第28話 猫さんは有能
「僕は風呂入ってくるからゆっくりしててよ」
「かしこまりました」
「後、わかってると思うけど、覗くなよ」
「わかっております。覗け、と言うことですね」
「逆だ!覗くなってことだ!」
「お約束の流れかと思いましたが」
「お約束じゃないわ!アニメじゃないんだぞ!」
着替えをもって脱衣所まで行く。ノーシャはどうせ入ってくるだろうから、鍵を閉めておこう。もちろんノーシャの力の前には鉄の鍵など無力かもしれないが、さすがにそのあたり他人の家を壊してはいけないということぐらいはわきまえているだろう。
体を流して、決闘に行く前に溜めていた風呂に入る。
前の世界の家の風呂とは比べ物にならない程にでかい風呂である。
足も伸ばせる上に、後何人か入れそうなくらいにはでかい。もちろんでかいだけでなく、材質にもこだわっている、いわゆる檜風呂ってやつだ。とてもいい匂いがする。
どれだけ入っても飽きない風呂にゆっくりつかり、疲れを癒していると、だんだんとうとうとしてきた。決闘大変だったしなぁ。決闘をした相手と同じ屋根の下とは本当に人生どうなるかわかったものではない。
眠くなってきたし、そろそろ上がろうかと思い立ったところで、
「あ、アレ?開かないですね」
とドアノブをガチャガチャしている音が聞こえる。ノーシャが覗きに来たようだ。
鍵のかかったドアを開けようと試みて、痺れを切らしたのか。あろうことかこちらに話しかけてきた。
こう言うのはバレずにやるもんだろう。
「開けてください、お背中お流ししますよ」
「お断りだ。もう上がろうと思っていたところだ」
「でも背中は洗い残しがあるかもしれませんよ」
「いらないって」
「洗いっこしましょうよ。私もどことは言いませんが誰かさんのせいで、びしょびしょなんですよ」
聞きたくなかった。
「それはごめん」
「謝らないでくださいよ、なんか虚しいじゃないですか」
普段の僕なら大手を振るって一緒に入ることに賛成していただろうが、今の僕は決闘で疲れて、とてもじゃないがそんなピンクな気分にはなれない。
とりあえずさっさと寝たい。
「君がなんと言おうとも、僕はもう上がるから」
「チッ」
「舌打ちした?」
「していません」
「したでしょ」
「ちょっと思い通りにならないことがあって、ついつい舌を使って口の中で音をたてたくなっただけです。」
「それを世間は舌打ちっていうんだよ」
「世間というのはあなたのことでしょう?」
「言い訳しない!」
オタン君といる時もこんな感じだったのだろうか、だとしたらオタン君もストレスが溜まっていたのかもしれない。他人でストレスを発散することはよろしくないが、ちょっと同情する。
風呂から上がり、脱衣所にて服を着る。
「おお、衣擦れの音もなかなかオツなものですね」
「変態め…」
気持ちはわかる、わかるけれどもそれを口に出してしまったらダメだろう。なんかいろいろとさ。
「さて、頭を打ちたくないのであれば、扉の前からどいたほうがいいと思うよ」
「どんとこいです。私はMです」
「そうか、では遠慮なく」
ドアを開けると、なかなか鈍い音と同時にぐえっ、という声が聞こえた、言わんこっちゃない。
「ありがとうございます!」
「変態め!」
「ありがとうございます!」
「言葉攻めではないわ!ってお前!なにをかぶっているんだ!」
「?パンツですが?」
「僕のパンツじゃないか!箪笥からとってきたのか!?」
「いえ、床に落ちていましたよ」
「それでも見て見ぬふりするのが、大人ってもんだろうが!」
「それならば、私は大人になんてなりたくありません」
「いい顔してなんてことを…」
「あ、そうそう」
「なんだよ」
「お部屋、片付けておきましたよ」
「マ?」
「はい」
リビングに戻って、部屋の状況を確認する。
「おお…すごいな!」
「ありがとうございます」
家具を買った際の、めんどくさくて、解体していなかった段ボールは解体して一纏めに、洗うのがめんどくさくて放置していた洗濯物や食器はきれいに片付けられ、床には埃の一つもなかった。
「…やるやん」
「ありがとうございます」
認めたくはないが、この変態は家事スキルがとてつもなく高いようだ。
「さて、お話がございます」
「なんだい?」
「私を雇ってくださいませんか?」
「いやです」
「即答!?」




