第30話 天気も悪く、旗色も悪いかな!
さて、次の日の学校、昼休みである。
今日は食欲があまり無かったので、個包装のゼリーで済ませている。
「さすがお兄ちゃん、しっかり稼がせてもらったっす!」
「オー、よかったよかった。頑張ったかいがあったよ」
シエーネの栗色のふわふわした頭をなでる。
頭についている小さめなくにくにした耳の感触が心地よい。
今日は部活の友達が昼に用事があるためか、一緒にご飯を食べている。イザベラさんも昼休みになるやいなやどこかに行ってしまったし。
ちょうどよかった。
「ゼリー食うか?」
「良いんすか?やった!」
今シエーネは、僕の膝の上に座っている。
僕はシエーネの頭に顎をのっけている形だ。
その細い腰から腕を回して、しっぽも触らせてもらっている。
あっちの世界ではセクハラかもしれないが、こっちでは合法、いや合法ではないけれど、本人が嫌がっていないので、まったく問題はない。
むしろうれしそうじゃないか、ええ?
ふわふわなしっぽだ、一生触っていられる。
良い匂いもするし、枕にしたいくらいだ。
夏になったら冬毛抜ける?ごっそり?
いただいてもよろしい?
とは言わない
兄としての威厳に関わるからな。
「くすぐったいっすよー」
シエーネはくすぐったそうに僕の膝の上でモゾモゾとする。
「えー良いだろ別に、減るもんでもないし」
と何事もない平和な昼をほけぇと過ごしていると、イザベラさんが少々慌てた様子で教室に入ってきた。
「イザベラさん、そんなに慌ててどうしたの?」
するとイザベラさんはこちらを見据えて言った。
「お母様がお呼びです」
「…」
いやだなあ。
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「さて、まずはおめでとう」
「ありがとうございます」
あれから放課後のイザベラさんハウスである。以前に話をした時と同じ部屋だ。
「魔道具も役にたったようでなによりだ」
「はい、それについてはお世話になりました」
「さて、君は学生で、勉強や宿題も済ませなければならないだろうから、手短に、単刀直入に話をしよう」
「まず、オタンの件だが、入り給え」
イザベラさんのお母さんの一声で、部屋のドアが勢いよく開かれたかと思えば、顔面を泣きはらしたオタン君が入ってきた。
「イザベラ様、この度はたいへん申し訳ございませんでした」
「えぇ?」
何がどうしたんだ?
「もうあんなこといいません、許してください」
「え?え?は、はい…」
隣に座っているイザベラさんも混乱しているようだ。そりゃそうだ、昨日の今日で何があったというのだろうか、あのわがままなお坊ちゃんがここまで変わってしまうなんて。
「ゆ、許してもらったので、もういいですよね…?」
「よし」
イザベラさんのお母さんが一言告げる
「ありがとうございます!失礼します!」
オタン君は、そのままとんでもない速さで部屋を出ていった。
めっちゃ泣いてるやんけ。
とても泣きはらしていたようだったが、本当になにがあったのだろうか。
「何があったと思う?少年」
イザベラさんのお母さんはこっちを見てとてもにやにやしている。今まで見た中で一番の笑顔だ。
…何があったかは、聞かないでおこう。知らないほうが幸せなこともあるだろう。
「で、だ。あれとは婚約破棄とする運びとなった」
「本当ですか?」
「決闘の約束をほっぽり出すようなやつだ、これからどんな問題を起こすかわからないし、うちの評判が下がる可能性もある」
「なるほど」
するとイザベラさんのお母さんはわざとらしい口調で話始めた。
「ところで、君のせいで、婚約破棄となってしまったなぁ、うちが損をしてしまうかもしれない、もちろん、この責任は取ってくれるよなぁ?」
わざとらし!
「どのように責任を取ればよろしいので?」
イザベラさんのお母さんはその言葉を待ってましたと言わんばかりの笑顔で言う。
「簡単だよ、うちの娘、イザベラと婚約するといい」
「ファ!?」
「え!?」
ほら!イザベラさんもびっくりしてるじゃないか!
「…ちょっとそれは強引ではないですか?」
「なあに、強引ではないよ。前も言った通り、少年には、少年自身にとても高い価値がある。そもそも君がでしゃばっていなければ婚約破棄にはならなかった。少年が被害者面する権利はないのではないかね?」
「いやしかし、イザベラさんの意志だって…」
「私は、別に///」
おや、ちょっと頬が赤くないですかイザベラさん。
何その反応、期待して良いんでやんすか?期待して、良いんでやんすか?
「まぁなに、すぐに決めろとはいわない、私は優しいからね。今日はもう遅い泊まっていきなさい」
「いえ、歩いて帰れますよ」
「泊まっていきなさい、男子に夜道はあぶない」
「いえ、ボディガードを最近雇ったので、電話で呼び出します」
ちょっと遠いけど、あいつの扱いなどそれくらいでいい。
「いや泊まっていきなさい、今から大雨になるらしい」
「いや、今日の天気は終日晴れでしたが…」
イザベラさんのお母さんはおもむろに指をパチンとならすと、
外がみるみる暗くなって、数メートル先が見えないくらい激しい雨が降ってきた。
イザベラさんのお母さんはこちらに向かってニッコリ笑って言う。
「泊まっていくだろう?」
「…お言葉に甘えて」
化け物め。




