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84 閑話 お悩み事相談

 《 SIDE : 天音詩織 》 


 その部屋に入るや、思わず渋面になる。

 そうなってしまうほどに香木を焚いたのか、薫りが立ち込めているのだ。

 一方でその強烈な薫りの中にも、ある薫りが微かに混じっているのにも気が付く。

 微量すぎる薫り故に大半の者は判別出来ないだろう。そこに此の微かな薫りすらも隠さんがために、更に香木を焚いているのだ。これでは猶の事に察知した者は皆無であっただろう。

 

 なるほど……な。


 一瞬での目診とはいえ、大体の事を察した。

 視線の先では、発覚する事に怯えながらも、己の窮状に焦燥している者が微かに身を震わせている。

 その眼に宿るは、羞恥とも悔恨とも安堵とも云えるものである。

 そして自分では、もはやどうにもならないと云う一種の諦観も含まれている。

 だがその眼の最奥には、救いを求める光もまた確かにある。

 まだ、最後の一線で踏み止まっていると云ったところか……。 

 だが……、それとて危うい。

 最後の一押し……、いや、微風の一吹きで堕ちる。それほどに危うい状態と云えよう。


 そんな事を考えながらも、此処に赴いた経緯に思いを馳せた。


 ・

 ・

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 ・

 ・

 ・


 ある日、事前に取り交わした面会予約通りに隣国のグランから大身の貴族が、ラルキの王城に剣聖の天音詩織を訪ねて来た。

 大仰な隊列を組んでの来訪ではなく、文字通りに人目を忍んでの来訪である。

 天音詩織との直接の、そして内密での面談を先の貴族は要望していた。

 より正確には『渇望している』とさえ云えるほどであった。

 だが、リーナやエミナを始めとしたラルキ側としても、客将としての待遇で詩織を迎えている。

 そのため、天音詩織とこの貴族のみでの面談など、そう易々と応諾する訳には行かない。

 なにも密室などでの面会によって、何らかの『過ち』が起こる事や『風評』が巻き起こる事を懸念したという訳ではない。

 そもそもが密室で剣聖に対して、何らかの『過ち』を起こそうと企図したところで、斬殺体が一体搬出される事になるだけだろう。

 此れが複数で『力づくで事を成そう!』としたところで、同じく複数の斬殺体が搬出されるだけだ。

 また『風評』が巻き起こる懸念にしても、そもそもの会談場所が大きい応接室であり、壁際に御用を承る側仕えが控えているので、懸念される風評すら立ちようがない。(流石に密室と云う要望はかなう訳もなく、妥協として大きな応接室で人を壁際にまで遠ざけての会談となったのだった。)


 度し難い悪弊としてよく巷間に挙がるのが、『御令嬢が意中の御方と、邸内ですれ違っただけで懐妊した』という失笑ものの伝説と云うか、風評がある。

 『空気妊娠とかどんだけ活力が漲っているのか?』と市井の笑い話になるのだが、当人達は至って深刻かつ真剣に対処せざるをえなくなる。

 まぁ、大体の場合において、その令嬢の家門や権勢が、懸想した相手方よりも劣位な立場故に起こる事例が多い。

 想いが募り積もっての『思い余っての妄想』で片付けられる事になるのだが、巻き込まれる周辺は東奔西走する羽目になる。当人達にとっても居た堪れないが、これが家門を巻き込んだ政争になる事もあるのだ。

 従って婚約しているならまだしも、ただの面会で当事者のみで直接にお会いしたい等という要望は、そもそもが礼を失していると云える。

 そのようなことは熟知しているはずの大身の貴族が、敢えて無理を承知で要望する。其の事自体が、急迫の事情を多分に含んだ切実な内容である事が窺える証左と云えた。


 一方で剣聖の天音詩織の立場を敷衍すれば、その立場は劣位どころか、名目も実力も最上位に位置している。

 そんな御仁に、いい歳をした有力家門の長が懸想し、あまつさえ凶行に及んだともなればその結末は容易に想像がつくというもの。

 即座にその場で骸を晒す事になるだろう。

 また犯行現場? で運悪く制圧されようものなら、醜聞どころの騒ぎでは済まされない。良くて俗世を離れ山奥の修道院で強制的に研鑽を積む事になるか、悪くて病死、最悪で家門が潰える可能性も否定できない。


 そのような度し難い仕儀に及ばずとも、穏当に立身や財貨や身分などをチラつかせて、剣聖の『引き抜き』という可能性も十分にある。警戒されるのも尤もな理由と云えた。


 もっともラルキとて、剣聖の引き抜きには異様なほどに警戒している。

 いまや巷間では『ラルキに二翼の大翼あり、其は清涼のエミナと剣聖将軍の天音詩織なり』と称されるほどで、国王たるリーナ自身もラルキを支える大柱と見做している程であった。


