波
病院にかけつけた渉はいたく喜んで、二人で「夏海」と名づけた。
退院の日、渉は迎えにくると言っていたが、時間になっても現れずに電話をかけても出なかった。
(前は、約束を破るような人じゃなかったんだけどなぁ…。)
美紀は諦めて、タクシーで家へと帰った。
その日渉から連絡はなくいつも寝るくらいの時間になっても帰ってこなかった。
連絡もなかったので、美紀はずっと気を揉んで待っていた。
結局連絡しても呼び出されなく、何時になっても渉は帰ってこなかった。
朝9時を過ぎた頃、渉が帰ってきた。
美紀は、帰ってきた時にガミガミと話をするのをやめようと心に思っていたが、渉の顔を見た瞬間
「何で帰ってこないの?しかもなんで電話にも出ないの?」
と、気がついたら時には渉の肩を掴んでいた。
「同僚に誘われて飲みにいくハメになっちゃったんだよ。」
「大事な日に、昼間から?」
「そう、現場が早く終わったからね。」
「でも、昨日は前から決まってた退院してくる日だったんだよ。普通飲みに行かないよね。」
「断れないことだってあるだろ。」
渉の顔が怖い。
「断るべきだと思うよ。」
「だってさ…」
部屋の端で夏海がか細い声で泣き出した。
「もう…いいよ…。」
渉が逆ギレしている。
なんで、帰ってきてすぐこうなるんだろう?
前だったら、その日帰ってきたのが遅くても文句言わなかったかもしれない。
でも、女の影がチラついてしまった今疑わずにはいられない自分もいる。
お互いがお互いを不信なのかもしれない。




