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俺が通う高校は人外魔境だった  作者: はるゆめ


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ep.63 二日目 十時三十五分まで

 昭和のいつか。どこかにある街。季節は冬。


 ◼️八時十五分


 トーマスさんの呼び出しにより警察署へ。

 瑛子の家を出る前に自宅へ戻ると、両親は県外の叔父さん宅へ行くとのこと。俺の頼み『街で異変が起きたら避難してほしい』を聞いてくれたらしい。


 俺たち『国の嘱託チーム』は、会議室でトーマスさんと県警の偉い人から説明を受け、街の現状を知った。


 仁科が言った通り、プロパンガスやガソリンスタンド、アルミ工場を爆発させた人達。

 証言によるといつもと全く変わらない様子でそれらのことを淡々と実行したとのことだ。

 逮捕勾留後は心ここにあらずといった感じで、取り調べはさっぱり進まないらしい。


 市内での爆破テロ(警察の人はそう言った)は三十ヶ所に及び、警察と消防は息つく暇もなく、病院は運び込まれた怪我人で溢れかえってる、そんな現状。


 俺たちには向日葵(ひまわり)人間の捕獲を依頼され、すぐに街中へ出た。


 向日葵(ひまわり)人間の気配を感知出来て、そのまま対処出来るメンバー、佐藤優子、柚木、王戸ちゃんは単独で。

 瞬間移動出来ない飯田にはみさおさん、一番弱い俺には瑛子とみさえさんが一緒に行動することになった。


「あ」

「本田さん?!」


 三年の本田紗代子さんだ。猫の人。


「にゃはは。猫も今回ばかりは傍観しないんだ」

「私らは住み慣れたところがなくなるのは困るからねぇ。新しいとこへ引っ越しなんてしようものなら、そこに慣れるのに何十年もかかるし」


 猫ってそうなんだ。


「えっと、例えるなら向日葵(ひまわり)みたいな人間を見かけました?」


 すっと本田さんの瞳孔が縦長に細められる。


向日葵(ひまわり)……?あぁ確かにそう見えるね。一匹だけ」

「どこで?」

「昨夜ね、私が帰宅してる途中でさ。すれ違ったサラリーマンみたいなおじさんがね」


 道端でか。


「急に抱きついてきたと思ってたら姿が変わってね、あの気色悪い顔くっつけてこようとしたから首チョンパしといた」

「本田さんを狙って……?」


 警察署で受けた説明と併せて考えると。

 本田さんがプロパンガスで爆破、本田さんがタンクローリーを爆破、本田さんが工場を爆破……ピンとこない。


 嫌な想像。

 本田さんが猫本来の力で、たとえば人がたくさんいる場所で暴れ回ったら?


「本田さん、同族の人はどれぐらいいますか?」

「え?う〜ん、この街には十人ぐらいかなぁ」

「えっと、皆さん、向日葵(ひまわり)人間なら撃退出来ますよね?」

「う〜ん……どうだろ?私は同族の中でも強い方だけど、私より弱い子はいるよ?」

「その人たちと連絡取れます?」

「私たちはさ、君と一緒にいるイタチやそこの狐みたいにつるまないんだよねぇ」


 この街にいる吸血鬼、イタチ、狐を狙わず猫を狙った理由!


「その、猫の皆さんの住所は知ってるんです?」

「皆は知らないよ」

「お兄ちゃん、私が気配を探るから」

「瑛子頼む!」


 ◼️十時三分


 みさえさんも一緒に三人で移動。

 ここは……ショッピングセンターの近くだ。

 爆発騒ぎの影響もなく、駐車場は車で混雑し、買い物客で溢れてる。


「あの子!」


 商業の女子生徒がショッピングセンターの入り口へ向かって歩いていた。

 背が少し低くて華奢な感じ。

 俺たちは急いで近寄る。


 その子の手。

 本田さんと同じ。

 毛が生えて爪が長くのぞいてる。


「みさえさん!」

「あいよ」


 みさえさんが後ろから抱きつき、大声で


「にゃーははは。こんなところでサボってちゃダメにゃー」


 とわざとらしく知り合いを装い確保した。

 上手い!


「シャアッ」


 その子はみさえさんを威嚇するも、瑛子が首に人差し指を当てると力が抜けたようにおとなしくなる。

 そのまま立体駐車場の柱の陰へ移動。


「この子、トーマスさんとこへ連れてく」


 瑛子がその子と一緒に一瞬だけ姿を消し、すぐに現れる。


「吸血鬼の人達も狙われたって。もっともこの街に入った人達は素人じゃないから、大丈夫みたい」

「狐も心配いらないよ。未熟な子はそもそも人の街には行かせないから」

「片っ端から猫の人を当たりましょう。瑛子頼む」



 ◼️十時二十一分


 猫の人は本田さんと最初に確保した子以外に全部で七人、二人はうちの高校、四人は商業、一人は中学校。  

 幸い全員無事だった。


「なんで皆学生なんです?」


 本田さんに訊いた。


「ヒトの社会を学んでヒトの中で暮らしていくのに高校ぐらい出ておかないと困るでしょ?」


 現実的な理由だった。 

 年老いた猫の大半は街を離れ人里離れた山奥とかで暮らすらしい。 


「だからこの街には年若い猫しかいないんだよねぇ」

「猫は自由人だにゃ。私ら狐は里を作って暮らすよ」

「山田、あんたその語尾マニアっぼいよ?」

「私はアニメと漫画を愛するマニアだから〜」


 猫と狐、かなり社会が違う。ま、猫科と犬科じゃ違って当たり前か。


 本田さんとみさえさん二人が揃って警告し、他の猫には一時的に身を隠してもらった。

 力がそこまで強くない猫でもその気になれば人間は容易く八つ裂きにされる。


 俺たちが間に合わなかったら、ショッピングモールで大量殺人事件が起きるとこだったわけだ。


 向日葵ひまわり人間どもはどこだ?

 焦っていたらポケベルの電子音がけたたましく鳴った。


 ◼️十時三十五分

当時(1980年代後半)オタクという言葉はありませんでした。ファンの行き過ぎた人はマニアと呼ばれていたのです。


以前投稿した短編を不定期更新で連載します。

よろしければご覧ください。

公爵令嬢は王国の戦女神

https://ncode.syosetu.com/n8646jp/

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