 このような複雑かつ簡明な理由から、過日に隣国グランからの外交使節団が来訪した際にも、多分に警戒感が先行している対応となってしまったのも、致し方ないと云える。


 そして、この外交使節団は通常の外交任務に就いていたが、付随して先の大身の貴族の来訪及び面会予約を取り交わす付随任務をも帯びていたのだった。


 ・

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 そんな任務に忠実な外交使節団長は付随任務を完遂すべく重臣のエミナ・リュティガ―を挨拶がてらに公式訪問していた。


「リュティガ―卿、此度は急な会談の申込みを受けていただき感謝いたします」


「いえ、かまいません。我が陛下も諸国との友誼を通じることを喜ばしく思っておいでです。

 しかし陛下との謁見ではなく私との会談をお望みと伺い、小官は少々戸惑ってはおります。

 ご承知の通り、陛下との謁見の日程は既に決まっております。

 いまからの変更、延期ならともかく日程を詰めたいとなると、よほどの緊急かつ重大な事項でもない限り、かなり難儀するものとご了知下さい」


「その件に関しましては、リュティガ―卿のご理解とご尽力を賜り厚く御礼申し上げます。

 予定通りの謁見にて、よろしくお取り計らいください。

 本日御多忙のところ、このような会談を望みましたのは、また別の件でありまして」


「ふむ? 別の件とは?」


「剣聖たる天音詩織殿のことなのです」


「ほォ~~、剣聖殿ですか……。それはそれは……また思いがけぬ名を伺いました……」


【あァァ~ン、ラルキの大将軍である詩織様に関する事だァ~(⤴)? 

 正式にラルキの大将軍としては任用・任官されてはいないが、ラルキ全国民がそう思っているんだぞ!

 その詩織様に探りを入れる心積もりか? てめェ、一体何の用だ?

 詩織様を『引き抜こう』とでも言うつもりか?

 喩え天が許しても、このエミナ・リュティガ―が許さぬ。

 絶ッ対ッに、認めんぞッ!

 いっそのこと……こいつ【外交使節団】を……殺ってしまうか。

 記録を改竄し、急ぎ国元に戻ったことにするのだ。

 急ぎの帰路で使節団が行方知れずになる事など滅多にはないが、本当に稀によくある事ではある。

 ふむ……。存外、妙手であるかも知れん。

 いや。これこそが、最善手のような気がする。

 ……よし、殺るか!】


「そのように眼光を鋭くされますと、小心者の私としましては心胆を寒からしめることになってしまいます」


「これは失礼。剣聖殿は我らにとり大恩ある御方。それゆえ少々過敏になっておりました。

 己の思慮の浅きことに恥じ入るばかり。浅学菲才の若輩故の仕儀、御寛恕いただきたい」


「ははは、名高き清涼のリュティガ―殿の威名は、遠方の我らにも一陣の風と成りて鳴り響いております。

 その名に恥じぬ才媛であることは、その眼と言説を伺えば一目瞭然。

『能ある鷹は爪を隠す』と申しますが、能ある鷹はその身に纏う雰囲気で、それと判るものです。

 またそのような大翼を二翼【エミナと詩織】もお手元に留めておられるティリス陛下もまた、一廉【ひとかど】の名君であると拝察いたします」


「過分なる評に、我が身が引き締まる想いです。また不肖なる我が身をお引き立て頂いたティリス陛下の御名に陰が差さぬように、剣聖殿に教えを請うて研鑽の日々を過ごしております」


「剣聖殿といえば、ティリス国王陛下は、なんでも『不臣の礼』にて剣聖殿を遇すると国務会議で宣したと伺いました」


「はい、その通りです」

【随分と長い耳をお持ちの様で……】


「私の寡聞少見ゆえに『不臣の礼』という語を存じ上げず、恥ずかしながら初めて聞き及んだ次第なのです。如何なる接遇・礼節なのでありましょうか? 後学のために是非にご教授願いたい」


「……。(うん? どういう話の流れなのだ? なかなかに予想がつかないのだが……)

 そうですね……、『君臣の礼』はご理解の事と思いますが、其の礼とは乃ち『君主と臣下』を分けて定めた中で、双方の心得を全うし則る規範と云えましょう。

 言い換えれば『君主』と『臣下』の間には、歴然とした上下関係がある事が前提となっているとも言えます。

 一方で『不臣の礼』とは、『君主』が『配下』を上下関係を基にした扱いをせず、特別なる敬意を払い、盟友や師のように接遇すると云う事です。もとより剣聖殿は客将ですので、一概に主従関係のある臣下とは言えませんが、それでも節度と云うものは求められます。

