仕方無いから勉強頑張ってます
さて、今日の夜食はちょっと遠いが、ミチコの実家でのり弁を買ってきた。
ミチコの母ちゃんが作ってくれた。
値段の割に豪快にご飯が盛られており、お得感抜群だ。
「ととてもおい、美味しそうですね。」
「ええ。のり弁にハズレ無しね。しかも350円でこのボリューム。500円でも安いと思うわ。」
「その揚げ物も巨大ですね。」
「だからソースが2コ付いてるの。しかも、最近は鰹節をケチってる店も多いのにちゃんと敷かれてるの。何でこの良心的な親からミチコが育っちゃったのかなあ。」
「ここ今度、私も食べてみます。」
ここでコールされる。
「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」
「私、王道過ぎる恋愛ファンタジー世界で第三王子をやってます。ジェローム・フェレンツと言います。」
「ジェローム殿下ですね。ご用件をお伺いします。」
「もう、将来が見えてしまって、つまらないんです。」
「王道恋愛ファンタジー世界なら、最初から見えているのでは無いのですか?」
「聞いて下さい。私の世界って、とても人気があるみたいで、大体20年おきに似たようなストーリーが繰り返されているんです。歴代の王もその結果成立したカップルなんです。」
「では、皆さん慣れっこですね。」
「はい。どの世代も性別問わず、王族の恋の行方にはとても寛容です。」
「じゃあ、それに乗ってしまえばいいではありませんか。」
「ところが、私の世代では兄が主役でした。」
「殿下は出来ないんですか?」
「王位継承権第四位じゃ盛り上がりませんからね。欲を出せば権力闘争まっしぐらですし。」
「お相手の女性はおられるのですか。」
「はい。侯爵家のご令嬢と婚約していますが、ただ今隣国に留学中です。」
「それは、悪役ざまぁ回避のためでしょうか。」
「いいえ。私を主役にしたストーリーなど起きないと思われていますから、彼女もやる気ゼロです。婚約破棄ならいつでもどうぞって言われたことありますし。」
「なりほど。狭間の世代特有の倦怠感が蔓延しているのですね。」
「はい。主役は2学年上で、私たちは昨年、そのドラマチックな恋物語と断罪劇を見てしまった訳ですからね。」
「では、ご学友はそれを見て盛り上がったと。」
「はい。その時はとても盛り上がってました。女性なんかキャーキャー言ってましたから。でも、今は祭りの終わり状態です。」
「次は20年後ですものね。」
「第三王子と同い年なんて、ハズレだって陰口叩かれてます。」
「不敬罪ですね。」
「でも、第三ですからね。側近もヒロインもいません。」
「彼女もいない。」
「王族なのにです。だから、ただひたすら勉強するだけの日々ですよ。」
「そこで高めた実力は無駄にはならないと思いますが。」
「でも、就職先は兄の補佐です。例え能力で勝っていたとしても、一生宮仕えです。」
「まあ、めでたしめでたしは覆らないですね。」
「ハズレ王子の彼女も素っ気ないですし、何も楽しみがありません。」
「では、婚約破棄劇を起こしてみればいいじゃないですか。」
「ところが、兄は許されるのに、他のモブ王子が同じ事すると袋叩きに遭うんです。」
「ロマンス以外は不倫なんですね。」
「はい。多分、それやったら生涯独身ですね。私と結婚したい令嬢なんていませんから。」
「そんなになんですか?」
「まあ、贅沢したい人なんかは手を上げるかも知れませんが、良いご令嬢はすでに行き先が決まってます。」
「王子の婚約者はどのような基準で?」
「年齢と家柄ですね。第二王子の婚約者より微妙に劣る他派閥のご令嬢、ということで慎重に決定された絶妙なハズレです。」
「でも、主役の弟さんなんですから、ルックスはいいんですよね。」
「二人の兄と違い、ブロンドではないですけどね。あと、体の三分の二は足です。」
「ああ、昔の男性主要キャラはそうでしたね。」
「あれ、結構躓くんですよ。まあ、私が躓いたのは足が原因では無いですけどね。あと、ヒロイン限定で、微笑むと背後にバラが咲きます。」
「ベタな演出ですね。目もウルウルキラキラでしょうね。」
「はい。照度5割増しです。」
「でも、そもそもどうして主役の弟をチョイスされたんですか?」
「確かこの小説、どの登場人物もあまり酷い扱いにはならなかったなと思い、お気楽な人生を送るなら弟王子だと考えたんです。」
「そしたら、そういう風潮だったと。」
「まさか、王から庶民までこんな風潮に染まってたなんて・・・」
「長くやってますからね。」
「確かに安心のヒロイン成り上がりストーリーですけど、こんなの何回も繰り返して、みんあよく飽きないものだなあと思います。」
「何百年も擦られ続けてもなお、多くの人を魅了し、ヒロイン希望者が殺到する物語ってあるんですよ。」
「その大きな渦から弾き飛ばされたのが私です。」
「渦に巻き込まれなかったと思えばいいのでは?」
「今さらですが、羨ましいです。」
「だからといって、婚約者を蔑ろにしたらざまぁ一直線ですからね。」
「はい。気を付けます。」
「人生は人それぞれです。殿下にも幸せになる道はありますよ。」
「ありがとうございます。では、失礼します。」
こうして電話は終わった。
「どうやら、権力闘争は起きなさそうですね。」
「はい。国民人気が高いヒロインを射止めた第二王子が圧倒的に有利ですからね。」
「そうですね。愚痴は言っておられましたが、それでもかなり恵まれた立ち位置ですものね。」
「きっと、分かる日が来ると思います。」




