おんぼろ屋敷の中
父は大切そうにカギを取り出し、屋敷の扉を開けた。
扉はキギーィと音を立て開き、私たちは恐る恐る屋敷の中に入った。
屋敷の中は何十年も閉めきりになっていたので、空気が淀みカビた匂いがした。
お父様、お母様、本当にここに住むのですか?
私は訳が分からず父と母の顔を見たが、どうやら住むらしい。
執事のラルフが馬車から荷を下ろすと、父と母は馬車に少ない家財道具を屋敷に運んだ。
私は窓を開け、部屋に空気を流した。
それから屋敷にあるバケツを見つけたので、屋敷の裏にある古井戸で水を汲み屋敷に会ったボロ布で床を拭いた。
父と母は私の行動に驚いていたが、居間に置いてあるベッドを指さし、父は「体が心配なので今日は夕食のパンを食べたら早く寝なさいといってくれた」
夕食は引っ越し祝いを買ってきたものでするつもりだったけど、私もあまり体力がなさそうなので、パンの耳と牛乳1本を4人で分けて、パンの耳を牛乳に入れて食べた。
そういえば、馭者をやってくれていた執事は、馬車から降りて荷を下ろしてくれ、馬の手入れをしている時お父様と庭で話していたが、それっきり見えない。
私は彼がどこへ行ったのか聞いたが。彼は私達が住んでいた館の近くの街に馬車を返しに行ったようだ。
あの馬車はレンタル馬車?「以前は我が家にも馬車もあり馬も2頭いたんだが、その馬車と一頭の馬は、国に返すことになっていたので、あの馬車は借り物だ」と父は私に言った。
彼には私達が伯爵から平民に戻り給金が出せなくなったので馬一頭と僅かな退職金を渡したので街まで馬車を返したらそのままもう戻ってこない、と言った。
馬車に2頭いた馬は一等はレンタルだったの? 私は貴族令嬢ではなく、貧乏な平民に転生してしまったんだ、なんてこった、ついてないと思った。
しかし、私はこの国の国王は血も情けもないなぁ、と思った。
馬車や馬ぐらい見逃してくれてもいいんじゃない。 どうせ潰すんなら、お目こぼししてくれても良いと思った。 父や母は家財道具もお金もあまりなく。裸同然でこの半分壊れたような屋敷に追いやられた。
父と母と弟は厨房の隣の部屋にベッドを運び寝ている。
私子爵令嬢に生まれ変わったんじゃないの? でも転生した時はすでに平民になっていた、訳が分からず床に就いたが、誰かが上から見下ろしていたように感じたが、眠さと疲れが同時にでて、すぐ眠りについてしまった。
朝になり庭の鶏が騒がしく泣く声で目が覚めた私はもう一度庭に出た。
家族はまだ眠っているようだ。
厨房にあった新しそうなバケツに水を汲もうと井戸に行ったが、すこし緑の草が生えていたので、私はその草に導かれるように屋敷の裏庭を歩いた。
しばらく歩くと泉のようなものがあって、その辺りは、草、気が青々としげっていた。
屋敷の表の庭は砂交じりの乾燥した土だったので、農業は厳しいと思ったが、このあたりの地面なら水も近くに流れているし可能かもしれない。
私は水に手をやって水を確かめてみた。 見た目綺麗な水なので、泉をよく見ると、水が湧いている場所があった。 湧き水だ。
となりの子爵領の山からどうやらこの水はきているようだ。
私はお爺様がなぜここを別荘に選んだのか、わかった気がした。
隣の子爵領はこの山々があるためなかなかここに侵入できない。
また子爵領は他国に面しているのでその警護がいそがしく他領のことには無関心だそうだ。
こんな近くに山があるなら、この国にも雪の降る冬というものがあるのだろうか?
そう言えば、居間に暖炉があった、ということは、やっぱり冬は寒くなりそうだ。
私達のいる子爵領ではここは砂っぽくおまけにくぼ地なので目立たなくて、こんな土地を狙う人達は子爵領にはいないので逆に夏の別荘としてお爺様は選んだに違いない。
父はまだ小さかったので、この泉や裏庭のことは覚えていなかったのかもしれない。
しかし屋敷は手入れが長らくなかったのでいまにも崩れそうなぐらいぼろぼろだ。
屋根も少し壊れたところがあるし、冬にここに住むのはすこし、危険な気がするが、新しい家を建てるお金もないみたいなので、ここに4人で住む以外私たちの居場所はないのか、と思った。