 ですが剣聖殿は我らラルキにとり、大恩ある御仁でもあるのです。また陛下も『盟友であり師でもある』と公言され、頼られるそのような御方に『如何なる由縁で大恩ある剣聖に『君臣の礼』を求め、剰え剣聖殿に其の頭を下げさせて臣下の如く扱えようか?』と仰せになられました。

 そこで遠国の故事来歴を紐解きまして、其れに倣う事にしたと云う次第なのです」


「な、なるほど……。その遠国の故事来歴を記した書? などがあるのでしたら、是非に一目なりと拝見させて頂きたいと願い出るのは、少しばかり烏滸がましいでしょうな……」

【本当にそんな書物なりがあればの話だが……。まぁ、あればあったで興味深いし、無ければ無いでこの後の本題で主導権は握れる】


「ふむ……、書物ですか。

【その存在を疑っているのか? 無ければこれを嚆矢に精神的優位に立とうとする算段か】

 それでしたら、貴公の後ろに在る書棚にありますよ。今持ってこさせましょう。

 失礼します。

『ファナ、人物・事項事典と極典三国志演義第七八巻をここに』」


 指示を出しながらほくそ笑むエミナと対照的に、まさかこの場で当該の書物があるとは想定外であったのか、表情が僅かに変化した。

 その心の在り様は、『書物の内容に、興味が八割』『端緒を掴む事に失敗した慙愧【ざんき/失敗や過ちを反省し、悔いて恥じ入ること】が、二割』と云ったところかとエミナは観た。


 外交を担う者が他国の事柄に興味を持つことは至って必然であり、逆に無関心では交渉相手として不安にも為るというもの。

 自国の国益を第一に考えるのは外交の任に就く者として当然だが、一方で行き過ぎた自国第一主義を強行する愚か者では軋轢が絶えなくなる。それでは廻り回って己の首を絞めているとも言えよう。

 その点を鑑みても、この者は『真面』であると云える。


「ご要望とあれば、同じ内容の物を全巻お部屋に届けさせましょう。後ほど、ゆるりと御覧になられると良いでしょう。但し徹夜して一気に読破しようとするのは、健康の為に御止めになられるのが良いでしょう」


「ご配慮に、感謝いたします」

 私と此の者の間におかれた書を見ながら言葉を紡いでいる。

 中を観たいのでしょうね~~。……ですが、まだですよ。

 まずは、本題に移りましょうか? 

 浅学菲才の我が身なればこそ、その任された務めの『事案』が積み上がってますので、あまり悠長に外交の真似事をしている訳にはいかないのが現状なのです。


「さて、使者殿。本題に移りましょうか。不肖ではありますが、私に何かご要望なりがおありなのでしょう?」


「……そうですね。実は私と親交のある貴族の御当主なのですが――」 


 まぁ、この外交使節団長も、所詮は個人的親交に依拠した付随任務ゆえか気安くも真剣に話してくれた。要するに詩織様との面会予約なのだから、それほど複雑怪奇という訳でもない。

 言うなれば詩織様の胸三寸次第と云える。

 それゆえに、詩織様御本人の意向も聞かねばならないと云う事で、日を改める事としてその場は散開する事になったのだが、巧く事を運ぶために詩織様の『人となり』をそれとなく聞かれたので、礼賛しておいた。


 ――「凡庸な者を即座に『特長がないのが特徴。つまりは全てをそつなくこなせるという事』と言い換える」 また『叱咤』を『才を伸ばす余地が未だ多くあるが故の激励』と即座に言い換え説明されるほどに才覚がある」 加えて『其の武威は云うに及ばず、機知もまた富む』ともなれば、剣聖殿を一言で評するならば「完璧超人」となりましょう――と云った具合にだ。


 更に念押しで付け加える。

 ――「言い換えれば、竜帝を訪ねるのと同じであるとお考え下さい。 

 戯言で逆鱗に触れ、その尾を蹴り飛ばして、見物がてらに会いたい等と軽々に考えてよい御方ではないのです。

 我らは、あの御方お独りで『国崩し・国堕とし』すら行う事が出来ると見做しております。

 如何なる願いがあるのかは私では窺い知ることが出来ませんが、軽挙妄動に逸る事はなさいませぬように忠言致します。もし何らかの不徳の仕儀に及んだり勘気を被れば……滅する事になるのは確約いたします。 それほどの気概と覚悟があるのならば、私も同席し取り成しましょう。 ――と。


