トップは難しい
「そう言えば、ミチコって今、どうなってます。」
「相変わらずね。マッドな組織のリーダーよ。」
「よく似合ってますけど、天使にあるまじき姿なんでしょうね。」
ここでコールが鳴る。今日は忙しい。
「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」
「我は闇の帝王、ドグマ・ガザンガルである。」
「ドグマ様、いかにも悪って感じの名前ですね。」
「そうだ。我は世界征服を企む悪の秘密結社の総帥だ。」
「その総帥が電話してくるということは、上手くいっていないのですね。」
「そのとおりだ。逃亡戦隊バックレンジャーに邪魔されておる。」
「その程度の相手に苦戦するようでは、世界征服なんて無理ですよ。」
「どうすればいい。」
「まずは日本とメキシコ以外に支部を作って下さい。」
「いや、ジャマイカ支部だ。」
「どうしてそんな所に作るんですか?」
「まだ予算も人員も足りぬ。だから、警察力の弱い所から取り組んでいる。」
「世界征服を目指してるんですから、警察ではなく、軍隊を相手にすべきでは?」
「いや、まずは出来るところからだろう。」
「日本の警察は優秀ですよ。」
「だが、滅多に発砲しないから安全性は高い。」
「そこで脱走兵戦隊ですね。」
「逃亡戦隊である。」
「それで、どのような戦力で臨んでいるのですか?」
「改造人間を送り込んでおる。カタツムリロンとか、コウモリロンとかだ。」
「何でもロンを付ければいいというものではありませんよ。普通、コウモリ男じゃないでしょうか。」
「いや、最近は男とか女とか付けたら敏感な層が反応するのだ。以前、ドラキュラ女を出したら炎上した。」
それはドラキュラが女だったからでは?
「それに、カタツムリロンって何ですか。どうしてわざわざカタツムリの能力で戦おうなんて考えたんですか。」
「殻があるからな。それに、衝撃吸収ボディは利用価値が高い。」
「塩かけたら負けますよね。」
「あれは、ナメクジでは?」
まず、そこを改造しろよ・・・
「わざわざ人型にする意味も分かりません。」
「まんまカタツムリではパンチもキックも繰り出せぬ。華が無いではないか。」
「それにいつも一体だけですよね。一度に百体くらい出せば勝てるのに。」
「予算の都合だ。それに、名前を覚えきれないだろう。」
「全部、○○ロンなんでしょう?」
「いや、シロクマとパンダとか、遠くからでは違いが分からんだろう。」
「世界征服したいんですよね?」
「上手く行かずに困っておる。こないだの株主総会でも紛糾した。」
「株式会社なんですか?」
「クラファンもやっておるぞ?」
「そこは麻薬取引とか違法なことして罪なき人から金をくすねるとこでしょう。」
「罪なき人間などおらぬぞ。」
この人、何を言ってるんだろう・・・
「とにかく、今のままでは無理です。まずはちゃんとした参謀を雇うところからですね。」
「そうだ。ヤツが悪い。」
いや、アンタもだよ。
「それと、逃亡戦隊って、元はそちらで製造したんですよね。」
「ああ、裏切り者たちだ。」
だから逃亡なのか・・・
「でも不思議ですよね。自分たちで作ったものを超えられないなんて。」
「ああ、ヤツらは脳を改造する前に逃げ出してしまったからな。」
「ということは、脳を弄ったら弱体化するってことじゃないですか。」
「そうは言うが、脳を改造しないとカタツムリなんて耐えられんだろう。」
「もっとカッコイイものにしてあげて下さい。」
「いや、結構イケてたぞ。」
「それと名前もです。そう言えば、バックレンジャーにはロンが付いてないんですね。」
「あれはヤツらが勝手に名乗っているだけだ。名前を付ける前に逃亡したからな。ちなみに、我の案ではレッド男、ブルー男とかにする予定であった。」
炎上してしまえ!
「それにしても、最初は5体同時に出す予定だったのですね。」
「それが皆逃げ出して以降、慢性的な予算不足だ。」
「確かに、開発費ごと無駄になった訳ですからね。」
「だからといって、戦力の逐次投入は下策です。」
「だがなあ、目に見える活動性かが無いと、株主が・・・」
「全戦全敗よりはマシでしょう。」
「いや、最初は子供の誘拐に成功したり、事件を起こせているから、勝敗は五分と言える。」
「上手く行かないのは、そういう反省の無いところだと思いますよ?それに何ですか、子供の誘拐って。みみっちとは思わないんですか?」
「いやあ、子供向けだし・・・」
「もっと真面目にやって下さい。それと、ロン禁止です。」
「分かった。」
「それと、強い生き物と掛け合わせる。いいですね。」
「次はイカだな・・・」
「そして、最低でも敵の倍以上は同時に出撃させて下さい。それと、勝てもしない戦闘員はリストラして、人件費を節約して下さい。」
「クビ切るの、結構精神に来るのだぞ?」
「世界征服するんですよね。」
「分かった。少しの犠牲には目を瞑ろう。」
「では、世界征服できる日を楽しみにしてます。」
「助言、感謝する。ではさらばだ。」
こうして電話は終わった。
「できますかね。」
「あまりトップに向いていないタイプの方でしたね。」
「悪の組織を名乗りたいなら、ミチコみたいじゃないと。」
「ミチコさんは天使なのですが。」
「今や、ミチコロンですよね。」
「まだ、転んではいないと信じておりますわ。」
まあ、転んだ道の方が大ダメージ喰らってそうだけど。
さあて、自動販売機自動販売機!




