218話 守るものがあるからこそ
家族を作る。
正直、考えたこともなかった。
剣の鍛錬に励んで。
がむしゃらに人生を歩いてきて。
気がつけば四十歳のおっさんになっていた。
普通に考えるのなら、とっくに家族を持っているような年齢だ。
ただ……
「どう……なんでしょうね。今まで一度もそういうことを考えたことがなかったため、なんというか……自分の中で想いが定まっていません」
俺の家族は、おじいちゃんと……
そして、兄さん達だ。
おじいちゃんはとても素敵な人だった。
しかし、兄さん……ハイネはお世辞にもそうと言うことができず。
俺の中の『家族』というものに対する印象はバラバラ。
憧れもあり、拒否感もあり。
なんともいえない感情で、時に心がグチャグチャにされてしまう。
ただ……
時折、憧れのようなものを抱くことはあった。
自分が微妙な環境にいたからこそ。
幸せな家族を見ると、羨望めいた感情を抱くことがある。
「無理に、というつもりはない。そもそも、それは俺の柄ではない」
「かもしれませんね」
「ふと、そう思っただけだ。あまり気にするな」
守るものがあると人は強くなれる。
そして、帰る場所があるからこそ癒やされる。
そんな話を聞くが、ソーンさんはそういうことを言いたいのだろうか?
なんにせよ、気にかけてもらえるのはありがたいことだ。
「ではな」
ソーンさんは背中を向けた。
別れの挨拶は一言だけ。
でも、それがらしい気もした。
「はい、また」
俺も、短く返した。
さようなら、ではなくて。
また、と再会を期待する。
それに対して、ソーンさんは言葉を返してはくれなかったけれど……
「……」
軽く手を振ってくれた。
たぶん……
それは、ソーンさんなりの返し。
また会おうと、ソーンさんも約束してくれた、ということなのだろう。
「……そうだな」
ソーンさんを見送り。
その背中が見えなくなったところで、俺は、一人小さく呟いた。
ぽんぽんと、軽く剣の柄に触れる。
「今度、ソーンさんに会った時……驚いてもらえるように、もっともっとがんばらないといけないな」
剣が好きだ。
好きだから、剣を振る。
その果てに、守る、という想いを抱く。
だからこそ……
「がんばらないといけないな」
これまでも。
これからも。
ずっと、ずっと。
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