第一話 また明日
今日は、いつも通りの一日になるはずだった。
少し変なクラスメイトと出会って、
少しだけ話して、
また明日を迎えるだけの。
ーーその”明日”が、
本当に来るまでは。
俺は、
彼女に三十七回殺されている。
ーーらしい。
少なくとも、
目の前の女子はそう言った。
「......は?」
夜の駅前。
自販機の光だけが、
やけに白く見える。
時刻は23時46分。
夏の湿った風が、
制服の裾を揺らしていた。
「いや、ごめん・
初対面で言うことじゃなかった」
女子は困ったように笑った。
同じ制服。
同じ高校。
眠そうな目。
でも、
見覚えはない。
「えっと......誰?」
「クラスメイト」
「いや絶対違う」
「ひど」
そう言いながら、
彼女は俺の隣に座った。
まるで、
そこが自分の定位置みたいに自然に。
「今日、遅かったね」
「......何が?」
「ここに来るの」
ぞわっとした。
なんで、
俺がここに来るの知ってる?
今日はたまたま寄っただけだ。
「23時39分にコンビニ出て、
いつも炭酸買って、
ここに座るでしょ」
「......え」
「今日は七分遅い」
笑いながら言う。
冗談っぽいのに、
妙にリアルだった。
俺は思わず、
コンビニ袋を見る。
中には炭酸飲料。
確かに、
よく飲んでるやつだ。
「ストーカー?」
半分冗談で言うと、
彼女は少し黙った。
それから、
小さく笑う。
「......できるなら、
そのくらいの方が楽だったかも」
風が吹く。
その言い方が、
妙に引っかかった。
駅前には俺たちしかいない。
遠くで踏切の音が聞こえる。
カン、カン、カンーー。
彼女は、
その音に反応するように顔を上げた。
スマホを見る。
23時49分。
「......まだか」
「何が?」
「今日は、
もう少し遅いんだ」
意味が分からない。
でも、
彼女の表情だけは真面目だった。
さっきまで笑っていたのに、
今は何かに怯えているように見える。
「なぁ」
「ん?」
「本当に誰?」
その瞬間。
彼女は、
少しだけ泣きそうな顔をした。
「覚えてないんだ」
「は?」
「......そっか。
今回は、まだか」
今回は?
言葉の意味を考える。
でも、
その前に彼女が立ち上がった。
「ちょっと待って」
「どこ行くんだよ」
「......は?」
彼女は駅の方を見る。
その視線を追う。
終電が近づいてくる音。
線路の向こう、
遮断機がゆっくり下り始める。
カン、カン、カンーー。
その時。
頭の奥で、
何かが引っかかった。
この音を知っている。
この景色を知っている。
この夜を知っている。
急に、
頭が痛くなる。
「っ......!」
司会が揺れる。
その瞬間。
彼女が叫んだ。
「逃げて!!」
同時に、
背中を強く押される。
足がもつれる。
視界の端で、
白いライトが見えた。
轟音。
ブレーキ音。
誰かの悲鳴。
してーー
暗転。
次に目を開けた時。
そこは、
さっきと同じ駅前だった。
自販機の白い光。
湿った夜風。
制服の感触。
スマホを見る。
23時46分。
「......は?」
心臓が嫌な音を立てる。
ありえない。
確かに俺は今ーー
「......遅かったね」
声。
ゆっくり振り向く。
さっきと同じ場所。
さっきと同じ女の子。
でも今度は、
彼女は笑って今買った。
鳴きそうな顔で、
俺を見ていた。
「......また失敗した」
その声だけが、
やけに静かに響いた。
第一話読んでくださってありがとうございます!
『また、明日。』は、
青春・恋愛・ループを軸に、
少しずつ違和感と伏線を積み重ねていく物語です。
「あの時のセリフってそういう意味だったのか」
みたいな回収をたくさんいれていきたいと思っています。
もし少しでも続きが気になってたら、
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