタン、必ず貴様を……斬る!」
窓を突き破り、コントロール室のレヴィアタンを避ける隙も防ぐ余裕も与えないまま炎を纏ったブライブレードに火球の威力と勢いを乗せて一閃のもとに切り捨てる。
「イーーーーーーーーーヤアアアアアアアァッ!!!!!!!」
「ば…………ば………馬鹿な…………この私が…………」
巨大軍艦バジマは燃える刀傷を起点に爆発、崩壊していく。
勝利の確信、どころではない。
ブルーはバジマを切り裂いた技の勢いのまま飛び続けている。
「武士!!!」
「あのままじゃ……」
「危ない!」
〔少しだけ、時を戻そう!〕
ムゲンビルダーマグナムの体が金色の光に包まれ、同じ色の光に包まれたブルーの時間が少しだけ戻り後退する。
その隙にカマイタチがブルーの前方に回り込み、再び時が進み飛んできたブルーを両手の鎌の切れない部分で挟むように受け止めた。
「はぁ~、良かった!」
【再び河童ヶ沼】
〔ムゲンビルダーの誕生、そして武士の命がけの大技。これらがなければ、レヴィアタンに勝つことはできんかった〕
「妖怪だけじゃできないこともある。だから人間と心を通わせることには意味がある…」
ヒルコはレジャーシートの柄で微笑むニンギョの頭を撫でる。
「だが人間は、」
「ヨーカイジャーみてぇに、」
「いい奴ばっかとちゃうで?」
「ぶっちゃけ守る必要なくね?」
「疑問なんだナ」
「保護する意味あるのかしら?」
「べっ…別にお前らが保護するべきって言ってるから邪魔しないわけじゃねーし」
「私は多数決に従い、多数派の意見を尊重します。が…」
〔お主とオオタケマルは、まだ人類保護活動に疑問があるか。ヨーカイジャー達があんなに頑張ってくれとるのに〕
「彼らの活躍は評価に値する。が、ヤマタノオロチが言うように、人間は決して善良な生き物とは言い切れない。同族同士で殺し合い、自然を蝕み殖え続ける。それもまた人間なのだ。ヨモツシコメもそう思うだろう?」
「私は……人間は無害とは言えないけど、悪いところばかりじゃないし、私達が使っている道具や住んでる家なんかも、人間の作った物を真似して作った物が多いし、感謝しなきゃいけないなって思ってる。ただ、他の生き物はそんなに熱心に守ってあげないのに、人間ばっかり保護するのはどうなのかなって」
〔ウーム、それはわからんでもないが、他の生き物を守るのは人間のやるべきことじゃ〕
「そう。今この地球で生き物が数を減らすのは、その殆どが人間に原因がある。それをよくわかっているダイダラスが、ヨーカイジャーに試練を与えると言うので、私とヤマタノオロチはカードを渡して協力したのだ」
〔ダイダラスに力を与えられたヨーカイカオスがお主らのカードを持っていたのは、そういうわけじゃったか〕
ヒルコが膝の上で頬杖をつく。
「で、結果、ヨーカイジャーは試練に合格してダイダラスを仲間にした」
「ゲキリンダーやダイダラスの心を開いたヨーカイジャーって…」
「ヨモたんも会ってみたら? 面白い子達だよ」
「だめよ! ヨーカイジャーにはすっごく可愛い女の子達がいるでしょ? あの子達と並んだら私なんか……」
「だーからヨモたんも美人なんだから心配ないって!」
「だめ! 私なんか、結月ちゃんと千影ちゃんの光に当てられて消滅しちゃう!」
「おお! ヨーカイジャーにはそんな能力が!!」
ヌエがタヌキの前足で背中を搔きながら目を丸くする。
〔そんな能力がありゃそれで悪魔を倒しとるわ! あと余剰パーツを孫の手にするな〕
その時、御猪口が地面に叩きつけられ砕け散る音が一同の視線をシュテンドウジに集める。
「わ…儂のお気に入りの御猪口が!! 一体誰がこんなことを!?」
〔自分でやったんじゃろ〕
「沼の周りのぬかるんだ地面で御猪口を割れるとは、相変わらずの馬鹿力じゃのう」
「いやぁ…ヒック! ちょっと音立てて注目してもらおうと思っただけだったのに……まあそれはそれとして、みんな難しく考えすぎじゃ。儂らは人間を守る。人間は儂らに面白いことを教えてくれる。そんな世界を悪魔が壊しに来る。だから色々考え方はあろうが、今は妖怪と人間が力を合わせて悪魔と戦う。それが終わったらまた、悪い人間にバチ当てるなり、反省したら許してやるなり、今まで通りにすればいい」
一通り饒舌に話したシュテンドウジは、一同の視線を集めたまま徳利の酒をラッパ飲みする。
その様を眺めながら、タマモノマエが喉の奥で笑う。
