(二) 続き
ほんのちょっとだけBL含みます。
「というか、どうしてまた吐いちゃったのさ?」
「シロツメクサ」
「シロツメクサ? 何か関係があったの? なんか、ごめんね」
「俺と、ハクと……母さんで、」
「あ、話すな。話さなくて良い」
急に男口調になるから、男の俺でもドキッとする。いつもはちょっとゆっくりとしてて、女の子みたいに柔らかい口調。いや……女の子でも一部は荒い口調の子は居るか。
「悪ぃな、気ぃ遣わせて」
「いや、こっちもうかつに聞きすぎたよ。ごめん」
「俺は大丈夫」
「そっか」
母さんが死んでから、ずっとこんな調子。俺の母さんが関わる過去の話になるといつもこうだ。ハクは母さんの話をしても良いって言うけれど、時折辛い顔をする。どうしてだか、俺はまだ心が痛くない。あまり辛いって思う事も無い。
「竜斗、竜斗のお母さんの話していい?」
「勿論良いよ」
「どうして竜斗は、お母さんが亡くなったのにあまり悲しいそぶりを見せないの?
無理してるの?」
いつか聞いた警察の言葉を思い出した。あの人、もう三十路は絶対いってるな。
「俺は、何故か悲しくはない。何故かは、俺にも分からんがな」
「そう……」
「無理してるって点については、してないと思うぜ」
「なら良かった」
「……」
「……」
……暗い雰囲気にさせてしまった。そして沈黙……。どうしよう。
パンッ、なんて言う音が、俺等の歩いていた道にちょっとだけ響く。(「パンッ」って言う文字は「パンツ」に見えるから要注意)
「そうだ、今日僕の家泊まらない?」
随分と急だな、と思う反面、この雰囲気をぶち壊してくれてありがとうと思う。
俺は沈黙ととかが超苦手であり、こういう時にどう切り出していいか分からない、ただの少しコミュ障気味の男子だ。
「良いのか?」
「無論、オーケーさ。僕の家に泊まりに来るなんて、何年ぶりだろうね」
「一、二年じゃないか?」
「今年はいっぱい泊まってね、約束だよ!」
「あ、おう、約束……な」
女の子の様な事をしたがるもんだ。まあ、可愛いから良いんだけど。あぁ、俺はこんな女子が居たら多分好きになってた。まぁ、今好きな人居るんだけどね。ハクっていう俺の幼馴染で、美人で、笑顔が素敵な。まぁ、その気になれば男でも良いんだけど(冗談だけど)。
*
何度見てもでかいと思う。何度見ても、綺麗だと思う。
「でけー、きれー、すげー」
「僕の家来るたび言うよね、それ。前も言ってたよ」
なんて言って、隣に居る俺を笑った。いや、俺に笑いかけた。
「そうだっけ。まあいいや、入っていい?」
「うん」
ガチャ、なんていうありきたりな音を出しながら、ドアは開く。
開けゴマ、って小さく呟いた事は、内緒だ。
家の中もまた綺麗なもので、感心する。おまけに蓮の母さんも美人で綺麗だ! 何度蓮の母さんを想像してオナ……なんでもない。でも、このくらいの年の男子は必ず一回はやるものだ。してないだなんていう奴は嘘吐きだ、覚えておくんだな。
「お邪魔しまーす」
「ただいまー」
遠くからはーい、という声が聞こえた。聞いただけでもゾクゾクする、ちょっと高い声。そして何より、この蓮の母さんは……
「いらっしゃい、竜斗くん。蓮はお帰り。今お茶とお菓子持って行くから、部屋で寛いでてね」
胸がでかい!
「はーい。竜斗、早く」
「あ、おう」
蓮の母さんと軽く会釈を交わしてから、俺は蓮の後に続く。
今日も美人だったな。なんてハクから浮気する。ちなみに蓮の母さんの名前は、真見さん。心の中で俺は、真見と呼んでいる。俺の妄想も良いとこだ。気持ち悪いくらい妄想している。蓮にバレてたらどうしようと内心思う。
蓮の部屋に入っていつも思う。
「綺麗過ぎる」
「え、そう?」
「俺とは大違いだぜ」
「僕は綺麗好きだから仕方ない部分もあるのかもよ」
「そうか?」
「うん。というか竜斗さ、僕のお母さんで何回かやったことあるしょ」
「何の事だよ」
「態度見たらすぐ分かっちゃうよ、まあ、良いんだけどね」
クスクスと笑うもんだから、恥ずかしくなる。やっぱバレてたか。
そこに、丁度良いのか悪いのか知らないが、真見が来た。
「はい、どうぞ。ゆっくりしていってね」
「あ、はい」
あんまり綺麗に微笑むから、心拍数が異常なほど上がる。やっぱ美しい。いや、考えろ、人妻だぞ。
「あ、お母さん、竜斗今日泊まってくから」
「あぁ、そうなの、分かったわ」
俺もおじさんとハクにメールで伝えなきゃな。そう思って携帯を取り出した。
「僕さー」
「ん?」
「結構竜斗の事好きだよ」
一瞬メールを打つ手が止まる。
「何急に、告白? 蓮ゲイだった?」
「そうだよ」
「マジか!」
本当にメールを打つ手が止まる。
「冗談だよ」
「冗談かよ……」
「残念だった?」
「ちょっとね」
「そっか」
二人でクスクス笑う。
「まあ、俺も好きかもね」
社交辞令として言っておく。そうか、蓮は俺の事が好きで一緒に居たのか。俺と違ったな。まあ、俺もその気になれば好きになれるってこった。
メール送信、と。
実際今日はおかしなことばかりだ。告白するのが目的だったのかも知れない、と自惚れてみる。
「あ、もう五時だ」
夜の五時。微妙な時間だ。夕焼けはきっと綺麗になってるだろう。
「うーん、じゃあ早めにご飯食べて、早めにお風呂入って、夜いっぱい話そうよ」
「女子かお前は」
ついにつっこんでしまった。
「男だよ!」
ちょっとムっとさせてしまった。やべぇ。
「悪ぃ悪ぃ」
「許してあげるよ、仕方ないから」
なんて言って笑う。俺も、それにつられて笑う。
なんだかなぁ……蓮と一緒に居たら、必ず笑うんだよな。




