第50話 晴れ
本日、快晴なり。
小鳥も機嫌がよさそうに歌っている。
気持ちの良い風が木々を揺らしている。
実に清々しい朝だ。
こんな能天気なことを通学中に考えていられるのも、家と学校が近いからである。
非常に体が楽。
長い通勤や通学はそれだけで体力を使うものだ。
が、歩いていると汗をかいてきた。今日は昨日よりも気温が高いらしい。
最近日差しが強くなってきた。夏が近い。
この世界にも四季があって嬉しい。
ただ、これから夏になり、日差しが強くなることを見越して、日傘でも買おうかなと考えている。
これは前の世界の知恵である(知恵というか、多くの人が知っている事実であるが)日焼け対策を若いうちからしなければ、おじさん、と言われるような歳になるとシミが出てきてしまう。
シミが増えると、ふとした瞬間に歳をとったと感じる瞬間が多くなり、少々悲しい気持ちになるのだ。
そのため、第二の人生、今のうちから日焼け対策をするのだ。
ちなみに昨日から一緒に住んでいるアムエルはというと、今日は朝から生徒会の活動があるとのことで、僕よりも先に学校に行っている。
聖女とは気まずい関係だろうに、よく顔出せるな。そのあたり精神的に図太いのか。まぁ監禁するぐらいだしな。
少なくとも僕よりは強靭な精神を持っているに違いない。
僕がちょうど校門前に差し掛かった時に、近くにリムジンが止まった。
典型的な白いリムジン。リムジンを運転できる人ってすごいよね、あれはどの免許で運転できるのかな?大型?
そんなとりとめもないことを考えていると、中から眩しいほどの金髪、毛先はゆるふわカール。スタイルはボンキュッボンなお嬢様女子が降りてきた。
「お、ベラじゃないか。奇遇だね、おはよ」
「おはようございます。奇遇ですわね」
そうして、ベラは溢れんばかりの笑みを僕に向ける。
ま、まぶしい。僕のような元が根暗な人間はついつい目を背けてしまうような、太陽のような笑顔だ。
まぁ、吸血鬼に対して、太陽のような、という比喩はどうかと思うが。
「そういえばさ…」
「どうしました?」
僕らはクラスを目指して一緒に歩く。
ひとつ、ベラのことで思い出したことがある。
「前にベラが病気だ、みたいな話をしていたと思うんだけれど…あれは大丈夫なの?なんか、ほら…もしかしたら力になれるかも…なーんて」
触れていいかどうか悩んだ末に、どうにも遠回しな言い方になってしまった。
「大丈夫ですわ、大したことではありませんの」
ベラは先ほどの太陽のような笑顔とはうって変わって、困ったように笑って言った。
「そう…お大事にしてね」
「ありがとうございます、その気持ちがうれしいですわ」
ちょっとやらかしたかもしれない。あまり踏み込むべきではなかったか。
まぁそれもそうか、ここ最近の出来事が濃すぎて、まるで何年もこの世界にいるように感じるが、実際はこの世界にきてまだ一年とたっていない。
ベラと仲良くなったのも最近である。
もっと仲良くなってから聞くべきだったな。
今よりも仲良くなっていれば、聞かずとも、いずれ何かの拍子で知ることができたかもしれない。
「ところで、昨日は学校に来ませんでしたが、ご気分がすぐれなかったのでしょうか?」
「む!?そ、そうね、ちょっと風邪をひいてしまって…」
「まぁ!大丈夫でしたの?熱は出ましたの?」
「うん、100℃くらいかな」
「すごいですわ!水が沸かせますわ!」
「そんなわけないだろ」
まずこの子はこの世には嘘をつく人間がいるということから教えたほうがいいかもしれない。