「クククッ、やはりシュテンドウジやヌエのような深く頭を使わない者がいると、会議が締まって助かる」
「おお、頭使うか?」
ヌエがタヌキの頭部を差し出す。
「そうじゃのう、蹴鞠でもやるか?」
「いいな!」
〔やめろ〕
一方その頃、関東某所の廃倉庫。
アーリマンがこれまで地球で活動してきた幹部達が残した資料を捲る。
ヨーカイジャーと戦い倒された悪魔達、特に「七つの大益」と呼ばれている悪魔達のページに注目している。
(マモン…………先の大戦では軍を率いて活躍したと聞くが、5匹の頃のヨーカイジャーに容易く倒された取るに足らん奴だ)
実際には、容易くというほど簡単に倒されたわけではないのだが。
(レヴィアタン…………巨大化魔法が苦手で魔力が詰まったカプセルで補っていたのか。そんな奴がよく幹部になれたものだな)
苦手といっても巨大化魔法が使えるだけで優れた悪魔と言えるのだが。
(アスモデウス…………)
【episode:15 「閃光の覇者」より】
ザシキワラシに襲い掛かろうとしたアスモデウスがグリーンの銃撃を胸に食らい立ち止まる。
翼の防御を忘れるくらいかき乱されていた。
ザシキワラシはゆっくりと歩きだし、正面からアスモデウスを真っ直ぐに見つめ立ち止まる。
その体は微かに輝く銀色のオーラのような物に包まれていく。
「オイラ、みんなの力になりたい。妖怪も、人間も、みんなみんなみんな助けられるオイラになりたい! 悪魔にも、どんなことにも負けないオイラになりたい!!!」
銀色のオーラは強烈な光となり、薄暗い地下闘技場の全てを照らし出す。
眩い輝きに目が眩む一同の前で、ザシキワラシの体は特別製の服と共に急成長、髪も伸び、銀色のジャケットを羽織り銀色のズボンを履いた20歳ぐらいの青年の姿になった。
「これは……」
「なんと……」
「ザシキワラシちゃんが……」
「大人になった……」
「そして……」
「風呂敷似合わなねえええええええええええ!!!!!!!」
背中に背負った「THE・風呂敷」みたいな柄の風呂敷だけがそのままだったのをヨーカイジャー全員とアスモデウスからツッコまれた。
ザシキワラシは風呂敷の中身をぶちまけ、その中の銀色のバックルを腰に当てることで自動的に伸びた帯が腰に巻かれ、銀色のベルト「ムゲンドライバー」を装備。
帯に付いていたカードホルダーからブルクダンの変身チェンジカードを取り出し、スマホ型のアイテム「ムゲンライザー」に差し込み、それを顔の横に構えて叫ぶ。
「妖怪変化!!!」
ムゲンライザーをムゲンドライバーのバックルにセットすると、ザシキワラシは一瞬にして眩しい銀色の戦闘服を身に纏い、頭にはウシの豪快さと件くだんの神秘性を彷彿とさせる銀色のフルフェイスマスクを装備した。
ザシキワラシは変身した自分の体を見渡して飛び跳ねる。
「すっげえ! すっげえすっげえすっげえ!! オイラ今日から、ヨーカイシルバーってことか!!」
「5人で隙を作る。そこへお前が強力な一撃を叩き込め」
「…………うん!」
シルバーがブルクダンの装備アームズカードを発動させると、ブルクダンの姿を模した一人で抱えられる大きさの大砲・ブルブラスターが出現、シルバーにグリップを握られその手に収まる。
「みんなでムゲンシューター!!」
グリーンの一声でシルバー以外の5人がムゲンシューターでの銃撃を開始。
グリーンとイエローは正面、ピンクは右、ブルーは左、そしてレッドは空中から。
アスモデウスはまた翼で体を覆う防御姿勢でそれを防ぐ。
「そんなもの、いくら撃っても無駄だ」
十数秒後、銃撃の音が止む。
アスモデウスが防御姿勢に隙間を開けて外を覗くと、倒れているシルバーの姿が見えた。
「ん……?」
防御姿勢を解除して辺りを見回すと、5人のヨーカイジャーが倒れていた。
不信に思いながらもとどめを刺すべく歩き出そうとしたその時、空中からレッドの大声が聞こえてきた。
「うおりゃあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
「!!!!?」
上を見て身構える。
が、レッドはただ叫んだだけだった。
「今だ!!」
グリーンの合図でシルバーがブルクダンの必殺カードを発動。
シルバーの妖力がブルブラスターに集中し激しい銀色の光を放つ。
「必殺妖技 猛牛大砲・全力発射!!」
ブルブラスターから銀色に輝く大きな光弾が発射された。
防御姿勢を取る間も無く直撃を食らったアスモデウスは光弾を押し返そうとするも虚しく逆に押されて後退させられる。