 之だけ礼賛しておけば、愚かな真似はしないだろう。


 そして詩織様と使者殿が会談する日となったのだが、使者殿の顔色が悪い……。

 緊張と云うよりも、これは……徹夜もしくはそれに近い事をしていると見受けられる。

 まぁ、なんだ、気持ちはわかるかな……。

 確かにあの書物は、面白いし興味深いのもまた事実なのだから。


 顔色は悪いが、その意識は明確なのか、詩織様との会談でも粗相をするでもなく、件の貴族当主との面会日程を組み上げていったのは、さすがの一言と云えよう。


 詩織様が下がられるのを立礼して見送った後、私にも礼を言われたのは好印象と云えよう。

 その好印象に報いるべく、私からも一言ではあるが、この使者殿に申し送った。


「使者殿、あの例の書物なのですが、求めるならば購入することも出来ますよ?」


 その言説を聞き及ぶや、使者殿は長椅子に崩れ落ちてしまった。

 どうやら門外不出の書物と勘違いしたらしく、滞在期間中に読破しようとしていたようだ。

 なんとまぁ、意識の高い御仁であるかと感心してしまうと共に、故意に伝え忘れていた自分の狭量さを僅かに恥じ入った。

 ……まぁ、三歩ほど歩いたら、その恥じ入る想いも忘れたが……。


 ・

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 そしてグランの大身でもある件の貴族が来訪し、詩織といま現在において大きな応接室内で会談している最中であった。

 礼を失すると承知のうえで、それでも内密に相談したいと云うのは余程の事であろうとその心情を汲んで、詩織は側仕えを壁際にまで下がらせて、膝を突き合わせて密談めいた相談事をしていた。


「もはや、剣聖様の御厚情に御縋りするしか術がありません。何卒、何卒に剣聖様に我が邸にお越しいただき愚息の診療をお願い致したく! 何卒何卒に」


 大領を要している家門の長とも思えぬほどに、焦心している様が痛ましい。

 また大領を要している家門の長ともなれば、正室はもとよりの事、側室も当然ながらいる。

 中には、非公然の愛人や公然の愛人すらいる者もいる。

 必然的に、母違いとはいえ実の子も複数いることになる。

 衛生概念や医療技術が十全ではない多産多死の世界では、家門存続のために採られる方策としては、多産は家門を継ぐ最上の保全策とも云える。

 (もっとも家門存続のための多子ではあるが、それ故にまた別の問題【家督相続】も内包する事になるのだが、それはそれでまた別の話となるのだった。)


 また子沢山は、なにも貴族や名家のみではない。庶民にも通底している事柄であり、農業、商業、手工業にとっても、労働力の供給とその確保という観点からも子沢山は歓迎される。


 だが、子たる当人達にとっては、苦難の途を歩まされることにもなる。

 まず職に就こうにもその職自体がほぼ無いか、固定化している。長男・長女は後継ぎとして期待され、次男・次女は部屋住みとして不慮の際や危急の際の代理としてほぼ自由が無い。

 それ以降の子は、比較的自由ではあるが反面として保障が無い。

 加えて、一程の年齢以上は良く云えば遊学に出される事になる。端的に云えば放逐される事になる。

 このような放逐は名家や庶民問わずに、行われていた。


 翻って、この大領を要していた家門の長も、これまた御多分に漏れず多子であった。

 だが、長引く戦乱で長子、次子が身罷ってしまう。三子は既に他家に入り、四子と五子は早くに夭折、遅くに授かった末氏の六男が奇怪な病魔に憑りつかれたのだ。

 別段、『家督を託せるのが残った六男しか居ない』からと云う切実な算段からの懇請という訳ではない。また六男ゆえに殊更に愛情が薄いという訳ではなく、自他ともに認めるほどに全ての子等に分け隔てなく子煩悩であるという珍しい評判を賜った貴族でもあった。


 そんな子煩悩な貴族が縋り付くように懇請していた。

 事情を聞けば、ある日を境に其の六男は突如、自室に引き籠ってしまったというのだ。

 其れからというもの、顔を合わせる事すらあまりないのだという。

 食事は自室で摂り、用足しも足早に人目を憚るかのように済ませ直ぐに自室に戻る。

 身を清める事も濡れた布で手早くすませ、時折深夜にこれまた人目を憚るかのように湯を浴びているという。

 また着替えも部屋の前に置かせ、汚れ物は自らが洗っているのか畳まれて部屋前に置かれているというのだ。

 またどこからか、香木を調達し部屋で焚きこめているという。

 其れも複数の薫りを調香することもなく焚きこめているらしく、もはや薫りではなく噎【む】せ返るほどの香害の段階に達しているというのだ。

 これが鋼鉄の味や血と土塊の臭さ、戦場の狂騒に中てられて噎【む】せ返るならともかく、香害で噎せ返り、その薫りが部屋の外まで漏れ出て他の者達の目に沁みるという実害まで出始めているというのだ。


