訪問者
達の前に座った男は改まった様子で、隣の女性は緊張しているのか、青ざめた顔をしているように見える。
「伝えておかなきゃいけないことって、一体何だね?」
「それが…」
さっきまでハキハキと答えていた男は、なんとなく歯切れが悪い。
「それが… 1回捕まったことがあって。」
「捕まったって、警察にか?」
達の鋭いツッコミにひるんだ男。
横の女性が
「彼は、育ってきたときの環境とかが悪くて、一度だけ悪い仲間と付き合ってたことがあるの…それでその悪い仲間と一度…」
「それで、その悪い仲間と今は?」
「今はもちろん付き合っていません」
男は珍しくしっかりと答えた。
「やんちゃをしたことがあるということだな」
うなずく男性。
「それで全部か?」
達の目が厳しい。
「後は…」
男は息を呑んでいる。
「後は・・・背中から腕にかけて和彫りの龍がいるんです。」
「ワボリノリュウ?」
達には、その言葉が飲みこめずに繰り返したようだ。
達は、頭の中で一生懸命なんのことか考えようとしている様子だ。
男の横にいる女がイライラした様子で
「竜の刺青が入っているという事」
代わりに説明をした。
「刺青だと?」
達と愛子は思わず声を上げた。
「それも若い頃の過ちなの、16の時に入れたんだって…。」
「…普通の人は、刺青は入れない。」
「彼は、そんな人じゃないの。」
「そこの彼氏にお前が惚れているから悪く思いたくないのはわかる。でもな…」
「でも、何?」
「今の時代、なんでも時代のせいにしたくはないけど、ワンポイントのタトゥーをファッションで入れる人が増えてるのは知っている。そんな時代になっても、普通の人は若気の至りでタトゥーを入れても、和彫りの龍は入れない。そういうものが入っている人との結婚は反対だ。」
「それは偏見だわ。確かにそんなことをしたかもしれないけど、彼はちゃんとしていて礼儀正しくちゃんと働いてるのよ。部下の評判だっていいの。何の問題があるって言うの?」
「そうは言っても、やっぱり、刺青の入った人はだめだ。時代で済ますこともできないし、やはり普通の人としては受け入れられない。」
「そう言われても仕方ないですね。」




