信じるか信じないかは、あなた次第
今日もミチコは居ない。
あのインパクトだから私たちにとっては存在感抜群の後輩だが、他のシフトの職員からすれば、幻らしい。
あの建物を壊す破壊力で、幻なんてあり得ないのだが・・・
「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」
「もしもし、天使のナターシャさんいますか?向田拓です。」
「これはお久しぶりです。ムコウダ様。ナターシャです。」
B-AW2006、「神の考えたワクワクてんこ盛りの世界」の人だ。
「あれから世界の理の研究は進みましたか?」
「いやあ、それが考えれば考えるほど深みにはまってしまって。今ではこの世界の全てが虚構に思えてきたんです。」
まあ、神が自分の都合で作った虚構だけど・・・
「それはかなり人生にお疲れのようですね。」
「はい。何でもアリの世界だと聞きましたが、本当に宇宙人や幽霊っているんでしょうか。」
「その世界には沢山いますよ。むしろ神より一般的だと思うのですが。」
「でも、一度も会ったことがありません。霊感が無いとダメなんでしょうか。」
「そうですね。幽霊の場合は霊感とか聖力が必要だと言われています。」
「ナターシャさんは見えないのですか?」
「天界の者は普通に見えます。ただし、私たちは生者の世界を担当していますので、通常は死者を見ないようにしています。幼稚園時代に訓練しましたよ。」
「そうなんですね。見えない私からすれば信じられませんけど。」
「信じるか信じないかは、あなた次第です。」
「宇宙人も攻めてきません。」
「魔王と宇宙人が同時に来たら、あまりに無理ゲーですからね。ストーリーの都合で調整させていただいております。」
「じゃあ、いるのは確かなのですね。」
「通常であれば、世界クラスの魔物、魔王の次くらいに発生しますよ。」
「その際も魔法で戦うんですか?」
「それまでに科学が発達していれば、ロボや宇宙戦艦で戦ってもいいですね。」
「絶対に無理っぽいですね。」
「そのための転生者じゃないですか。」
「いくら何でも21世紀の知識ではあんなもの作れませんよ。」
「魔法と組み合わせれば、大概のことはできるはずですよ。」
「確かに・・・」
「魔法で戦う巨大ロボ。いいですね。」
「ロボに乗る必要性は無いように思えますけど。」
「でも、宇宙空間で戦えますよ。」
「確かにそうですね。中世ファンタジーでは無くなりますけど。でも、宇宙空間で炎とか氷って効果が薄そうです。そもそも風や土なんて使えそうに無いですし。」
「魔法は改良すればいいじゃないですか。例えば、推進薬と炸薬だけ炎を使ったミサイルとか。」
「面白そうですね。私が生きている間には起きないでしょうけど。」
「そういった魔法は別の所で役に立つと思いますよ。」
「立ちますかねえ。」
「はい。ミサイルなら街に配備すれば、強力な魔術師が不在でも防衛が可能になります。自律型ロボを配備すれば、人が戦う必要すら無くなります。」
「なるほど。どんどん中世からかけ離れますけど。」
「何でもありがムコウダ様の世界です。」
「魔法を極めれば、21世紀を超えられるのですか。」
「信じるか信じないかは、あなた次第です。」
「あと、魔物は進化の原理に沿ったそんざいなのですか?」
「自然界に存在するものは、全てその摂理の申し子です。ただし、その世界の最適解を見つけた種の進化はとても緩やかになりますので、化石でも違いを見つけ出すことは容易ではないと思います。」
「なるほど。確かに魔物は強力で、生態系の頂点と言える存在ですものね。でも、ゴブリンは・・・」
「彼らは驚異的な繁殖力と小さな身体を活かした生存に特化しています。食料も少なくて済みますし、隠れることも容易ですし、巣なども小さな労力で作れます。群れを作って協力しますし、そこそこ高い知能を持っているのですから、生物としてはG並に優れています。」
「ホントだ。似てますね。知能以外は。」
「いいえ。嫌がらせができる生物は、みんな知能が高いですよ。」
「いやあ、Gのあれは・・・」
「信じるか信じないかは、あなた次第です。」
「はい。」
「他に疑問はありますか?」
「やっぱり、幽霊は・・・前世でも信じてませんでしたし。」
「21世紀では皆さんがおふざけで映像を作ってますものね。」
「あれって全部偽物ですよね。」
「大変良く出来た物もありますが偽物です。でも、大変良く出来ていると言うことは、そのオリジナルを見た人がいるということです。」
「そういう考えもありますね。でも、見間違いとか幻想ということもありますよね。」
「はい。人間の目とカメラは同じような構造と解像度を持ちますから、カメラに見えて人間に見えないということはありません。しかし、人間は脳が認知しない物は無かったものと扱います。特に、見た物しか信じないという方は、見えていない物が多い傾向にありますね。」
「なるほど。だから信じるも信じないも私次第なんですね。」
「はい。幽霊も宇宙人も興味の無い人にとっては、いてもいなくてもどうでもいい訳です。」
「でも、ナターシャさんがいるということはいるんですね。」
「まあ、私はその世界の情報を知っているから断言できるだけで、それを設定したのは神ですけどね。」
「そうでした。本当に神様がいる世界でした。」
「まあ、地球では存在しなかった魔法やステータスオープンがあるのです。あらゆる可能性を考えてみてください。」
「分かりました。もう少しだけ、人生を迷ってみたいと思います。」
「そうですね。そのモチベーションこそが、生きるということです。」
「分かりました。ありがとうございます。」
最後は信じてもらえたようだ。
「お疲れ様。今日も一件落着ですか?」
「まあ何とか。でも、どうして幽霊なんて作っちゃったんでしょう。」
「そうですねえ。あれが特段担っている役割なんて無いですし、ただえさえ魂が不足しているというのに。」
「単に、再生工場がパンクしそうなのに、余裕こいてる状態なんですね。」
「まあ、神は無頓着ですから。」
「認識力も全知全能になって欲しいですよね。」
「本当ですね。」
信じるか信じないかは、あなた次第・・・




