第47話
それから俺たちは試験前最後の土日休みまでは千春と俺は2人で勉強をしていた。
気分を変えるために図書館に足を運んでみたりしたが、図書館には思いのほか人が多く、俺たち1年生だけでなく2年生や3年生の姿も見えて試験期間はやはり混むようだった。
2年生以上の試験はどうなっているのか気になったが、学年ごとに毎年変えてくるようなので聞いたところで意味はないのかもしれない。
また、俺から話しかけるなら知り合いでなければまた面倒なことが起こるかもしれないんで迂闊に声をかけることもできなかった。
「もう来週には試験ね…。貴方と相棒で良かったと実感しているわ。」
「どうした?」
「いえ、こういった特殊な試験なんて受けたこともないから緊張をしてしまって…。それに今回の試験では私だけじゃなくてあなたの評価もかかっているのよ?少なからずそう言うことも意識してしまうのよ?」
「そうか。だが、そこまで意識しなくていい。実力通りを発揮すればそこまで成績が悪くなることはないはずだ。」
「そうかしら…。」
「大丈夫だ。やれることをやれば結果はついてくる。」
「わかったわ。また弱気になっていたみたいね。」
「相棒として千春を鼓舞するのは俺の役目だ。」
俺たちは朝からそんなことを話しながらリビングで勉強道具を広げていた。
試験の方式がわかる前から互いを意識しながら勉強をしていたので、これだけの間一緒に勉強をしていればある程度は互いの得意不得意も見えてきた。
俺の場合はほとんど満遍なくカバーできており、死角がほとんどないとは言っても完璧とは言い切れないところがあった。
例えば歴史科目や理科系科目の暗記では、ほとんど正しく覚えられていたつもりがいくつかは記憶漏れや順序通りでないことがあった。
細かいところを聞かれれば困るという状況に過ぎないので大枠はできていたから細かいところは可能性があるかもしれないという意識の片隅にとどめておいた。
千春の場合はやはり数学があまり得意と言えないようだった。
公式は覚えていてもそれをどう使っていけばいいのか、ということが千春の課題だ。
解決するためには多くの問題を解かせてパターンを覚えるしかないと考え俺は、いくつかの問題を作りそれを制限時間以内に解かせていた。
解けなかったときは解説をして、できる限り多く問題と触れ合う時間を作った。
午後も同様に試験対策をしようとしていたところ俺たちの端末に連絡が入った。
どうやら休みなのに申し訳ないが正悟の勉強を見るのを手伝ってもらえないかということだった。
また、俺には瑞希からも連絡が来ており、彼女は学園側も男子から言い寄られていたことを配慮してくれていたのか女子と組むことができていて他の人たちよりは時間もあり有利なところがあった。
しかし、どうやら2人とも偶然なのか苦手なところが同じだったということが昨日判明したようでどうしようかとなり、2人で共通しているところはどちらかができる人を頼って分担するということにしたらしく、俺に白羽の矢がったようだった。
「ふむ…、どうしたものか。」
「どうしたのかしら?」
「いや、2人同時にみてもいいのかと思ってな。」
「2人?他にも誰か協力を頼んできたのかしら?」
「ああ。」
俺は瑞希の状況を簡単に説明した。
そして、正悟たちの家にいきなり連れていくのはどうかと思っていたことを伝えた。
「そういうことね。彼女なら問題ないとは思うけれど、一緒に勉強をするのならこちらの家の方がいいんじゃないかしら?相棒の人も?」
「いいのか?」
「頼りにされているなら力になってあげていいと思うわ。それに今の私たちの味方になり得る人材でもある。だったらここで恩をうっておくのもいいと思ったのよ。」
「なるほど、こちらにも利になる可能性があるということか。」
「そういうことよ。舞依にも連絡してみるわ。」
俺たちは双方と連絡を取り、午後と翌日を使って苦手なところを対策しようということになった。
また、誰がペアになったか明かしていなかった瑞希だったが、皐月がペアだったと後から教えてくれて一緒に来ると言っていた。
少しすると、適当に荷物を持った正悟と舞依がやってきて、勉強を先に始めていた。
「じゃあ、そろそろ迎えに行ってくる。」
「わかったわ。今は手を離せないからここで申し訳ないけれど、行ってらっしゃい。」
「行ってくる。」
リビングで俺は舞依を、千春は正悟の勉強を見ていたところ、俺の端末に噴水広場まで来たと連絡があったのでそこまで迎えに行くことになった。
俺が噴水広場に行くと2人が近くのベンチに座って談笑していた。
「待たせたな。」
「ううん、大丈夫だよ、久しぶり!わざわざありがとう!」
「ありがとう、そしてごめんなさいね。君たちも試験勉強をしているというのにこんなことを頼んで。」
「大丈夫だからこうして頼みを引き受けているんだ。それに先ほど説明したように今は家で正悟の勉強も見ているんだ。2人増えたところでそこまで変わらない。正悟ほどひどいとは思わないからな。」
俺は苦笑交じりにそう言うと、2人はそこまで彼はひどいのかと思ったようだが、俺が先に行こうとすると慌てて彼女たちはついてきた。
ここで話していてもいいが、男1人に対して女子2人、しかもここで待ち合わせをしていて変な誤解も生まれそうだったからだ。
しかも俺は噂されたこともあり顔も知られている。
ここで変な噂を追加されてしまったり、家がバレても面倒だったので早くに移動することにした。
俺と皐月は会うのは本当に久しぶりだったので道中は話題が尽きなかった。
話題は俺と皐月の共通の友人ということで瑞希の話だったり、俺の噂や、皐月の近況も少し聞くことができたが、家に着くまでという時間では足りないとしか言えなかった。
「ここが俺たちの家だ。」
「へえ〜、ここなんだ。」
「このようなところなのですね。」
2人は寮暮らしをしており、また、相棒を組む相手も決まっていないということもありこの辺りを見に来たことはなかったようだ。
瑞希の相棒事情はあとで話してくれるというので今回は深く聞き出すことはしなかった。
男女の間柄について他人が根掘り葉掘り聞こうとしてはいけないと思ったので聞いていなかったが、関与した女子である瑞希の現状は気になっていたので話してくれるというのは俺としてもありがたかった。
「とりあえずあがってくれ。」
「はーい。」
俺は玄関を開けて中に入り、リビングに2人を案内した。
「ただいま。」
「おじゃまします、久しぶり〜!」
「失礼します、お久しぶりですね。」
「いらっしゃい、このような状況で申し訳ないわね。」
「…いらっしゃい?」
「…よう…、久しぶり。なぁ、他の人も来たことだし休憩してもいいか?」
正悟は来てからずっと勉強をさせられていたこともあり集中力がきれかかっていた。
また、ここの所勉強ばかりさせられていたこともあり、ストレスも溜まっていそうだった。
「わかった。少しだけだ。俺の部屋で休んでいるといい。こっちで2人も交えて勉強をする。」
「休むと俺は追い出されるのか!?」
「当然でしょう?彼女は勉強をしに来ているのだから、ここでは勉強をするわ。やらない人はここにいる権利がないと考えてもいいでしょう?」
「…まぁいいや。30分ぐらい仮眠させてくれ。それぐらいしたら戻ってくる。戻ってこなかったら起こしてくれ。」
「わかった。ゆっくり休んで来い。」
正悟を俺の部屋に置いていくとリビングでは勉強道具を彼女たちは広げていた。
皐月は千春が、舞依と瑞希は俺が見る形で勉強を再開した。
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