第29話:黒幕の正体 ~バグの根源は意外な場所に~
「……は? 巨根の翁が黒幕?」
不比等に連れられ、捕らえられた反乱分子の元へ向かった俺は、自分の耳を疑った。そこにいたのは、第19話で俺がプリンスに「丸投げ」した、あの頑固じいちゃんだった。
「海斗殿、驚くには及びません。彼は土地を奪われることに最も激しく抵抗した『旧システム』の象徴。貴様のポスターを汚し、刺客を放ったのも、すべてはこの翁の指示です」
不比等が冷たく言い放つ。翁は縄を打たれながらも、俺を睨みつけて叫んだ。
「……異国の小僧! 土地は先祖代々の魂よ! それを『公地公民』などという得体の知れぬ言葉で奪い去る皇子を、わしは許さぬ!」
俺は少しだけ、胸が痛んだ。このじいちゃんにとっては、俺たちのやってることは「強引なOSの強制アップデート」で、大切なデータを消されるような恐怖だったんだな。
だが、そこへ中大兄プリンスが静かに歩み寄った。
「翁よ。貴様の魂は理解した。だが、国がバラバラのままでは、唐や新羅という『巨大な外敵』に飲み込まれる。この国を一つにまとめるには、古いシステムを壊すしかないのだ」
プリンスの言葉には、いつもの強引さだけじゃない、覚悟がこもっていた。
「……海斗、不比等。これより本格的な改革に入る。土地も、民も、すべてを一度『国』というサーバーに集約する。……これが本当の『大化』の始まりだ」
俺は、プリンスの横顔を見て直感した。あ、これ、もう後戻りできないやつだ。「なんとかなる」なんて言ってる場合じゃない、ガチの歴史の転換点に俺は立ってるんだ。
【今回の学習ポイント:大化の改新の本格化】
・公地公民: すべての土地と民を天皇のものとする制度。それまで各豪族(蘇我氏や翁のような地方勢力)が私有していた「フォルダ」を、国という「共有クラウド」に統合する壮大な改革だったんだぞ。
・改新の詔: 646年の元日に出されたとされる改革の基本方針。この中には「郡」という新しい行政区分の設置なども含まれていて、現代の日本の市町村システムの先駆けになったんだ。
・反対勢力の排除: 改革は平和に進んだわけじゃない。今回登場した翁のような、特権を奪われる豪族たちの抵抗は激しかった。それを中大兄皇子と鎌足が「力」と「理屈」でねじ伏せていったのが、この時期のリアルな姿なんだ。




