40話
「ちょっといい、エリー(仮)ちゃん?」
「うん?」
決まらなさそうだったので、文句を言うかどうしたもんかと困っているとドゥエスが手招きしてきた。
ドゥエスついていき、五人からは見えない通路に移動をすると、
「これ……」
そう示したのは彼の片耳につけているイヤリング、地の精霊とのコンタクトがとれるという彼の精霊石だ。
今までなんの反応もなかったのだが、仄かに明滅している。
五人の前では魔法の明かりがあったようで、それに比べると霞んでいるくらい弱々しい光だったので気づかなかったのだ。
光る精霊石のイヤリングにドゥエスが気づき、精霊とコンタクトを取る。
「やっほー☆地の精霊ちゃん」
軽いな。
【良かったー!気づいてくれて、あのまま放置プレーかと思いましたよォ】
「さっき地上でドゥエスがコンタクトしようとした時は反応しなかったが、何か事情でもあったのか?」
【それがですねー、私の私室に侵入して荒らした人たちがいたので、トラップを仕掛けるのに夢中になってまして】
嬉々として報告されても困るんだが
「へー……え?」
「トラップって……ひょっとして坑道内の道を崩したり変な虫を道に詰めたか?」
【おや、なんで知ってるんですか?変な虫って『窮屈スライム』ちゃんですか?あれはただの私のペットのミョンちゃんです。】
「ペット……だったのね…ゴメン……」
ドゥエスのちいさな謝罪は聞こえただろうか?
【……その様子だとまさかのまさか…だったりします?】
「…………ぅん…ごめん」
さっきまでのお気楽な表情はどこへやら、目を背けながら謝罪をするドゥエス。
【仕方ないですね】
「よかった許して貰」
【今度寝てるときに這いずる幼虫を服に隠しときますね】
「ヒェっ」
さしものドゥエスも青ざめてたりする。
……地の精霊の表情は笑顔だが、目は怖くて見れない。
*
【それで、おふたりに話があって……】
「アシャト村で言っていた精霊王の欠片の件かい?それとも坑道内を荒らして回る冒険者の話かい?」
そういえば井戸端会議でおばさんがそんなことを言ってたっけ。
【両方です。精霊王の欠片はもともとは私の結界内にある部屋に隠していたんです。その結界を解かれて……】
「そこから封印されていたモンが持ち出された…と……?」
「坑道荒らしの仕業だというんだな?」
【はい】
精霊のエルフ耳っぽい耳が、しょげると垂れ下がった。
「ひょっとして、例の『坑道荒らし』はあいつらか?」
コソリと5人がいるところを影から精霊に見せたが、反応はいまひとつのようだ。
【私がみたのは4人でしたけど……見覚えはありますね。荒らしてたのはあの人たちですね。私の化石コレクションを壊してくれやがって…】
後半の語気に含まれた殺意は無視しておこう。
「あのなかに、今も精霊王の欠片を持っている奴はいるのか?」
【うーん……持ち出される瞬間を見逃していたので人相はわかりませんが、精霊のマナ跡は見受けられますね。……おふたりのお知り合いですか?】
この世界の人間にもともとあるマナと精霊がもっているマナ、そこになんの違いがあるかは傍目には分からないが、彼女には分かるのだろうか?
「彼女たちは、さっき会った人たちだよ。ニトラスの町の酒場のマスターに行方不明者を探してくるよう依頼を受けたんだ」
【探して……って、なんでまた?】
「数日前から探索に出たきり戻らなかったとか」
【そんな、家出でもないのに、たかだか数日の冒険で捜索の依頼が出ていたんですか……】
「彼らの中に貴族がいるみたいで……多分町の人達はそっちを気にしてるんじゃないかな?それに荒らされたんじゃ彼らも気が気じゃないデショ?」
ドゥエスの説明を聞いて苦虫を噛み潰したような顔になる精霊。
【町にご迷惑がかかるなら、さすがに手出しできなさそうですね。もっと追い詰めたかったんですが】
おいおい。
追い詰めるって……
いままで彼らに何をしたのか知らないが、見た目の穏やかさに騙されるところだったようだ。
「あの子たち、まだ未来ある学生じゃん。ホドホドにしといてよね」
そういう問題か?
【それに、宝飾品とか鉱石とかなら私もなにも言いませんけど、さすがに精霊王の欠片となると別です。あれは外に出したら危険なものなんですよ!】
「それは分かるけど、まあまあ落ち着いて、ね?」
語気が荒くなる地の精霊を宥めるドゥエスだが、精霊は少しずつヒートアップしていく。
その声を聞いてか、
「……他にも誰かいるのか?」
後ろから近づいていた気配に気付くのが遅れてしまった。
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単語少し修正しました




