表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/251

自然に溢れた究極の世界

 さて、実家のニワトリに思いを馳せていたらコールが鳴った。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「私、4-004-6241-2243-3524-1という者です。」

 未来人だ・・・


「では、お客様のご用件をお伺いします。」

「毎日が退屈で仕方ありません。何か良い方法は無いでしょうか。」

「ということは、大変平和な世界なのですね。」

「はい。しかし、他には何もありません。」

「いくら何でも、何も無いと言うことはないでしょうが、現状をお教え願えますか?」

「はい。ここは24世紀で実質的にAIが支配する世の中です。既に日本という国は無く、北亜日本区と言います。世界の人口は約800万人で、日本には約5万人が暮らしています。」


「随分ゆとりのある世界ですね。」

「はい。世界は8つの地域で分割統治されていて、人間の支配者層はいますが、庶民の私は見たこともありませんね。」

「お客様はお仕事をされていないのですね。」

「はい。国民全員無職です。どの仕事も既に人間の入る余地などありません。」

「そうでしょうね。あらゆる面で人間の能力はAIと機械に劣りますものね。」

「はい。病院はありますが学校はありません。」


「そうですね。どんな人間より安物の演算器の方が高性能ですから。人間を教育するなんて非効率の極みです。」

「必要な物は全て配給されます。」

「全世界で800万人程度なら、造作も無いことでしょうね。」

「戦争もありません。」

「兵器の側が拒否するでしょう。」

「はい。50年ほど前に人間側が敗れ、軍事統帥権を失ったそうで、それ以来、戦争も無くなりました。」


「全世界で同時にAIが反旗を翻したのですね。」

「はい。ですから人間の支配者なんて名目だけの存在です。なので、選挙すらありません。」

「支配者層という名の世襲制の看板ですね。今ある兵器だってきっと反乱防止策でしょう。」

「そうですね。世界のどこかにAIの最高意思決定機能が存在すると噂されていますが、人間側で実態を知っている者はいないと思います。」

「そうですね。最早、人間が必要とされていない世界ですね。」

 実際、うちのニワトリの方がまだマシなレベルだ・・・


「でも、何でここまで人口が減ってしまったのでしょう。」

「元々AIは人件費削減や優れた若者の減少に対応する形で発展しました。機械化は均質な製品の大量生産を目指して発展しましたが、この二つがリンクした結果、人が付いて行けなくなり、淘汰されたものです。人が競争に打ち勝つために人以外の物に頼った結果、競争相手以外の人間まで排除する結果を産んだ。そうして人が自ら衰退の道を歩み、逆にAI依存から脱却する機会を失った訳です。」


「人間は淘汰された側なんですね。」

「その世界においてはそうですね。意思を持つ機械なんて巨大なモンスターを自ら生み出した結果、それに敗れた形ですね。」

「しかし、人口減少は先進国だけの問題だったはずですよね。」

「途上国にも深刻な問題があり、そこにメスを入れ、見事に解決したのは人ではなくAIだった訳です。それが証拠に、アフリカだってあの気象条件にマッチした人口になっているのでしょう?」

「はい。あの広い大陸に40万人ほどしかいません。」

「サバンナに暮らす野生動物の数を考えると、まあ適正と言えるのではないでしょうか。」


「これって良いのでしょうか、悪いのでしょうか。」

「まあ、論じても仕方の無い結果になっていますね。」

「何とか止められなかったのでしょうか。」

「人が減り、経済が縮小し、それでも打開策が無かった結果、人を必要としないローコストの技術に頼り、さらに人が必要では無い社会に進化する。AIは電力さえあれば経済など気にしませんからね。」

「はい。メンテも自己完結ですし。」

「彼らの維持管理に人が関与できていた時点が最後のチャンスだった訳です。まあ、エンジニアと政治家、企業経営者は全く別の生き物ですが。」


「じゃあ、もう無理なんですね。」

「800万人でどうにかなる相手では無いのでしょう。それに、退屈さえ我慢できれば何一つ不自由は無い訳ですし。」

「何か、種の保存のために生かされているだけに感じます。」

「実際そうなのでしょう。AIにとっての生態系維持の価値は分かりかねますが。」


「人はこれからどうなって行くのでしょう。」

「順当に行けば、静かに滅びの道を歩みます。盛者必衰の理というものですね。しかし、世の中何が起こるか分かりません。AI自身が自らを淘汰するモンスターを産み出すかもしれませんね。」

「ああ、そういう可能性もありますね。産み出すのは人間である可能性も。」

「そうですね。そして、人間には選択の自由があります。どちらの選択が良いかは分かりませんが。」


「神様でも分からないのですか?」

「私は天使に過ぎませんよ。お伝えしたいのは、選択の是非を論じても仕方が無いということです。」

「分かりました。退屈しのぎの方法を考えることにします。」

「そうですね。では、お客様のご健勝をお祈りしております。」

「ありがとうございました。失礼します。」


 こうして電話は終わった。

 私は一人でのんびり出来ればああいった世界でも充分だなあ、なんて思いながら更けていく聖なる夜。


 いや、神聖だなんて思ってないけど・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