 父母のみならず世話役や仕えの者達も、眼に涙を溜めて心を痛めていく。

 方々に手を尽くし、高名な薬師、治癒術師、神官、祈祷師、果ては占い師に至るまで、六男の快癒を願って邸宅に招くも、一向に善い方向には向かわない。

 それどころか、日が経つにつれ香の匂いが強くなっているというのだ。


 話している貴族本人も判らないのだから、それを聞く詩織としても、聞けば聞くほどに訳が分からない。

 病なのか、それとも妖かし【あやかし/怨霊】にでも取り憑かれたのか……。


 部屋から出てこない、香を焚きこめるといった奇怪な行動は見受けられるが、此れと云って奇異な言説はないという。

 ぱっと思い浮かぶ症状が出てこずに困惑している詩織を観て、最後の頼みの綱が断ち切れてしまう不安に苛まれ、涙ながらに窮状を訴えている。その姿は迫真に迫っており、騙そうと云った意図も感じられない。


「剣聖様は、類まれなる治癒の技を体得されていると聞き及びました。何卒、我が愛息をお助け下さい。快癒に我が血肉が必要と云われるならば、いくらでも供します。薬剤が必要となれば万難を排して用意させます。ただの一度、ただ一度の往診で良いのです。其れで不治の病であると診られたならば私もあの子の母も諦めましょう。ですが『一縷の望みを託し、我が子を援けられるならばと願う気持ちもある』のもまた、隠せざる事実。無論のこと謝礼もお望みの物をご用意致します。何卒ご一考の程を願いたい」


 少し離れたところで見届け人として着座していたエミナの耳には、この貴族の真剣さ故に力が籠った言葉が僅かに漏れ聞こえていた。内容をつなぎ合わせると、どうやら嫡子が病に臥せっているらしく往診を頼み込んでいるようだと察する。そこまで言い募られれば、無下に断る事はしないだろうとエミナは考えたが、その予想は当たったようで、詩織は往診に伺うと約束したのだった。


 また病状を聞き及ぶに、出来るだけ早くに診た方がよいとの事で、直ぐに出立する運びとなる。

 但し、この貴族が帰参する際に、同行は出来ないと詩織は言うのだった。

 知識の確認やら調べ物等をしてから、貴族の馬車を追走すると述べたのだ。

 貴族としては、馬車に同乗して邸宅に真っ直ぐ向かって欲しいと懇願するが、詩織は承諾しない。

 余りに無理を押し通そうとすれば、詩織の往診の約束も心変わりされると危惧したのか、貴族が自説を曲げるという刮目すべき事態になり、まずは一足先に戻る事になったのだった。

 そんな不安げな貴族に、詩織は一言申し送った。


「そう不安げな顔をするでない。必ずそちらに伺うので早く戻られよ。日を置かずして妾も追走するが、云うて妾の方が身軽故に、追い越してしまうかもしれぬがな」


 その言葉に安堵したのか、急いで出立していく馬車列を見送ったのだった。


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 伝令の早馬もかくやと云うほどの強行軍で、日夜にわたり馬車を走らせ続けていく貴族の馬車列。

 中には、その強行軍について行けない者達もいたが、後から来いと無慈悲に言いつけ、己等は先を急ぐ。

 そして『世界記録なのでは?』と思えるほどの速さで自らの居城に舞い戻った貴族の当主が眼にした光景と云えば、自らの居城の正門前に佇む剣聖たる天音詩織の姿であった。

 そんな理解が追いつかず常識が擦り減る光景に、目を白黒させて動揺する貴族とお付の者達。

 いつの間に追い越されたのか、全くの不明としか云い様が無い。

 まるで繋がった扉を潜り抜けて来たかのような迅速ぶりに困惑すると共に、詩織が自ら確約した『往診するという約束』と『追い越すという約束』を果たしてくれたことに大いに感激していたのだった。


 そんな困惑と感激に打ち震える貴族当主を奮い立たせて、患者? の部屋まで早速に案内させていく。

 歓迎の宴など後回しで良いと、詩織が言い放ったからだ。

 贅を凝らした歓待や、それを甘受できる立場にいる優越感や己の矜持、面目よりも『まずは往診だ』という詩織に、気位だけが高い有象無象とは『格』そのものが違うのだと実感する。

 そして感激しながら、愛息たる六男の部屋に静かに入室していく詩織の背を見送った。


 それと共に、此の剣聖殿でも『診立て』が付かないとなれば『いよいよの事態も有り得る』と覚悟を秘かに決める当主であった。


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 最初、当の六男は静かに入室してきた詩織に警戒の念を抱いていた。

