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私、酸素拾います!  作者: メケ
サイモンの章・その4
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第八話 山田

 薬品製造部は地下四階の市民層にあったはずだ。

 市民層は今の階から一つ下になる。

 エレベーターを使った場合、電力が途絶えると致命的な結末を迎えるだろう。

 俺たちは階段を使用する事を選択した。


 階段は各ブロックに繋がっているが、火災で全滅しないための分厚い扉で隔てられている。

 俺たちのシェルターにもこの階段はあるが、白人が立っていてしっかり警備をしている。

 分厚い扉が最初の目的地だ。


 先頭は俺とジェシカ、真ん中にルルルカ、後方をラッシュフォード博士に任せて進み始めた。


 薄暗い廊下を道なりに進み、天井の標識を確認しながら地下三階を進んだ。

 標識と現在の位置を勘案すると、幸い階段の位置は変わらないようだ。安心して進める。

 俺たちはタコにもゴリラにも会う事なく分厚い扉の前に来た。


「みんな、問題は無いな?」

 分厚く重い扉を開けて中に入ると一度に人が六人ほど通れそうな大きな階段を見つけた。

 俺たちは階段を使って階下に降りると、地下四階にたどり着いた。


 分厚い扉を開き、中の様子をうかがうと、上の階とは違って、普通に照明が付いていた。

「なんだここは?」

「人が居るかもしれませんね」

 明らかに雰囲気が違うので、俺たちは歩くスピードを遅くしながら進み始めた。

 もしかしたら、他のシェルターの人間が既に来ているかもしれない。

 奥へ奥へ、更に奥へ。

 俺たちは薬品製造部に向かって歩き続けた。


 目の前に薬品製造部と書かれた看板が見えた思ったら、目の前に突如人影が現れた。

「!」

 それはサバイバルウェアを着た人間だった。

 向こうも驚いたのか、こちらに銃を向けてきた。


「おいやめろ、撃つな。戦いに来たんじゃない」

 俺は両手を広げて、戦闘の意思はない事を告げた。

 ジェシカとラッシュフォード博士にも目を配り、銃を下ろさせた。


 向こうは銃を下ろして、手信号で、通信機の回線を合わせろと指示してきた。

「こちらサイモン、驚かせてすまなかった。通じてるか?」

「こちら山田、問題ない。生存者か?」

 山田と名乗る男は、ヘルメットの奥で表情を硬くしている。


「いや、俺は他のシェルターから来た」

 俺はそのように答えた。

 嘘を言ったら撃たれる可能性もある。下手な刺激はしない方が良い。


「奇遇だな。俺も他のシェルターから来たんだ」

 山田はどうやらこのシェルターに居た人間ではないそうだ。

 隊長ならどう対応するだろうか。

 俺は今までの隊長のコミュニケーションを思い出して良さそうな物を考えた。


 うむ。隊長なら何かお願いするだろう。

「俺はこんな遠くに来るのも初めてなんだ。今、大切な人のために薬を探しているんだ。一緒に探してくれないか?」

「そうだな……ついでだ。いいよ」

 山田は少し考えた後、許可してくれたようだ。


 相手と親密になるにはお願いする事が大事と隊長は言っていた。

 相手が受けてくれたのは好都合だ。

 山田とともに俺は地下四階の薬品製造場に向かって歩き出した。


「サイモン隊長、信用しても良いのですか」

 ルルルカが不安になっているようだ。

「四人じゃ厳しいかもしれない。博士の言うとおりこのシェルターに何があったのか分からない以上、人数は多い方がいいと俺は思う。他の二人はどう思う?」

「僕は問題ないと思うよ」

 ラッシュフォード博士は同意してくれた。


「分かりました。他のシェルターの人に初めて出会ったので少し驚きました」

 ラッシュフォード博士の反応を見てか、ルルルカも頷いて納得してくれたようだ。


「……」

 ジェシカが沈黙している。大丈夫か?


「俺たちはリモハノール錠を探している」

 俺は山田に必要な薬剤の情報を伝えた。


「ああ、脊椎損傷の薬か。エイリアンに体でもへし折られたのか?」

「いや、俺たちのシェルターではカースト制がある。まあ、これからは無くしていこうって話になってるが、そこはわからん。で、カースト上位は白人が占めていて、その白人どもが俺の隊長をアヌビスの尻尾で貫いてな。隊長はどうにか生き残ったけど障害が残った」

「ひでえ話だ。それにしても、そっちのお嬢さんは白人のようだがサイモンの敵か?」

 辻褄つじつまを合わせようとしているのか、それとも会話を楽しみたいのか、山田は話を深掘りしようとしてきた。


「いや、ジェシカは仲間だ。詮索するのも良いが、あまりジェシカを怒らせるなよ。白人が仕切る司令部に手榴弾を持って、爆破するくらい凶暴だからな」

「さ、サイモンさん。それは言わないでくださいよ。私だって手酷く徹底的に虐められてたんです。二度とやりませんよ。あの時、私は精神的にどうにかしてました」

「そうだな。今では落ち着いて毎日が楽しそうだ」

 俺の言葉を聞いても、ジェシカはヘルメットの奥で頬を膨らませている。

 俺たちの会話を聞いてか、山田はケラケラと笑っていた。


「仲が良いんだな」

 山田は目を細めて、俺たちを見ている。


「サイモン、そっちの白人のおじさんはどうなんだ?」

「ラッシュフォード博士か。博士は人間なんて切り開けばみんな同じって言ってる。まあ確かに白人とか有色人種とか関係なく内臓の数は同じだからな。間違った事は言ってない」

「サイモンの白人仲間って変わった奴らしかいないな」

「裏を返せば変わった奴じゃ無いと有色人種が好きとは言わないんだよ」

「ははははは。言うねえサイモン」

 俺のジョークに山田は笑っている。上手く仲良くなれただろうか。

 仲良しついでに一つ確認しておく事がある。


「薬の他に探しているものがある。小さな女の子を見なかったか」

「小さな女の子? どんな感じだ」

「髪は黒でボサボサ。年齢は十歳前後でサバイバルウェアを着ている黄色人種の子だ」

「見てないな。そんな小さな子供にサバイバルウェアを着せるほどサイモンのシェルターは逼迫ひっぱくしてるのか?」

「いや、脊椎損傷になった隊長の事が好きな子なんだ。指示に従わずに暴走して一人でこのシェルターにたどり着いたんだ。通信機でゴリラとタコの怪物が暴れてるって報告してくれたが、山田たちは何か見たか?」

「怖い事を言うんじゃ無い。何も見てないぞ。ひとまず俺の仲間のところに来てくれ」


 俺たちは話をしながら薬品製造部に到着した。

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