地獄での出来事 蛇足5 『閻魔の代理執行人』 (本編8話付近)
(本編からカットした地獄での出来事集を追加の蛇足として公開いたします。)
そしてアニオタ神はこう答えた…。
「……そこでじゃ千造よ……ワシも色々と駆けずり回ってのぉ……。そして遂にワシらにとって大きな後ろ盾を得る事に成功したのじゃ!」
その時、突如この部屋の壁が空間ごと歪み、一人の人物が現れた!
「アニオタ神よ、アンタの結界もまだまだね!」
ヒッ! ヒョエーーーっ!!!
え、閻魔女王様っ!!!
そうなのだ。アニオタ神の作った結界を安安と突き破り、閻魔女王様が入ってきたのである!
お、終ワタ!
ぜ、絶対ヤバイ……
地獄の中に張られた結界の中でアニオタ神様と密会してたなんて……怪しすぎる——。
しかし、アニオタ神様は怯えもせず閻魔女王様に呼びかけた。
「——おぉ、グランちゃん!」
え? ア、アニオタ神様……?
って、なんですか、閻魔女王様に向かって『グランちゃん』って!?
「コラッ、アニオタ神よ! 慣れ慣れしく本名で、それも下の名前で呼ぶのはよせと前にも言ったであろうが!」
ありゃ? 閻魔女王様の顔が少し赤くなったような……。
アニオタ神は動じずニコニコしながら答える。
「おぉ、おぉ、すみませんのぉ……つい」
——し、知り合いだったのか。
「まぁよい」
閻魔女王様は呆れたようにそう言うとスグにこちらへ向き直った。
あゎゎ……、や、やはり神々しくて眩しい……!
俺は一歩後ずさった。
彼女は少し口元を緩ませた後、迫力ある口調で宣言した。
「千造、我がオマエたちの後ろ盾だ!」
え?
——動揺し、その言葉の意味をすぐには理解できない。
「……そ、それは……」
閻魔女王様は少し苦笑しながら呟く。
「我ものぉ、ついこのアニオタ翁に上手く乗せられたのだ……」
アニオタ神は満面の笑みを浮かべている。
閻魔女王様は「フン」と鼻を鳴らし、また威勢よく話し始めた。
「フハハハハー! まぁ冗談はさておき、予知夢の神の言うことは我も無視できぬのでな。こうなったという訳だ千造よ! オマエたちの計画を影から……ただし全力で支えてやる! ついでに実戦指導もな……」
ここでようやく頭が追いついてきた。
この状況のあらましを理解し始め、そして破格の後ろ盾を得た喜びと感謝の念が一気に湧き出てくる。
「ハ、ハハァァーーーっ!!」
そう言いながら地面に平伏す。
閻魔女王様が少し姿勢を改める。
「千造、オマエに使命を与える! 現世の人々が地獄に対して畏怖の念を抱くよう活動し、結果的に人類を滅亡から救うのだ!」
「ハ、ハハァーーーっ!! あ、有難う御座います! その使命、謹んで承ります!!」
閻魔女王様は少し満足げに頷くと、次のステップへ話を進めた。
「その為に、当然だがまず霊として現世に戻る事を許す!」
「………………、ハ、ハハァーーーッ!!! あ、有難う御座いますっ!!」
——閻魔女王様公認で現世に戻れる!
「次は特殊能力の付与だ……。千造、オマエには狐神族のように他人に取り憑く能力を授ける! それにより、取り憑いた相手を操ることができ、記憶の閲覧も可能になる」
「……ハッ……、ハハァーーーっ!!」
えっ? ……と……特殊能力……。
「そしてココからが最も重要なのだが……。オマエえには罪の記録の閲覧能力と裁定官代理の権限を授けよう!」
閻魔女王様が俺の頭に手をかざす。
すると光の粒が彼女の手から溢れだし、頭から身体の中へと入って来た。
その感覚を具体的に説明するのは難しいのだが……それは妙に心地よく、心が冴え渡り、強いパワーが全身に漲るような感覚だ。
な、何がなんだか完全に理解した訳ではないのだが、とにかく凄いものを授かった事を実感し感動が押し寄せてきた。
「……よし! これで全ての能力付与は終わった。但し、各能力を使いこなすには訓練が必須だ!」
「ハッ、ハハァーーーっ!!」
「とにかく、これでオマエは閻魔法廷を現世において開くことが可能になる! つまりオマエは我の代理執行人だ! 地獄史上、初だぞ! ハッハッハッハッハー!」
ええっ!?