 だが、部屋の外から父が大声で『その御方は剣聖であり、六男の症状を診立てるべく往診して頂いた』と告げられて安堵する。

 だがそれも束の間のこと、己の実情を知られてしまう事に思い至り、恐れの念がその心中に巻き起こる。

 そんな狼狽している六男を余所に、詩織は有無を言わさずに全ての窓を大きく開け放ち、淀んだ空気を入れ替えていった。


 冷たい外気が部屋に入り淀んだ空気を押し流していく。

 だが当の本人は、未だ気鬱な雰囲気を身に纏い、その心中には不安が渦巻いていた。

 それを察して、詩織は静かに根気よく会話を続けていく。

 罵声を浴びせるでもなく、ただ鷹揚に話を続けるそんな詩織に相対して、六男も徐々に閉ざした心を開き、己の身に起こっている不可解な事象を話し始めたのだった。



「悪友にそそのかされたのです。いつでも止められると。

 初めは興味本位だったんです……。

 周囲の皆からも両親からも、自制心が強い子だと褒められていたんです。

 それに自分で言うのも何ですが、確かに自分は意志が強い方だと自負していました。自惚れもあったんだと思います」


「うむ……」

 詩織は手直にあった椅子に腰掛けながら、話の続きを促していく。


「大丈夫、一回だけなら。いつでも止められるんだからと……。

 たしかに短期間なら我慢もできるんです。

 ですが気が付くと、何故か手を伸ばしているという事が幾度も、幾度も……」


「……」

 先ほどの一瞬での目診で、大体の事を察したが、いまじっくりと目診する事で確信する。

 大体の予想通りの典型的な発言、そして入室した際に感じた微量ではあるが明確な薫り。

 そして、この六男の容貌と顔色。

 これは……。


「これじゃ、いけない。

 もう、こんなことは止めないといけない。

 次は止めよう、だからもう一回、あと一回だけ。これで最後だからと……そう考えてしまうのです。

 そして、いつの間にか……その事ばかり考えている自分に気が付くんです」


 堰を切ったかのように、思いの丈を吐露していく。


「……」


「もう、ずっとこんな状態が続いているんです。

 確かに自分が愚かだったと、今にして思うのです、

 ですが、ですが若さゆえの過ちという事があると思うのです。

 だけど、いつまでもこの状態では……。

 どうしたらいいのでしょうか。なんとかならないでしょうか……。

 親しい友人、ましてや家族にこんな事は相談できません、呆れられてしまうでしょう」


「うむ、まぁ、その……確かに愚かだとは思うぞ。

 またその親しい友人とやらに相談しなくて正解じゃ。

 おそらくは白眼視されてしまう事になるだろうな。

 お主も、己の身に起こった気鬱な事柄で、思い悩んでいたのであろう。

 良くぞ、打ち明けてくれた」


「はい……」

 俯いて顔が見えなくなるが、そのまだ若い体は微かに震えていた。


「さて早速ではあるが、現在のお主の病状とそれに対する治療方針を説明する。また対症療法は……、まぁいくらでもあると言える。

 財貨のかかる療法から、掛からないモノ。即時性のある治療から、長きにわたる治療までな」


「な、治るんですか!?」


「うむ、治ると断言できる」


「うう、治る。これが……治る。ゥウウ」


 よほど不安であったのだろう。

 自分が何か違うモノになっていくかのような不安。

 己の身を苛む苦悶。漠然とした恐怖。それらに唯一人で立ち向かう不安。

 そして幾度も立ち向かいながら挫けてしまう自分。

 日を追う毎に、まるで掌から零れ落ちる砂のように、自分が自分で無くなっていく感覚。

 それら筆舌に尽くし難い想いが、『治ると断言できる』という一言で氷解していく。

 俯きながら手で顔を覆い、膝を着いて肩を震わせながら涙を流していた。


「ゥウウ……、ありがと……う。ゥウウ」


 この六男の胸中に、如何なる思いが生まれたのか……。それは察するに余りある。 それ故に、落ち着くまでは、その感情の赴くままにしておいた。


「失礼しました、剣聖様。我が身の治療を、良しなにお願い致します」


 ゆっくりと立ち上がり泣きはらした顔を挙げて、治療をお願いする六男の表情は晴れやかになっており、落ち着いたのか手近の椅子に腰掛けて深呼吸をしていた。


 之ならば『現状も受け入れられるだろう』と詩織は判断していく。


「うむ、まずお主の症状を端的に述べるならば『小人閑居して不善をなす』と言ったところじゃな。

 本来は――『小人物が暇を持て余すと、とかく悪事に走りやすい』――という意味なのじゃが、お主の場合は――『漫然と時を過ごす者が暇になると、まず碌なことをしない』――という意味に当て嵌まる。

 厳密には違うかもしれぬが、当たらずとも遠からずと言ったところだ。

 それで簡単かつ確実な療法としては、運動しろ。立てなくなるまでな。

 朝起きてから就寝するまで剣や槍を振るうのも良し、一日中走っていても良い。とにかく常に動き続けるのだ。立てなくなるまでな。

 もしくは勉学に励め、禿げる迄な。

 これらの複合も良いだろう。それで自然と治る」


「え? ……そ、そんな簡単に?」


 苛烈かつ過酷な治療を覚悟していたのだが、示された治療が『動けなくなるまで何かをしていろ』という治療法というには、あまりにも簡潔かつ明瞭な治療法に呆気に取られてしまう。


