第55話 知らない天井だ…何回目?
知らない天井だ。
いや、このセリフ何回目だよ。
もう慣れたよ、この状況。
監禁?いや今回は誘拐かな?
この短い期間でこの誘拐、監禁回数。ピ〇チ姫もびっくりだろ。
まだ〇ーチ姫の方がいいだろ、作品によっては彼女自身で戦えるだけの力があるのだから。
ただちょっと今回は腰がだいぶ痛いな。腰の痛みで起きたようなものだ。
どうやら地べたにそのまま寝かされているらしい。
今回の誘拐犯はだいぶ不親切だな。アムエルちゃんを見習え。
ふかふかのベットとうまい飯つき、極めつけはかわいいアムエルちゃん付きだぞ。
いま思えばだいぶ丁寧な扱いの監禁だったな、監禁初心者向けだったのかもしれない。
チュートリアル、チュートリアル監禁。
…そんなチュートリアルあってたまるか。
さて、
状況を確認するために、起きようとするが、手足を枷でがっちりと固定されているようで体を起こすことができない。
顔を動かしてまわりを見渡して状況を確認する。
うーん、殺風景な部屋だ。
家具なし、窓なし、扉なし。
扉なし?
扉がないって、どっから入ってきたんだよ…
まあ、いいか、そもそも首しか動かせないんだから、状況を確認するのにも限界がある。首を動かしても見えないところにあるのかもしれない。
今回の犯人は、まあイプノちゃんだろう。
いったいなぜ僕を監禁したんだ。この世界の女子は監禁癖でもあるのか?
なに?契約を断りすぎたから監禁したの?
「そうね~半分あたりってとこかしら~」
イプノちゃんが僕の頭の方から僕の顔をのぞき込むようにして話しかける。
「イプノちゃーん、さっきぶりだね。これ外してくれない?」
僕は枷によって満足に動かすことができない手足を動かしてアピールする。
「イヤよ~チャンスは何度かあげたじゃない~」
「チャンスって、契約のこと?」
「そうよ~」
「いや、それじゃあ結局、僕は最終的に君のいいなりじゃないか」
「まぁそうね、でもそのかわり願いがかなうのよ~」
「そんな一世一代の、僕の人権を捨ててもいいくらいの願いなんて持ってないのよ」
「あら~そうなのね~でも私としては歩み寄ったつもりだから~」
「取り付く島もない感じ?」
「そうね~もうあなたを捕まえた時点で、計画の八割は終わっているといっても過言でもないのよ~」
「そんなに僕は重要だったんだ…」
「そうよ~じゃ、時間ももったいないから始めていくわね~」
「え?なにを?」
そうしてイプノちゃんは、僕の足元に立って、両手を大仰に広げる。
すると、僕が寝かされている床から紫色の光があふれてくる。
「お?お?」
「…母なる大地、雄大なる…」
「詠唱!?」
イプノちゃんが詠唱を始めたようだ。
まずい、絶対にまずい。
え?死ぬ?なにも知らないまま、なにかの儀式の道具にされて死ぬ?
そんなのはごめんだ!
「ちょっと!ストップ!ストーーーーーップ!」
僕は首を左右に振りながら、抗議の意を示す。
「…その濁流は竜がごとく…」
イプノちゃんは止まらない!まだ足りないか!
「タンマ!ちょっちタンマ!まじまじ!タンマ!タンマ!」
首を左右に振りながら、腰を上下に動かす。
「…されどその炎に…ちょっとうるさいわよ」
「お、止まった?」
「…はぁ、なぁに~集中できないから黙っていてほしいのだけど~」
「いや、なにも知らないで死ぬのはちょっとごめんだなって思ったんだよね」
「知ることができたら気持ちよく死んでくれるのかしら~」
「いや、そういうことじゃないけど」
「でしょう~であればさっさと進めたいのよね~ちょっと黙っててもらえる?」
「いやそれで素直に黙る人はいないと思うけど…」
「そもそも私、この儀式で死ぬかもしれないとか言ってないじゃない~」
「あ、もしかして、別になんともならない感じ?」
「………」
「絶対死ぬやつじゃんそれぇ!」
その沈黙は、もうそういうことじゃん!
「わかったわよ、教えてあげるわ~もしかしたらそれで多少は鬱憤が晴れるかもしれないから~」
「鬱憤?」
「そうよ、あれは私が子供の頃の話よ」




