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超学歴社会

 さて、11月末は昇進試験のシーズンだ。

 といっても、そんな物に挑む職員なんていないようだ。

 私だってまっぴら御免だ。


「ということで受験しないの?」

「嫌ですよ。」

「若くして昇進すれば、次の就職だって有利になるわよ。」

「またまたそうやって~。第一、高卒のエリートなんてあり得ないんですからね。中途半端な出世は、却って自分の首を絞めるんですよ。」

「まあ、どこでそんな知恵を付けたのでしょう。残念だわ。」

 そんな会話をしていると、今日もコールが鳴る。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「もしもし。私は異世界で学生をしているコニー・レンブルと言います。」

「コニー様ですね。ご用件をお伺いします。」 


「とにかく毎日勉強が忙しくて大変なんです。何か記憶力のチートとか、いただけないでしょうか。」

「チートの後付けはできないことになっております。そちらの世界ではそういったスキルを取得出来ないのですか?」

「スキルの概念の無い世界みたいです。神様から恋愛世界の攻略対象だと聞かされていたんですけど。」


「そういう世界では、勉強はそこそこでいいのでは無いですか?」

「そう思うじゃ無いですか。違うんですよ。学生時代の成績で将来の仕官先が全て決まるんです。継ぐ家がある人や婚約者がいるご令嬢は最初からフェードアウトしてますけど、私みたいな奨学金をもらって入学した平民は這い上がらないとお先真っ暗です。」


「それは過酷ですね。」

「ですから、ここを卒業して一流大学を受験しないといけないんです。」

「恋愛要素はどこに・・・」

「それどころじゃないですよ。」

「ヒロインには会いましたか?」

「何度か追いかけられましたね。こっちも急いでたんで、会話を交わしたことはありませんけど。」


「入学後、どれくらい経ったのですか?」

「もうすぐ一年です。とにかく毎日授業、課外補修、塾の繰り返しです。」

「学習塾があるんですね。」

「元々はゲームのオプションというか、ミニゲーム的な扱いなんですけどね。ここに通う生徒にも攻略対象がいるみたいです。」

「でも、そこにヒロインは来ないでしょう?」

「今までは姿を見せませんでしたが、何かのイベントはあるかも知れませんね。」


「ヒロインの方は成績優秀者なんですか?」

「分かりません。成績上位なら廊下に貼り出されますけど、名前を見たことはありませんね。」

「まあ、王子と結ばれるなら問題は無いと思いますが。」

「どうでしょうね。学歴社会ですからね。」

「シビアですね。」

「でも、本来はこうあるべきだと思います。ちょっと行き過ぎてるとは思いますけど。」

「そうですね。恋愛お花畑が国の浮沈を握っては、みんなが不幸になりますからね。」


「それにしたって難しいですよ。昨日の数学はゲーテルの不完全性定理でしたからね。」

「それ、恋愛モノの世界ですよね。」

「攻略のどこで使うんだよって感じです。」

「きっと、卒業までにフェルマーの最終定理まで行きそうですね。」

「大学で何を勉強するのでしょう・・・」

「五次元か正八包体を実際に作るんじゃないですか?」

「実際にあるんですか?」

「神に出来ないものはありませんよ。」

「私、人です・・・」


「しかし、あなたの行動は人としては正しいですが、ストーリーとしてはイレギュラーです。」

「そんなこと言わないで下さいよ。私だって必死なんですから。」

「ヒロインと結ばれればハッピーエンドなのではないですか?」

「成績不振の男爵令嬢と平民がカップルになっても、見通しは暗いですよ。」

「他の攻略対象は元気にやってますか?」

「王子も成績不振です。」

「完璧王子ではないのですか?」

「人柄と運動神経は抜群らしいです。でも、ここの勉強は恋愛してては付いていくのも難しいレベルですからね。」


「宰相の息子さんは?」

「入学後、最初の試験は良かったですけど、後は急降下したみたいです。政治学だけは今でも上位にいますけど、数学や心理学なんかはダメみたいですね。」

「ああ、文系でしょうからね。」

「騎士団長の息子は、次の試験で全科目35点以上取れなければ留年です。」

「ダメっぽいですね。」

「留年は一度しか認められません。」

「真っ先に卒業してしまいますね。」

「もう精神的にも体力的にも限界です。」

「まあ、世にはびこるお花畑に対するアンチテーゼなのでしょうね。」

「私は儚い犠牲者です。」


「でも、ゲーテルの不完全性定理は理解できたのでしょう?」

「前世の知識が無ければ絶対無理ですよ。」

「優秀だったんですね。」

「一応は旧帝大の物理学科出です。」

「なら、卒業は楽勝ですね。」

「哲学とか法学から考古学までありますけどね。」

「無茶苦茶ですね。」

「もう、ストーリーなんてどうでもいいです。」


「でも、学生時代の努力は必ずどこかで活きるものですよ。」

「考古学・・・」

「大丈夫です。騎士団長の息子さんの骨は発掘してやって下さい。」

「それはヒロインがやると思います。」

「では、頑張って下さい。」

「はい・・・」


「勉強は大変ですね。」

「私は一度も本気で頑張ったことはありません。」

「まあ、天使なんてやってもやらなくても大差ないですからね。」

「はい。一生懸命頑張ってここだったら発狂してます。」

「私は、ちゃんとしてたんですよ・・・」


 さすが副班長。

 でも、絆されてたまるもんか。


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