第三十六話
---ヒタ---
クリアを解き僕たちは段々と姿を現す
「貴様らは誰だ!?兵士はどうした!?............使えない兵士どもめ」
いま目の前に僕たちの国を滅ぼした国の王がいる
そう考えると怒りがこみ上げてくる
「僕たちが誰だか分からないみたいだね........教えてあげるよ、、僕はアスルの王女だよ」
「アスル?あぁ、我らに逆らった愚かな国の事か.........」
その言葉を聞き叫びそうになるが、ある叫び声によって未然に終わる
「愚かですって?愚かなのはどっちなの?力に溺れて平気で人を殺す様なあなた達の方が!!」
リアが叫ぶ
『まぁ、落ち着けってリア...........まぁ、本題に入ろう。ヒタ、リア、お前らはこいつに何を望んでいるんだ?』
くろが聞いてくる
僕はこの人に何を望んでいるんだろう?
罪を償うこと?
どうやって?命をかけて?
その事をお父様達は望んでいるのだろうか?
いや、望んでいない筈........
ならどうしよう.........
『まぁ、いきなり聞かれても困るだろうしな、少し考えてろよ。その間に俺はこいつと少し話してるから』
くろが僕たちに言って王様の方を向く
『何でアスルを滅ぼした?』
くろが口を開く
「そんなのは決まってるだろう、我が国に逆らったからだ。」
『ふざけんな!!』
「ぐふっ」
くろが王様の腹を蹴る
その行動に僕やウィンは驚きを隠せなかった
くろは今まで誰かに暴力を振ったりなんてしなかったので驚いた
きっとそれだけ怒っているのだろう
『逆らったから滅ぼしただと?お前何様のつもりだ?』
くろが王様の胸ぐらを掴み言葉を続ける
『さっきからずっと気に入らねぇな。いっそのこと今ここで殺してやろうか?』
くろが殺気を込めて言うと王は「ひぃっ」と情けない声を出したあと黙り込んでしまった
『まぁ、次の質問だ。何故リアの家族を殺した?国民じゃ無いのか?』
さっきのくろの殺すと言う脅しが効いたのかずっと黙っている王様
「私が説明するわ」
そんな中でリアが口を開く
「私の母はこの国がアスルを滅ぼした時に起きたクーデターの主犯格よ。私が小さい時から自分の正しいと思った道は真っ直ぐ進んでいく人だったの。それで、その時もクーデターなんて起こして........」
リアの眼に涙が溜まっていくのがわかる
「結局、そのクーデターに参加した国民はほとんどが殺されたわ。もちろん、母も。そして私の妹は殺され、大事な人を二人も失った私は殺されずに地下牢に閉じ込められていたの」
ついにリアの目から涙が流れる
『そうか.........悪いなリア。嫌な事話させちゃったな........』
「べつにいいわ」
涙を拭いながら小さな声で言うリア
『悪いがもう我慢は無理だ。ウィン、ヒタ、リア、ちょっと待っててくれ、腐りきったこいつの精神を叩き直してやる』
くろがよくわからない物を取り出しながら言う
『お前は本当にクズだな。とりあえず、ヒタやリアが味わった苦しみの分としてジワジワと死に近づいていってもらおうか』《パン!!》
乾いた音が鳴ったかと思うと王様の右足から血が出ている
「ぐあぁぁ」
痛みに顔を歪める王様
『まだ全然足りないぜ』《パン!!》
今度は左足から
『まだまだだな』《パン!!パン!!》
今度は両腕だ
四肢が使えなくなって、完全に身動きの取れなくなった王
『どうだ?痛いか?辛いか?なら安心しろ、もう楽にしてやる』
くろが王の頭によくわからない何かを向ける
くろの持っている物がなんなのかはよくわからない、でもこのままじゃくろがあの王様と同じ人殺しになってしまうと言うことだけは不思議と良く分かった
「ゆ、許してくれ。なんでもするから、頼む。許して《パン!!》」
勝手に身体が動いていた
こうしなければくろがこの人と同じになってしまう
『何やってんだよ!?ヒタ!!』
くろが驚いた様に叫ぶ
「くろ.......もういいから.......これ以上やめて.......」
物凄い痛みの走る肩を抑えながらくろに言う
『何でこんなこと........』
「これ以上やったら、この人が死んじゃう。もしくろがこの人を殺したら、くろもこの人と一緒になっちゃう。そんなの絶対いやだよ........」
気付いたら涙が出ていた
『ヒタ.........ごめんな。ありがとう』
くろが頭を撫でてくれる
『んで、リアはどうする?』
くろがリアに聞く
「ヒタの言うとおり、もう十分よ.......」
『そうか.........良かったな、お前。みんな優しくて........』
くろが王様と僕の怪我を治しながら言う
『じゃぁ、行こうか。もう此処には用は無いだろ?』
その言葉に頷く
『じゃぁ、行こうか。瞬間移動』
くろが呟くと、国の近くの森の中にいた
僕は急に景色が変わった事と不思議とすっきりとしていた自分の気持ちに驚いた
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