「まぁ、いうほど容易くはないがな……。

 いうなれば、お主は常人よりも『活力と体力』が、幾分……と云うか、大分に有り余っておる。

 つまりは何かに打ち込めるモノがあり、それを極めんと活力と体力を発散させればよいのだ。

 逆に現状では、その打ち込めるモノがないといえる。

 そのため己で『自慰』を行い、情念【パトス】と情欲【リビドー】を解き放ち発散しておったのだ。

 いうなれば常時、自発自噴している状態なのじゃよ。

 おそらくだが、身体の自然な防衛本能に従っているといった所じゃろう。

 自己防衛本能とはいえ、その情熱【パッション】には敬服する」


「自慰? こ、これは自然な事なのでしょうか?」


「まぁ、自然と云えば自然ではあるな。それとて『異常ではないという範疇で、自然な事』という意味合いではあるがな。事の軽重があるとはいえ、年頃の男子であれば、まぁ普通ではあるまいか? と云うて、お主は突き抜けて居るがな」


 平然と恥ずかしがることも無く、淡々と詩織は述べているが、事情を理解できるくらいに知識がある者が聞けば、かなり赤面モノの会話であった。


「そんな……」

 一方で、まるで『火山噴火を解説している』くらいの余りにも平静な云い様に、『今迄、身悶えし苦悶していたあの窮状は一体何だったのか?』と、逆に絶句してしまう。


「もっとも現状では、明らかに情念解放【自慰】のしすぎじゃ。

 気が付いてはおらぬかもしれんが……、頬はこけ、眼は落ち窪み、唇は乾いているが、眼だけが爛々としておるわ。云うなれば『活力のある幽鬼』とも云うべき有様よ。

 そしてその行動指針たるや、まさに野に掻きし猿、野猿よ。いや野猿の王と言っても良いだろう。しかもこのままでは『無力で無知で阿呆な野猿の王』に成り果ててしまうだろう」


「……さ、猿の王……」


「違うぞ、『無力で無知で阿呆な野猿の王』だ。

 なにせ他の者が修練するなり勉学なりをしておる最中に、常時に近い回数で情念解放【自慰】をしておるだ。その間に遅れを取るのは必然。

 それから、活力と体力を発散させようと道を踏み外し、外道に逸るのはやめておけ。

 殊に親の地位や財力を嵩に着て、思い余ってメイドや侍女、街衆の女子を襲おうなど考えるのは、もってのほかだ。

 そのような兇状を行ったならば確実に去勢したうえで、妾がその素首を打ち落とし罪を贖【あがな】わせてくれよう」


「はは……、さすがにそれは」


「戯言ではないぞ? 何故に、お主が自室に引き籠っておったのか理解できるか? その獣の如き危険な活力をお主の理性が無意識に危険と感じ、自らを押し留めていたのだ。また淫臭を隠そうと強烈に香木を焚いたことで、世話をするメイドや侍女の足が遠のき、視界に長く留まらなかった事も幸いであったな。まさに怪我の巧妙と云えよう。あのままだと、遠からず誰彼構わずに襲っていたかもしれぬ」


「そんな……」

 自分が異常な行動をしていると認識してはいた。だから恐れもした。

 人目につかないようにと閉じ籠った。

 だが、それが他者を巻き込む可能性があるとまでは、考えが及ばなかった……。

 それどころか、遠からず凶行に及ぶ未来が観えるとまで言われたのだ。  

 そんな認識が無いままに、まさに崖の際で寝起きをしていた事になる。

 いかに危険な状況であったか思い知らされた。


「情念【パトス】と情欲【リビドー】が溜まりに溜まれば、健全な精神と正常な思考が侵襲され、如何なる外道の行いも『緊急避難的処置だ』と自己正当化し始めるのだ。無論の事、そのような仕儀は『道を踏み外している』といえるが、お主の様に立場なり地位なりがあると誤りを認めようとしない。またお主の周囲の者達も認めないだろう。過ちは無かったことにされ、『悪逆非道な事件』ではなく『不慮な事故』として処理される」