な、なんだって〜? 閻魔法廷!? 代理執行人!?
「そ、それは……どのような……」
「人類を滅びに導く元凶、すなわち地獄を畏怖せず自ら犯した重罪を隠し通しておる者ども、罪が暴露されても刑罰を免れている者ども、そして多くの被害者を産んでいる悪人どもを見つけ、それらの罪を暴け! 今回与えた特殊能力を使ってな。そしてその者どもを生前のうちに閻魔法廷にかけ、その場で刑罰を与え、さらに被害者の救済も同時に行うのだ!」
「……ハ、ハイッ……! ……す、凄い……。……それをこの私が……」
正直まだ良く分かってない……! でもとにかく……唯々……超凄いって事だけは分かる!
「要は死んでから地獄で罪を償わせるのではなく、生きてるうちに罪を暴き地獄を味合わせると言う事だ! 自業自得を現世で実現させる! それがコンセプトだ!」
「——な、なるほどで御座いますね……。承知致しました!」
し、しかし…………待てよ……。
地獄史上初って事は、俺が最初の現世スタッフということな訳で…………。
責任重大じゃないか!!
……いや、悪人を探すってのはなんとなく自分でも出来そうな気がする。
それに今回頂いた取り憑きや記憶閲覧、そして罪の記録閲覧能力を使えば悪事などイッパツで暴けそうだ。
でも……裁判って…………。
罪を公平に裁いたり刑罰を確定するなんて今の自分には無理では……?
しかも該当する罪人は既に複数いそうなのに、実際の現場にはまだ俺だけしかいないって……。
か、かなりの人手不足では……?
閻魔女王様はそんな不安を全て承知のように話を続けた。
「案ずるな千造よ! 現世での裁判実施については我に考えがある。また、オマエの為に既に仲間も揃えている。さらに人手不足に対しても秘策がある!」
「ハ……ハイッ……!」
「それになぁ千造……これは我にとっても初めての試みなのだ。オマエもトライアル&エラーの精神で行け!」
「……ハッ……、ハハァーーーッ! ……あ、ありがとうございます!」
…………確かに今から色々案じてもしょうがない。
どうせ今の俺には全ては理解できない……。
……だから…………と、とりあえずやってみよう!
先が見えない時や困難に陥った時はまずは目の前の事に集中し一つ一つ片付けて行けば案外なんとかなるもんだ……新人の頃に先輩からそう教わって以来、その方法でなんとかここまで生きて来た。
……今回もやるしかない!
「では、明日の夜から地獄内の別の施設にて実戦用の訓練を開始する! 任務遂行に必要なその他の能力もそこで取得せよ!」
「ハ、ハハッ!」
「昼間は引き続きIT部を手伝い、夜は訓練となる。遊んでいる暇はないぞ千造!」
「ハ、ハイッ!」
「励めよ!」
そう言うと閻魔女王様は全てを話し切ったとばかりに踵を返し、壁の向こうへと去っていく。
俺は消えゆく彼女の背中に向かって誓った。
「ハ、ハハァーーーっ!!! 一生懸命! 一生懸命励みます!!」
そしてアニオタ神のほうは相変わらず満面の笑みを浮かべながら「そういう事じゃから宜しくのぉ!」と言って去っていった。
こうして次の日の夜から、授かった能力の実戦用の訓練が開始される事となったのだ。
(地獄での出来事集 蛇足6 『地獄の特訓』へ つづく)




