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迷宮白書  作者: 深海 蒼
72/73

72話


 「朝霧の森林」エリアで遭遇したダンジョンの精霊を名乗るホログラムとの対話を終え、拳児達はその日はダンジョンから戻りいつも通りに睡眠を取ってから、翌朝に神殿へと赴いた。普段通り対応してくれるセシリアに連れられ、マリーナ司祭および菅原との面談を行う事となった。

 神殿内の会議室でマリーナ司祭と菅原、そして司祭の肩に停まる御使いと呼ばれる白い鳥に対して拳児達が説明を行うと、マリーナは少し難しい顔をした。


「異常個体のモンスターの受け入れ、ですか。ダンジョンからそれらを出すという事に、何の意味があるのでしょうか?」

「それは何とも言えないですね、私達も詳細は教えてもらってないですし。でもそういった事は過去に何度か行われていたと言っていましたよ、数百年前とかの単位みたいですけれど」

「なるほど……」


 マリーナの問いかけに恵も少し渋い顔をしながら応じる。本当に細かい所は聞いていないので分からないのだが、何らかの問題でそのモンスター達をダンジョンから出したいという話でしか無い。恵からの答えにマリーナがやはり考え込み始めると、彼女の肩に停まっていた鳥が軽く羽を振り上げた。


『難しい話じゃない。異常個体のモンスターとはつまり、ダンジョンで出現するモンスターの中でダンジョンという環境での適応が特に難しい個体という事。ダンジョンとは戦闘によって生存力を強化する為のステージシステムであり、システムから生み出された物体である程度個体差が生じる。日々大量生産されるモンスターという物体の中で一部劣化品と言えるのがダンジョン内にも関わらず村や里を形成し穏やかに暮らしている存在。その中でも異常個体と呼ばれる存在は、ダンジョンのシステムから明確に弾き出された不良品。異常個体が増えすぎれば異常個体を匿っている劣化品諸共ダンジョンのリソースとして再利用する為に通常のモンスターを使って劣化品、異常個体の殲滅を行って魔力リソースとして回収を行う事となる』

「生活環境がダンジョンである以上、戦闘を望まない存在は劣化品扱いや異常扱いされるのか。確かに戦う為のリングで戦わない存在は必要無いな」

『そういう事』


 鳥を介して話に入ってきた知恵の女神アウロラの言葉に拳児は得心がいったという形で納得を示す。戦う為の場所で戦わない個体、それは確かに異常個体と呼べる存在だ。その異常個体の内容に納得したが、続けてフランがアウロラに向けて問いかけた。


「でもそういう個体って、そんなに大量に出てくる物なの?そりゃ多少はあるだろうけど、急に増えたって言ってたから何か原因があるんじゃないのかしら?」

『原因は混沌の力。世界にまだ広がり続けている混沌の力がダンジョンにも当然流れ込む為、その影響で過剰なエネルギーを用いて生成されたモンスターが異常個体となって発生する』

「やっぱり混沌の力かー」

「どこにでも出てくるわね、混沌の力」


 アウロラからの回答に綾子が苦笑を浮かべ、マリエルも苦笑しながら用意された紅茶を一口飲む。方向性の定まっていない純エネルギーと呼ばれる混沌の力は、本当に面倒なエネルギーだなと全員思わずには居られなかった。そんな彼女達の心情を理解しながら、アウロラはマリーナに言葉を続けた。


『この契約に関しては問題無い。神殿で一旦預かってこの世界での教育を与えてから、各々のしたい事をさせるという誘導をすれば良い。神殿内の農作業を行わせても良いし、それこそ神官として受け入れても良い。見た目は多少問題になるかもしれないけれど、見た目だけの問題しか無いとも言える』

「なるほど……分かりました。でしたらその申し出は受けましょう。こちらでその方々を受け入れます」

「助かります」


 マリーナの言葉にほっとした顔で恵が感謝を伝えた所で、傍らでお茶を用意していた神官のセシリアが口を開く。


「では司祭様、当日は私がダンジョンへは赴きます。マリーナ様が今神殿を空けるのは良く無いのでしょう」

「そうですね、頼みますセシリア」

『当日は私も同行する』

「え、それ大丈夫なの?」


 セシリアの言葉に同行すると言うアウロラに対し拳児が思わず問いかけるが、アウロラは特に変わりない声色のまま返事を返した。


『特に問題無い。マリーナは日々神殿で混沌の力の調整を行っているからそれが途絶える方が問題はある。私は別に、この御使いの肉体が消滅させられても別の肉体を形作るだけで済む』

「あ、そうなんだ。まぁ戦闘は無いと思うから良いと思うよ」


 割とドライな事を言うアウロラの言葉に少し苦笑しながら拳児が呟く。とりあえず神殿との話し合いは無事に終わったという事となり、アウロラがまた口を開く。


『じゃあ、すぐに向かう。座標を刻んだアイテムは?』

「あるわよ、割符が。ほら」


 アウロラの言葉にフランが荷物袋の中から一つの木片を取り出すと、アウロラが少しの間じっと木片を見つめてから、鳥の首を左右に振る。


『難読化されている、解読までに数十年は必要そう』

「あ、それダンジョンの人も言ってた」

『やっぱり』


 アウロラの言葉にニアが応じるとアウロラは頷いて呟く。


『その割符があれば安全に内部の安全区域に辿り着けるはず。特に武装もそう必要では無いと思う。マリーナは迎え入れる準備だけ神殿内の人間に指示をしておいて』

「分かりました、そのように致しましょう」

『じゃあ、今から向かう。セシリア、軽く準備を』

「分かりました」


 アウロラに言葉で促されマリーナとセシリアが準備の為に会議室から出ていくのを見届けてから、アウロラが1人呟く。


『属性球が手に入る、ダンジョン内から異常個体が出てくる。力が増えるのは儲けもの』

「おい口に出てるぞカミサマ」

『失礼、本音が出た』

「損得勘定とか神様もするのね」

『神とはある意味自己満足の果てに神になった存在も居る。私もそう。知識欲で神の頂きに至ったのが私。損得勘定大好き』

「土着の神って生々しいなぁどこの世界も」


 アウロラからの返答に、拳児達も日本の人間臭すぎる神々の物語を思い起こし、多神教の神様ってのはそういう存在だよなぁという共通認識が一致したのであった。



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