「ぼ、僕はそんな恥知らずな事は、決して――」


「断言できるか? 健全な精神と正常な思考が侵襲されており、真面な判断が出来ないのだぞ?」


「そんな……」


「まさに、此の症状の恐るべきところよな……。

 まぁ、そんなに気落ちするでないわ。 

 無意識とはいえ踏み止まっていたのだから、そこは誇るが良い。

 それに其方を信じた家門の者、そして殊に恥を忍んで懇請した父御殿には深く感謝するが良いぞ」


「はい……」


「と、まぁ……お主の問題自体は、割と容易に解決したのだがな……」

(妾が、御浚い【おさらい/復習】のためとはいえ『心理学・精神医学・生態遺伝学・生態生理学・生体化学・脳神経学・神経内科学』などから、類似症例を調べ挙げた労苦が悔やまれるが、こういう稀有な症例もあると知れた事で良しとしようかの)


「安堵致しました」


「だが、新たなる難しい問題が持ち上がった。

 はてさて、この『自慰』に没頭するべく部屋に引き籠っていた現状を、御尊父殿や御尊母殿に如何様に伝えるべきかの?」


「そ、それは?! な、内密にお願いします。な、なんでもしますから!?」

 思いがけない発言に、ギョッ?! とし、更には羞恥心をいたく刺激されたのか、思わず椅子から立ち上がって懇請し始めた。


「うむ、その言説は宜しからぬの。まるで薄い艶本のような展開ではないか」


「……?」


「まだ理解が及ばぬであろうな。

 その初心な表情が恥辱と羞恥にひき歪み、次いで悦楽に惚け、やがて目眩く【めくるめく】快楽に恍惚としてその身を委ね、身悶え蕩けながら堕ちていく様と云うモノは、得てして好事家にとっては『またとない垂涎の見物』であってな。その発動と云うか鍵となる台詞が『内密にしてくれるなら、なんでもしますから!?』なのじゃよ。

 それ故に、その台詞を軽々に述べる事はいかんぞ。要らぬ危険を招く事になりかねん。 いわゆる禁句という奴じゃな。

 もっとも、妾に其の趣味は無いがな」


「は、はぁ……。有難うございます?」 

 世には『理解が及ばない深淵がある』のだと、自分を納得させる六男。


「まぁ、症例については父御殿は伝えねばなるまいが、母御殿に直接伝えるのは止しておこうかの。

『活力過多で自慰に耽っておりました』と伝えられるのは、流石にキツイであろうからの」


「あ、あの出来れば……、父上にも、その……」


「そうよなぁ……、お主とて『男の子』としての矜持もあるからの。そこは成り行き次第かの?」

 重病や重傷という訳ではないが、重症ではあった。

 そして重症だからこそ、なかなかに伝え難い事柄でもある。

 ましてや『猿王と化しそうでした』とは、猶の事で伝え難い。

 確かに『一考の余地はある事案』と云えるだろう。


「よろしくご検討いただきたく。

 それで、此の症状? は、根治しないと云う事なのでしょうか?

 それと、お伺いした治療方法? は、終生し続ける事になるのでしょうか?」


「いや、恐らくは一定の年齢になれば、自然と心と体の均衡が取れるはずじゃ」


「あの参考までに伺うのですが、即時性のある治療と云うのは如何なる方策なのでしょうか?」


「荒療治となるが『去勢』じゃな。斬り落とせば良いのじゃ。だが、これは御薦めはしない」


「その方策は是非に、却下と云う事で……」


「その方が良かろうて。

 ……ふむ、ところでお主、今の齢は幾つになるのじゃ?」


「え~と、一三になります」


「ふむ、ならば一八になる位には均衡も取れておろう。まぁ遅くとも齢二〇位には落ち着くのではあるまいか? 縦【よ】しんば、時期が大幅にズレたとしても、それで死に至る事は無かろうて」


「……最低でも五年……ですか」


「云うなれば『個人的な激動の時代の幕開け』よな。

 まぁ、そう悲観するでない。

『腕を磨く鍛錬か、才格を伸ばすための刻を過ごす』と考えれば良いではないか」


「確かに、良い方に『考え方と捉え方』を振り切れば、良い解釈と最善の結果が導かれるかも知れませんね……」


 齢一三の若輩の身では、経験も知識も教育も訓練も万全という訳ではない。

 それ故、『毎日、動けなくなるまで鍛錬を続ける』のが良いのか、はたまた『禿げ上がるまで勉学に努める』のが良いのか、いまいち判然としない。

 もしかしたら誤診なのかもしれないが、其れに賭けてみようとも思わない。

 賭けに敗れれば、『猿の王』になってしまうのだ。そんな危険は犯せない。

 また修練をしなければ、これまた『猿の王』になってしまう。

 どちらにせよ、選択の余地が無い。

 『せざるを得ない』という事実が、重く圧し掛かる。


 一方で、我が身は既の所【すんでのところ】で、明白な窮地から脱したのも確かな事実である。

 そして其の事実に『安堵の念』が拡がるのも感じられ、それと共に、この窮地から救い上げてくれた剣聖への『絶対的信頼』が芽生えたのも感じられたのだった。

お読み頂きありがとうございました。

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