茉莉・誕生日SS
SS その時間の価値を知るのは全て後になってから
茉莉が隠れ家に入ったとたん、クラッカーが鳴り響いた。
円「茉莉ちゃん、誕生日おめでと」
桐谷「おめでとう茉莉。今日は茉莉のために皆でケーキを用意したんだが、どうかな」
今日は1月11日。
茉莉の誕生日だ。
だから、記念日を祝うために円や桐谷、未来たちは隠れ家で色々と準備していた。
茉莉「あたし、びっくりしました。おたんじょーび会? 準備してくれてたんだー。円さんも桐谷さんもありがとー」
円「他ならぬ茉莉ちゃんのためだもの。色々用意したわよ」
桐谷「さあ、こっちに座るといい」
茉莉はテーブルの上に用意された誕生日ケーキの前に座らされる。
そこにあるのは、猫の砂糖人形がのせられた。小ぶりの小さなケーキだ。
茉莉「ふぁぁ、かわいー。猫ちゃん! 食べるのがちょっともったいなくなっちゃうなー」
桐谷「ふふ、そう喜んでもらえると皆で悩みながら選んだかいがあるよ」
円「そうそう、未来なんてあれこれうるさかったのよ。色がだめだとか、飾り付けがなってないとか」
茉莉は先ほどからずっと黙っている未来の方へ視線を向ける。
茉莉「未来もありがとねー。あたしはとっても嬉しいです」
未来「そうか」
未来は小さく笑みを作って、茉莉の頭をなでなで。
そこに茶々を入れるのは円だ。
円「こいつクールぶってるけど。さっきまでホントうるさかったのよ。茉莉はこっちの方が喜ぶとか、猫の人形はあっちに配置した方がいいとか」
桐谷「大したお兄さんぶりだったよ」
未来「円が考えなしなのを、フォローしただけだろ」
茉莉「そっかー。未来が頑張ってくれたんだー」
未来「頑張るほどの事はしていない、お前は単純だからな」
茉莉「むー。そういう時は素直にどういたしましてって言うんだよー」
桐谷「楽しいお喋りはいいが、そろそろ食べた方がいいのではないか? ケーキの食べごろがいつまでなのかはわからないが、どうせなら美味しいうちに食べた方がいいだろう」
円「そうね。ちゃっちゃか切り分けちゃいましょ。ほら、未来お皿ならべなさい」
誕生日ケーキを器用に切り分けていく円。
茉莉のケーキの上には、猫の砂糖人形のものがあった。
他にもジュースをついだり、食器がそろっているか確認したり。
準備がそろった所でいただきますをして、一同はケーキを食べていく。
茉莉の隣に座った未来は、視線を幼馴染の方へ向けた。
その目線の先には、別のお皿にとっておかれている猫の砂糖菓子。
未来「食べないのか?」
茉莉「うん。だってもったいないから。後で食べます!」
未来「そうか。早めに食べろよ。いつまでもとっておくと蟻が来るぞ」
茉莉「あたし、そこまで忘れんぼさんじゃないよー」
四人が集まった隠れ家の中で、茉莉はいつもと同じように楽しそうな笑みを浮かべる。
茉莉「未来、ありがとねー」
未来「さっき言っただろ」
茉莉「ありがとうの言葉は何回言ってもいいんだよー。でね、未来や皆のお誕生日がきたら、今度はあたしがケーキを用意するね。……その時は食べてください」
未来「そんなに緊張して言うほどの事でもないだろ。いつも食ってるんだし」
茉莉「あー、ひどいんだー。未来は乙女心のなんたるかを理解してません。怒っちゃうよー。怒りの神様こーりん」
未来「大した事ない神様だなそれ」
茉莉「そんな事いっちゃう未来はもう知りません。ふーんだ。とっても美味しく作れても、食べさせてあげない」
未来「安心しろ、お前の腕だとそんな日はそうそう来ない」
茉莉「つーん」
すねた茉莉がもくもくとケーキを食べはじめる。
その会話をきいていた円や桐谷がやれやれとした顔を見合わせて、未来へ言葉をかけていくのだがそこに擁護の言葉はなかった。
未来はそれらを右から左へ聞きながらしながら、もくもくとケーキを口に運ぶ幼馴染の姿を眺めていたのだった。
円「あの馬鹿兄貴、完全に甘ったれてるわ。これ」
桐谷「ふむ、ぬるま湯にひたりきって、油断していると言っても過言ではないかもしれないな」
円「後で痛い目にあっちゃえばいいのよ」
桐谷「私はそこまで言うつもりはないがな」




