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えっ、私が勇者になるんですか!?  作者: 立川好哉
第2部・3年生編
295/299

292・照れミーナ

 寒い日、リビングに集まって暖かいコーンスープを飲む3人は、明日の試験に向けた勉強の休憩中だ。

 もこもこしたソックスを履くルシャに爪先でいたずらを仕掛けるルートは、ふとあることを思った。

「ミーナの恥ずかしがってる姿をあまり見たことがないなぁ」

「そう?水着のときとか恥ずかしがってたよ?」

「そうか?そうでもなかったぞ。もっと顔を真っ赤にするくらい恥ずかしがってるところだよ」

「それは誰だってねぇだろ」

「ルートさんのそういう姿も見たことありませんよ。どういうときに真っ赤になるんですか?」

 男だから恥ずかしがることなんてないと言ったルートだが、ルシャに耳元で褒め言葉を囁かれると赤くなることが判明した。

「くすぐってぇわ」

「褒められたかったんですね…でも赤いほうが親しみやすさがあります」

「そうか?しかしミーナが恥ずかしがってるところか…あいつは堂々としているし、曝け出すことに慣れてる感じはあるな。弟が3人もいれば、無茶ぶりもされるだろう」

「真面目にもなれるしはっちゃけることもできるからね。あいつが誰よりも万能だよな」

「そう思う。恥ずかしがらせる…下着姿に剥いて街中に放置すれば恥ずかしがるだろうが、そういうことじゃないんだろ?」

「もちろん。犯罪を赦さないダテだろ?家の中でならともかく…いや、俺の前で下着姿になることなんてないだろう」

「だろうね。そうだな。お前はミーナの下着を見たことがないんだ。かわいそうに」

「価値のあるものだとは認識している。しかしお前のを見られるならそれでいい。俺以外の男はお前の下着を見られないんだ」

「間違いない。さて、ミーナに照れ顔をしてもらうか…しかし演じてる感じじゃなくて、素で恥ずかしがらせたいな…どうすれば」

「褒められるのは慣れてるだろうし…なんでしょうね?1発ギャグでもやらせてみますか?」

「あいつは乗り越えるぞ」

「うーん…じゃあ、パンツ……」

 見られて恥ずかしいと言えばパンツだ。ルシャがフワッとした魔法を起こしてミーナのスカートを捲り、彼女の後ろにルートが立っていれば条件は整う。あとはミーナが赤くなるかだ。

「ならなさそうだなぁ…あいつ無敵か?」

「ルヴァンジュダンジョンにある衣装の中で候補はありますか?」

「んー…幼稚園児の格好をしてても似合ってたからなぁ…なんだろう。照れる、恥ずかしい…」

 ルシャは唸った。こういうときに陥りがちなのはアブノーマルな思考で、ルシャはルートに得意だろうと言って考えさせた。

「スカートの丈が短すぎてパンツ丸見えの服で、パンツを庇おうと引っ張ると胸が丸出しになる服とかねぇの?」

「すごく変態な思考…」

 クロエに軽蔑されてもルシャに評価されるならルートは意見を出し続けるつもりだ。そこでルシャはルートを”あの店”に連れていくことにした。クロエもついて行きたいと言ったが、そこは立ち入って中を見た人を変える店だと言って留守番をさせた。

「うちに変態はこいつだけでいい」

「変態になるのか……ん?ってことはルシャさんも変態…」

 じゃあ仲間外れになるじゃないか、と思ったクロエは、ルシャとルートという魔法のプロにバレないようにコッソリ尾行することにした。




 すると……

「おぉう、いいですなぁ…おや、ルシャにルート」

 ミーナは少し気まずそうに焦って店を後にした。紙袋を持っているが、中身は何だろう。クロエには気付かなかったようだ。

「店長?あいつは何を買ったの?」

「言っちゃダメだとのことだ。ヒントを言うなら、新たな自分になれるものかな?」

「新たな自分…?」

(服装のことかな…)

 だとすると、ミーナはルシャとルートの思うようなものを買ったのかもしれない。ミーナを見てしまったことでここでの目的が果たされたようにも思えるが、2人は買い物を続けることにした。

(まさか私のいないところでルシャさんがルートさんにエッチな姿を見せているのでは…!?)

 ダテの清楚(本物)として知られているクロエは実はそこそこのピンク脳を持っている。ルシャが局部だけ隠した露出の激しい服を着ているのを想像した彼女は自分が赤くなってどうすると自責した。

