38話
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大穴の周りは崩れたばかりの土と石ばかりだったが、どこかに繋がっているであろう横道と思われる穴が近くにあるのが見えた。
「あ、あそこに行けそうな道があるけど……」
といいつつ近づいていくドゥエスについていく。
「あ、足跡があるな……」
云われた通り、穴の近くの土には何人かの足跡が見て取れた。
「……五、六人ってところか?魔法使いの学生なら飛行の魔法が使えるんじゃないのか?」
実際のカリキュラムは知らないが、魔法を学ぶってことは、そういうところだと仮定しているんだが。
「だよねぇ……あそこは高等教育だし、課外学習するのには魔法使える生徒だけと思うんだけど」
そのまま上に戻ればよかったんじゃないかと思いながらドゥエスに話を降ると、ドゥエスは何やら考え込んでいた。
「なんの事情あったか知らないけど、上に戻らず、先の道に行ったみたいだね。オレたちも行ってみようか」
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……ぉぉ……
………ぉ…
坑道と言っていいのか分からないが、道に人工的に補強された木の枠が見えることから、誰かが作った道なのだろう。
どこからか風が通っているのか、はたまた地底からの呻き声が分からないが、遠くで反響するなにかの音が聞こえる。
「この坑道内には、モンスターや獣の類いは居るのか?」
「……会ってみたいの?」
「いや、なんとなく聞いただけだ……」
光の無いところに棲む生き物なんて変な形に進化していたり変な色していたり、ロマンが多いじゃないか。
無害なら。
「エリー(仮)ちゃんも入口の台座見たでしょ?」
「ああ、ぬいぐるみが置いてあった場所か?」
「そうそれ。本来はあそこに魔物避けや護りの效果を施した精霊石を設置して、鉱夫の無事を祈る結界を作るんだけど、数日前に壊されたって言ってたじゃん?それが無かったってことは……」
「……ふむ。魔物が出るってことか……」
そういえばそんなこと言ってたような気がするな。ネコ神ですっかり忘れていたな。
「そゆこと。まぁ言ってもせいぜい闇討ちトカゲとか窮屈スライムとか、どこの地面の下にでもいる温厚な奴らだよ。」
「闇討ちで温厚?」
「見ればわかる」
「じゃあ、スライムに『窮屈』って?」
「それも見ればわかる」
……
…………
そおか?
誰が名付けたんだ?
緩やかな下り坂を延々と下っているが、今のところ一本道で、何者ともすれ違っていない。
……キュ……
………………キュ…………
何かが擦れる音が前方から聞こえてくる。
例えるなら、フローリングの床を滑らないスリッパで滑ろうとした時のような音だろうか。
「何の音だ?」
「ウワサをすれば、早速窮屈スライムの鳴き声だね。」
鳴き声の『キュ』から来たのか?とか予想立てながら道なりに右に曲がると、
目の前に『それ』はいた。
「ん!なんだ!こいつは?!」
そこにいたのは通路いっぱいに膨れたブヨンブヨンの何かだ。
うすい緑色の不透明なその見た目は、例えるなら巨大化した青虫のようだ。
独特のちいさな脚のようなものがいっぱいついていて……
……なんか……うにょうにょしてる……
スライムって言うから半透明のゲル状の塊を想像したんだが、思ったほど透明感ないし、うにょうにょする脚が主張しているとは。
「これが俗に言う、狭き門より来たりて沼にハマりしものの末裔☆こと洞窟会のアイドル『窮屈スライム』さ!」
「……は?……アイドル?」
「でっかくなり過ぎて動きは遅いし、ジタバタもがく脚は滑稽だけど、通路の邪魔になるうえに、触手に毒があるから気をつけてね!」
紛うことなき芋虫モンスターじゃん。
うにょうにょわきわき蠢く多脚は、通路にハマって動けなくなってもがいている光景だったのか……そう考えると少しは愛着が……いや、邪魔だ。
「はるか昔、海辺の手のひらサイズのモンスターをペット用に捕獲した人が、うっかり輸送中に洞窟内に逃がしちゃってそこから繁殖したっていうゆー逸話がある、邪魔くさいスライムだよ。」
いや人為的なものなのかよ。
なおさら駆逐しろよ。
「懐かしいな〜♪オレも昔、お祭りの屋台で幼体を買って飼えなくなって野に放したっけ……最近じゃ買う人も少なくなってるから、見かけなくなったんだよねぇ」
「アンタが元凶かよ。責任もって駆除してやれ」
「えー……」
「ドゥエス、俺たちは道の先に行くしかないんだ。ここは駆除が妥当だろう?嫌なら奥に進ませたらどうだ?もちろんお前が押す担当で」
戻って行けそうな道を探すのもめんどくさいし。
自分から触りたくないので、怪力自慢にやってもらおう……
「え!やだよオレ!可哀想じゃん!雷でも落としてやってよ!」
その発言の方で心は痛まないのかコイツ?
「なあ、こいつは流石に火炎魔法を使ってもいいかな?ちょっと表面炙るだけだから……いいよな」
流石のドゥエスも気色悪いのか、過激な方法を取ろうとする。
「この中で火を使ってもいいのか?」
「まぁ、なんとかなるっしょ?!【着火】」
ボっ……
ギュッ!!
ギュエエエエエエ!?!
小さい火が表面を炙り出すと、『窮屈スライム』は悲鳴(?)を上げて、表面がビクビクと痙攣をはじめた。
そのまま表面がしばらく炙られ続け……
やがてー
ごぅお!!
「うわっ!」
「おわっ!?」
やがて、『窮屈スライム』全体に火が燃え移り、火の勢いが強くなった。
ぎゅゅゆゅゆいぃ…………
同時に生臭いものが灼ける匂いが洞窟内に充満してきた。
どのくらいそうしていたか、
火の勢いが収まると、スライムが溶けてなくなっていた。
水分より油分多めで出来ていたのだろうか……
「……なんか、すまん。普通のは水で出来てるって聞いたんだけど……まさか、溶けてなくなるなんて思ってなくて……」
「なんで謝るんだ?」
火で炙られた芋虫はやがて萎み、黒く焼け焦げたシワシワの塊になってしまった。
ブヨブヨの肉で隠れていたと思われる脚の一部、とに何かが転がっているのが見えた。
それに気付いたのか、ドゥエスが近づいて拾いあげた。
「石?」
炭化した芋虫の身体かと思ったが、違うらしい。
それは黒い石だった。
「黒炭か?」
「……かな?これ食べてたから、よく燃えたわけだね」
あそこまで勢い良く燃えるのかは分からないが、たぶんそうなのだろう。
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