プロローグ
大陸の覇者ランディア王国には、一人の見放された姫が存在する。
彼女の名はベルタ=ランディア。妾の子ベルタ。
誰からも愛されず誰からも見向きもされない孤独な少女。
血を彷彿させる不吉な真っ赤な瞳と髪。
不吉を具現化がしたかのような存在。
王の戯れによって生まれてしまった望まれない命。
母は死に誰も味方はいない。
誰にも望まれざず、誰からも見向きもされず、誰にも愛されないいらない子ベルタ。
親からは見捨てられ、異母兄妹からは罵られて、侍従には蔑まされて、民にはその存在すら認知すらされない。
だけどどんなに辛くてもベルタは死なない。死ねない。
死ぬことを許されてない。
聖宮に縛られた初代国王の血は、数百年以上が経過した今もまだ解き放たれない。
これは呪い。
ただし、ベルタだけではない。
王族の血を持つ者全てにかかる呪い。
取り上げられた死と生。
そして次に取り上げられるのは心。
次代国王の継承戦争は既に秒読みにかかっている。
この戦争の勝者には王座と願望の成就が確約されている。
それを可能とする力が聖宮には宿っている。
だから彼女は聖宮にひそかに祈りをささげた。
願望成就への意気込みではなく、ただの祈り。
勝てるはずはなくとも想うことだけは許してほしい。
――――一人でいい。どうせ死ぬ命でも、わたしを見てくれる誰かが欲しい。
現国王の最後の娘ベルタが聖宮の扉を開き、彼女の参入を最後に、王国第十八代国王選出の継承戦争という名の儀式が始まった。
独りぼっちのベルタは祈る――――。




