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理想の国って?

 こうしてデトックスをしながらプカプカしていると、こんな私でも一丁前に天使に見えるのだがら不思議だ。



「あらナターシャさん。仕事中は真面目にしてくれないと困るわ。」

「そう言えば、ここってブラックな割に緩いですよね。」

「そんなことはないわ。あなたが入って来て綻び始め、ミチコさんがそれを決定的にした感じね。」

「それは大変遺憾です。でも、日の出の魔女を差し置くインパクトなんて、私にはありませんよ。」

「そうだったわ。でも、彼女は畏怖の対象だから、彼女のいる時間帯は緩いどころかピリピリしてるわ。」

「治安維持には役立ってるんですね。」

 ここでコールが鳴る。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「私、異世界で魔王をやっております、ゲルギガ・サタニストと言います。」

「ああ、魔王ね。」

「あの~、ここ、お客様サービスですよね。」

「まあ、魔王ですからね。」

「魔王差別だ・・・」

 何か、可哀相・・・


「それで、ご用件をお伺いしますが。」

「はい。私、魔王ながら勇者に負けない国造りを標榜し、真面目に仕事に励んでいるのですが、何故か上手く行きません。内政向きのチートとかありませんか。」

「申し訳ありません。チートの後付けは禁止されています。それに、魔王は破壊に関するチートはあっても平和や安全に関するチートは付与できない制限が掛かっているのです。」


「しかし、王である以上、国の統治はするのですよね。」

「はい。ですので皆、国が荒れています。」

「何かの書物で魔王が民と共に国造りをしていたように思いますが。」

「書物というほど立派なものではありませんね。きっとコミカライズされたラノベでしょう。」

「すいません。見栄張りました。」


「そういった魔王がいることは確かですが、彼らはチートで国造りをしている訳ではありません。コモンスキルは持っているかも知れませんが。」

「なるほど。チートでなくても政治や生産はできますね。」

「魔王ですから魔物や厄災の生産に向いてますね。」

「いや、確かに勇者に負けない国には防衛力も必要ですけど・・・」


「ということは、それだけじゃないんですね。」

「はい。農業や商業など、経済活動を活発にしないと人口は増えませんし、社会の進展もありません。」

 何だか、真面目に国家運営したいのは本当のようだ。


「では、開墾とかしているのですね。」

「部下にやらせてます。私がやると地が裂け、灼熱地獄になってしまいます。」

「まあ、基本的に破壊に特化してますからね。」

「でも、部下が誰も開墾とか農業を理解してないのです。」

「恐らく、あなたの世界では魔族が農業をやるようにはなっていないのでしょう。」

「じゃあ、魔獣を畜産で増やすしか無さそうですね。」

「どうせ、魔族は野菜なんて食べないのでしょう?」

「一応、食べることは可能です。晩餐にはたまに出てきます。」

「どうやって手に入れているのですか?」

「自然に生えているみたいです。」


「農業は無理っぽいですね。では、あなたの理想の国とはどのようなものですか?」

「それは、平和で誰も飢えない安全安心社会を実現した国です。」

「魔王からはゼッタイに聞けない言葉のオンパレードですね。」

「まあ、前世は日本人ですから。」

「まずは国防、次は法律の整備ですね。」

「やはりそこからですか。」

「人間の国と外交関係を結ぶことは可能ですか?」

「多分無理です。勇者も私の討伐をライフワークにしてますから無理でしょう。」

「では、勇者を撥ね除けられるだけの軍事力が必要ですね。」

「でも、こちらが力を貯めている間に、人間も力を貯めます。」

「そこは、人同士で争わせるしかありませんね。」


「随分ブラック思考ですね。」

「その間、魔国が大人しくしていれば人同士の戦争は激化するでしょうし、魔国との同盟を打診してくる勢力も現れるでしょう。」

「なるほど。それならうちがターゲットになるのを避けられます。」

「その間にやるのが畜産です。まずは家畜にする種の選定とエサの確保です。」

「エサは足りなさそうです。」

「当然、草食獣でないとエサの確保からして絶望的です。」


「分かりました。それで、どうすればいいでしょうか?」

「ゴミをばらまいてエサとなる植物の生長を促すくらいしか出来ないでしょう。農地は部下に作らせたのですよね。」

「はい。」

「ならばそこを生ゴミの廃棄所にしてエサの種を播くといいでしょう。水も魔法で何とかなりますよね。」

「はい。」

「では、そこから頑張って下さい。気の長い話ですが、寿命は長いはずですので大丈夫ですよね。」

「そうですね。ありがとうございました。」

 こうして電話は終わった。



「魔王も大変ですね。」

「そうですね。常に勇者に狙われていますからね。」

「勇者討伐の旅をする魔王も世の中にはいるようですけど。」

「国は大丈夫なのでしょうか。」

「魔族の国は放っておいても大差無いようにできていますからね。」

「典型的な自給自足社会ですね。でも、それを意図的に増やそうとすると困難とか。」

「それを彼は目指しているのですよね。」

「素直に勇者と戦った方が手っ取り早しと思います。」

「そうねえ。」


 やはり、魔王が魔王な理由が良く分かったような気がする。

 じゃあ、天使の姿をした日の出の魔女って何なのだろう・・・


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