第51話 体育、懐かしい!
「知りたい?」
「何を?」
「ベラの病気について」
「顔に出てた?」
「できる嫁は、旦那が考えていることが手に取るようにわかるものよ」
「うーん、気になるけれど、本人のいないところで聞くのもね…どちらかというと、次の体育の授業のバレーのコツについて教えてほしいかな」
次の時間は体育館でバレーボールだ。体育に関しては、他のクラスと合同でやっている。理由はわからない。教える時の効率か、はたまたでかすぎる体育館を有効活用するためか。
今はアムエルと一緒に体育館に向かっている途中である。
「そう、まぁ知りたければいつでも教えてあげるわ」
「みんな知ってるの?」
「噂程度にはね」
「噂ね」
「ちなみにバレーはシエーネに聞きなさい。私はあんまりよくわからないわ」
「ああ、シエーネはバレー部だったね」
「ふん、バレーなんて、玉をひっぱたけばいいだけじゃない」
「アタックっていうのでは…?」
「ひっぱたくのよ、そのぐらいの気持ちが大事ということよ」
「そんな簡単なスポーツではない気がするけど…」
「ごちゃごちゃうるさいわね、後で見るといいわ、私の力を!」
「…楽しみにしてるよ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――
「…思ったより難しいわ」
アムエルは打ちひしがれていた。
「だから言ったじゃないか、いや、言ってないけど」
「あんなに難しいなんて、動画で見た時は簡単そうに見えたのに…」
「なんでもそんなもんでしょ、すべての物事は想像の3倍くらいは難しいもんだよ」
ちなみに僕は授業に参加はしているが、みんなと一緒にプレーはしていない。というか、できない。なぜなら答えは簡単、パワーが違う。
特に玉のスピードが速すぎて、目で追うことができない。
あのスピードの玉をレシーブしようものなら、腕がちぎれてしまうだろう、文字通りの意味で。
そもそもの身体能力が違いすぎる。ネットの高さも高い。
なぜ、体育の授業が他のクラスと合同なのか、分かったぞ。こうして女子とは一緒に体育ができないから、体育を男子と女子で分けて行おうということだろう。まぁそもそもその他のクラスの男子は不登校なので、全く意味はないが。
そのため僕はこの時間は女子のバレーを見学している。
…僕もバレーしたかったなぁ。
しかし、シエーネはすごいな。あんな小柄なのにすごいジャンプ力だ。
やはり、バレー部、他のクラスメイトとは動きが違う。経験者の動きだ。
ベラはどうだろう…あれ、いない?どこへ行ったのだろうか。
僕がキョロキョロしていると、アムエルはむっとして、言った。
「あなた、私の前で他の女のこと考えているでしょ」
「え!?い、いや違うが?今日の晩御飯のこと考えていたが?」
「嘘おっしゃい、誤魔化しは無駄よ」
「むむむ…なんでわかったんだい?」
「妻は旦那の考えていることは手に取るようにわかるのよ」
「そんな非科学的な…」
「世界はまだわかっていないことだらけよ、科学で証明されていないようなことを非科学的と一纏めにしてしまうのは、視野が狭いんじゃないかしら、流石、平学ね」
「平学ってバカにしているんだろうけど、聞きなじみがなくてバカにされている感覚がないなあ」
「ちなみにイザベラはあそこで見学してるわよ」
「ホントだ」
「…やっぱり、知りたいんでしょ」
「そうだね」
「今がチャンスだと思うわよ」
「…いいの?」
まずなぜ僕がベラのことを考えていることを分かったのか知りたいところであるが、アムエルが、僕が他の女と話していることが我慢できなくて監禁に至ったアムエルが、僕とベラが話すことを許すのはとても驚きだった。
「ふん、私も成長しているのよ。それに…」
「それに?」
「最終的に私の所に戻ってくるでしょ、私、分かるの」
「…もちろんだよ」
僕は体育館の端っこで体育座りをしているベラに近づいて行った。




