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蛇足3 本当のプロローグ (本編第1話より前のエピソード)

(本編プロローグ第1話より前に起こっていた出来事)


 人の世では様々な理不尽が存在する。


 身近な人間関係の中で起こるモノもあれば、国や世界的規模で発生し多くの被害者を出すようなモノもあり、その規模も醜悪さも残虐性も多種多様だ。


 長年この仕事をしてきて、それを嫌というほど目の当たりにしてきた。


 直接的な被害者が、生ある内には救済されず無念の内に亡くなった、などという事例は太古の時代から無数に存在する。

 また、加害者が結局なんの裁きも受けずにのうのうと暮らした、といった顛末も呆れるほど見てきた。

 あるいは、罪の一端がバレたにも(かか)わらず、あらゆる手を講じて裁きや法をすり抜け、結局妥当な罰を受けずに一生を終えた人々も腐るほどいる。


 己の罪を償わずのうのうと生き延び天寿を全うする輩共(やからども)


 部下からの報告によれば、年々そういった理不尽な事例が増加しており、近年はその勢いに拍車が掛かっているらしい。

 いや、天寿どころか他人の健康な臓器を奪い、他人の寿命を削って己の寿命を延ばす外道まで現れる始末だ。


「フゥ〜〜〜……」


 これまで我らは100パーセントの確率でそういう罪人を見つけ、裁き、正当な罰を与えてきた。

 我らの仕事に取り零(とりこぼ)しは無い。

 責任は完全に果たしている。


 冥府において。


 そう、ここは閻魔庁。

 死後の人間の魂を丸裸にし、生前の嘘と罪を暴き、相応の地獄へ送りだす場所。

 そして地獄では汚れた魂に罰を与え、罪を償わせ、浄化させる。


 それが我らの仕事と責任。


 永遠に続く魂のサイクルを滞りなく進める事もその役目のひとつである。

 いや、リサイクルと言うべきか……。


 しかし、この先もずっとこのままで良いのだろうか?

 我らは我らの仕事と責任を完璧に果たし続けているにもかかわらず、人間社会の規律は乱れていく一方に思える。


 人間の世は大丈夫であろうか?

 人類は今後も存続していけるのであろうか?


 ちょうどそんな事を考え始めた頃だった。

 旧知の神の一人が我を訪ねて来たのは……。


 久々に会った彼奴(あやつ)は唐突に縁起でもないことを口走った。

 衝撃すぎて一瞬身体に電流が走り、そのまま暫く硬直してしまい動けなかった。


 我……閻魔女王ともあろう者が!


 しかし、それが全ての始まりだったのだ。

 信用に足る人物がもたらした更なる現実的未来予想は、我の不安と心配を確信に変えてしまった。


 人類が滅亡する……


 普段、何事にも動じない我であったが、流石にこれは尋常ならざる事態だと悟り寒気がした。


 自業自得だ……


 ……と、突き放す気持ちが無いわけではない。

 しかし、結局我は人類を助ける道を選んだ。

 彼奴がもたらした一部の光明に賭けてみる気になった。

 実際それはバクチでもなんでもなく、非常に信頼できるスジの話でもあったからだ。


 まぁ彼奴に(そそのか)された面も少しはあるのかもしれないが……。


 ただ、確かに……、確かにアレが無くなるのも痛い……。

 彼奴以外には決して口外できぬ秘密なのだがな……。


「フフッ……」


 一度方向性を決めたら我にもう迷いはない。

 今ある情報を元に素早く計画を立て、動くだけだ——。


「死神ニーナを呼べ!」



——————

(蛇足3 『本当のプロローグ』 おわり)

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