「こ……この私が……馬鹿な……な……な……な…………はあああああああああああ!!!!!!!!!」
壁にぶつかると同時に爆散。
「うよっしゃあああああああああああ!!!!!!!!!!!」
レッドが宙返りから着地して天に拳を掲げる。
【再び関東某所の廃倉庫】
(5匹の人間に妖怪が1匹加わっただけでやられたか。自分の防御力を過信して油断したな)
アスモデウスを始めとする悪魔達のデータが載ったページを塵を払うように捲っていく。
(ベルフェゴール…………)
【episode:32 「究極夢幻合体」より、悪魔の資料には載っていない場面】
水晶を透る淡い光に浮かぶ千影は悲しいほどに美しい。
ピンクは水晶にそっと手を触れて語りかける。
「千影ちゃん、千影ちゃんが頑張って本当の気持ち、伝えてくれたから、あたしも頑張って本当の気持ち、伝えるね。……怒ったのは、千影ちゃんがなんにも悪いことしてないのに謝るから。泣いたのは、千影ちゃんがあたしのことそんな風に思ってくれてたなんて想像もしてなかったからびっくりしたのと、そんなこと全然気付かなかったから無神経に大大大大大親友とか言っちゃったのが申し訳なかったのと、好きって言ってくれたときの千影ちゃんが、今まで見た中でいっちばん綺麗だったのとで、頭の中ぐっちゃぐちゃになっちゃったから」
水晶に触れた小さな手が微かに震える。
「千影ちゃんはあたしにとって、綺麗で、強くて、優しくて、憧れのお姉さんで、一緒に戦う仲間で、理想の女の子。それは今も、これからも変わらないけど、今までよりもっともーっと、千影ちゃんのこと大好きになったから、だから…………」
息を吸い、震える呼吸を整え、水晶の中の千影に真っ直ぐに叫ぶ。
「千影ちゃん、あたしと、付き合ってください!!」
その瞬間、水晶は砕け散り、変身を解除した結月は解放され倒れ込んできた千影を受け止め、キラキラ輝くカケラの中で抱き締め合う。
「結月! ごめんね! ごめんね!」
「いいよ! 謝ってもいいし、謝らなくてもいいよ!」
「結月、大好き!」
「あたしも、大好き!」
「大好き!」
「大好き!」
【再び関東某所の廃工場】
(実力者とも怠け者とも言われていたが、怠け者のほうが正しかったようだな。しかし……)
資料を閉じて天井を見つめる。
(仮にも英雄と謳われた悪魔達が、下等な人間どもや下劣な妖怪どもに倒されるとは…………人間と妖怪が手を組めば、それほどまでに大きな力を発揮できるということなのか…………人間と妖怪が……………………ん?)
アーリマンは肩を震わせて笑った後、翼をはためかせ天井を突き破り空高く舞い上がった。
「そうだ、そうすればいいのだ。それがいい……」
呟いて西の方角へ進路を向ける。
数時間後、イギリス某所に建つ巨大な洋館。
その数十メートルはあろうかという巨大な扉の前にアーリマンが降り立ち、洋館の雰囲気に似つかわしくない近代的なデザインのインターホンを鳴らす。
すると巨大な扉がゆっくりと開き、中から茶色がかったメイド服を着た少女が出てきた。
金色の混じった美しい茶髪と白く透き通った肌が印象的な少女は、扉の前のアーリマンを臆することなくまっすぐな、しかし無機質な瞳で見つめる。
「私は好血妖怪カーミラ。ご主人様に何かご用でしょうか?」
「お前の主人に話があって来た」
カーミラは無機質な視線を逸らさずに数秒考えた後、
「お入りください」
と、アーリマンを扉の奥へと招き入れた。
カーミラに連れられ赤いカーペットの廊下を歩き、入り口と同じくらいの巨大な扉の前に辿り着く。
カーミラは扉をノックし、
「ご主人様、お客様をお連れ致しました」
と無機質な声で呼び掛け、細腕で数十メートルの扉を表情ひとつ変えずに開く。
開かれた扉の向こうは小奇麗だがカーテンを閉め切られた薄暗い部屋。
そこにはこの洋館の扉をギリギリ通り抜けられる程度の高さの巨大な棺が立てられていた。
「私は悪魔帝国デモンダイム幹部・アーリマン!」
「悪魔が吾輩に何の用であ~る?」
棺の内部から響く、低く通りの良い声。
「お前に面白い話を持って来た」
「悪魔がわざわざ、話をしに来たのであ~る? 面白くなければ死ぬ覚悟はできているのであ~るな?」
「死なない自信しか無い」
アーリマンが嘴の奥でほくそ笑む。
「ふむ……」
巨大な棺が軋むような音を立てて開き始める。
【to be continue……】