「テーマは”ギリギリ”だ。ミーナにとってギリギリを攻めろ」

「これとか?」

 マイクロビキニを掲げたルートにルシャが渋い顔をする。

「これは…はみ出るかなぁ。恥ずかしいのは間違いないだろうけど。この敢えて安っぽくしてる生地はいい」

「ふむ…透けるかな。それは興奮するね」

「私というものがありながら…浮気性なのか?」

「ダテはみんな好きだよ。けど、お前じゃなくてもいいかって言われたら、それは違うと言う」

「じゃあ…私が着ようか?」

 このカップルはクロエがいるのに気付いていないので好き放題に喋っている。やはりクロエが赤くなって魔法が切れそうになる。

「お前のパンツはさ、もっとどうにかならんのか」

「俺?」

「見慣れたせいかドキッとしないんだよな。ほぼ同じだし、せめてちょっと素材や形が違うとかさぁ…あ、私が前に買ったやつ穿く?」

「それはマジで嫌だ」

「じゃあ、なんかテカテカしてるやつ穿けば?」

「穿き心地が良ければいいけど…」

 ミーナのことはどうでもよくなったようで、2人は互いが思うセクシーな衣装を調べ、折り畳んだ状態で店長のところに持っていった。

「割引券あげるね」

「ありがとう」

「来週まるごと1週間休むからよろしくね」

「どっか行くの?」

「王都の知り合いに会うんだ。そこで新しいものを開発するつもり。デザイナーでさ」

「へぇ。その人がデザインしたのをここで扱ってるの?」

「それもあるよ。実はいろんなところにコネがあって、デザイナーも少なくないんだ」

「そうなんだ。やっぱ商売やるだけあっていろんな繋がりがあるんだ」

「まあね」

 クロエは店主のコネのことが気になった。この店以外にもこういう店があるのだろう。だからクロエはルシャとルートが帰った後で出現して再入店した。

「いらっしゃい。初めてかな」

「あ、はい。紹介制とか…ですか?」

「いいや、けど知り合いに連れて来られずにここに入った子は少ない。怪しくて誰も近づこうとしないよ」

「あ、なんというか、むしろ興味が湧く性格でして…」

「そっか。もしかしたら君のような若い女の子には不向きな店かもしれないけど、何も禁止していないからいろいろ見ていいよ。この店は広告を出さないし、誰かに商取引の情報を渡すこともない。秘密を守る店だ。僕に見られることを許容できるかどうかだが、着用しているのを見られるわけじゃない」

「そうですね…ちょっと見させてください」

 クロエは怪しい店の中にある服や道具を端から見ていくことにした。先輩が愛顧している店には、先輩の性的好奇心を刺激するものがたくさんある。1つ1つに新たな知識が眠っているので、夢中になって漁ってしまった。

「…すまないね。この店の営業時間は短くて。このあと居酒屋に行って今日も1日頑張ったという会をするんだ」

「ああ、すみません!時間を忘れてしまいました。あの、これだけ買いますっ」

「わかった。ありがとうね。先輩によろしく」

 店長が閉店準備を始めたので、クロエは邪魔にならないように急いで退店した。たくさん見た中で自分の興味に引っかかったものを買ったわけだが、別のものも引っかかっていた。

「ん?先輩によろしく…?」 



 一方、ミーナの家では…

「いえーい!お誕生日おめでとー!」

「ありがとう。もっと頼れる兄になるよう頑張るよ」

 クリスが誕生日を迎えたから家族で祝っている。父母お手伝いさんからプレゼントが渡され、ルカとレオからも開くと立体の置物になるレターセットが贈られた。

「ミー姉は何をくれるんだろう?」

 姉からのプレゼントがいちばん楽しみなクリスはプレゼントを取りに行った姉の戻りが遅いと言った。しばらくしてドアが開き…

「おめでと~…」

「うおぉ!?」

 思わず大きな声を出してしまうほど驚いたのは、ミーナが弟にとってとても刺激的な格好をしているからだ。胸を覆う布は上端が尖っていて、そこを摘まんで捲るとあっさり中が見えてしまいそうだ。テカテカした素材がぴったりと身体にフィットしていて、大人になった女の子のボディラインがよく分かる。そして骨盤のあたりから流れる輪郭は、否応なしに股のほうへと目を誘導する。

「すごい服だね…」

「これがお祝いの服かどうかは分かんないけど、なんかパーティーっぽいから選んだよ。正直、かなり恥ずかしいが…」

「下着ではないんだよね?」

「うん。下はちゃんと穿いてるよ」

「上は着けてないの!?」

「うん。だってハミ出るじゃん。どう考えても」

「そうね…え、私は40年近く生きてきてこの服を1回も見たことがないけれど、これはどういう服なの?」

 父母が大胆な娘を見て惑っている。バニー服と呼ばれてはいないが、かなり露出の激しい衣装は誰でも惑わせてしまう。

「お尻のところについてるポンポンがかわいいね」

「これね。尻尾みたいだね」

「お尻のほうもすごいね…」

「パンツと同じ輪郭じゃん」

 だからこれは実質パンツだろうという結論がつきそうになったが、ルカが服を引っ張って中にしっかり水色を確かめたので、パンツではないということになった。

「これって女の子だけが着るんだよね?」

「お前も着るか?」

「うーん、なんかハミ出そうだからやめておくよ」

「そうだな。ママ様が着る?」

「着ないわよ!」

 バニーコスのママ様を想像したピエールが高速で頷いた。弟3人とお手伝いさんに囲まれて凝視されると股がムズムズしてくる。

「ダメだっ!これは耐えられん!」

 ミーナは赤面しながら身体の熱さを感じ、ついに引っ込んでしまった。

「ミーねぇ、よかったよ」

「かわいかった」

「そう言ってもらえてよかったよ。さて、お姉ちゃんからのプレゼントだ」

 ミーナはカッコいい時計をプレゼントした。スポーツモードを搭載していて、複数種目の競技時間をタイマーにセットできるほか、ランニングに便利なラップ機能もある。

「おぉー!」

「あの格好を見られることがプレゼントじゃなかったのですね」

「まだそう思うには幼い年齢でしょ。それに、もっと大人だったらやってないよ。マジになっちゃうじゃん」

「かもしれませんね」

 本気にさせないギリギリの年齢だとミーナは判断したが、クリスは意外と大人だった。知らぬ間にハンガーにかかっている向きが逆になっていたので、誰かが移動させたのだと思った。

「さては…扉を開いてしまったな?」

 弟がバニーコスの伝統師になったらどうしよう、とミーナは思った。

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