22話 ハデスがちゃんと仕事をしていたのが怖い
「熱いですね」
そう言いながらリーナが俺の隣を歩く。
ここは地獄と言っても最も地上に近い場所、軽い罪でここに落ちてきた人たちが生活して罪を償う場所。
みんな笑顔を浮かべて農作業をしていたりするほどだ。
「ここが地獄なんですね?」
「そうだな。始めてくる地獄はどうかな」
「なんて言うか意外と普通、ですよね」
「普通、か」
「だって、みんな普通に生活してますし」
そんな光景から目を逸らし団子屋のベンチに目を向ける。
そしてそこで待たせていた奴に声をかける。
「ようハデス。元気にしてたか?」
「元気元気っすよ!」
そう答える彼女の顔に疲れは見えなかった。
ベンチから立ち上がるとビシッと敬礼する。
「本日もリオン様から帰還するという伝令があったので体を洗って待っていたっす!」
「何故体を洗う」
少し笑って答える。
「初めは立場だけが狙いだったんすけど、最近気付いたんすよ。この人本当は優しい人なんだろうなって。だから私で良かったら隣に立ちたいと思ったんすよ。そのためにはチラッ」
いつものように俺の下半身に目をやる彼女。
「その言い方だと今は優しくないみたいな言い方じゃない。リオン様はいつだって優しいんだから!」
ハデスの言葉にエリーが噛み付いた。
そして言い合う2人を首を横に振って止めることにした。
「ハデスはこんな奴だ。理解していてくれエリー」
「分かった」
渋々といった感じで下がるエリー。
「それよりハデス。独房の準備は出来ているな?」
「出来てるっすよ」
まさかちゃんとしているとは思っていなった。
嵐でも来るのか?
「私が地獄の住民Aになっちゃう原因を引き起こした張本人なんすから超特急で作らせたっす」
そう言って彼女は俺たちの案内を始めた。
やがてたどり着いたのは何も無い空間。
そしてそこに
「リ、リオン?!」
俺の名を読んでくる五体満足のローエンがいた。
「ようこそ地獄へ」
そう言ってから檻に近付いた。
「ここはどこですか?リオン、出してください」
「そりゃ無理な相談っすよ」
その質問に答えるのはハデスだった。
「あんた罪を重ねすぎたっす。ここで───────永遠に苦しんでもらうっす」
そう言ったハデスの顔は威厳に満ちており、同時にかつてここの神であったと思わせるだけの迫力があった。
「え、永遠に?!」
柵を掴んで凄んでくるローエンの姿が見える。
しかしそれに意味は無い。
「あんたはここから出られないっす。出られるのは罰を受ける時だけ」
そう言ってハデスが業務をこなす。
指をパチンと鳴らすと頭には角があって、棍棒を担いだ赤く大きな体の鬼が虚空からヌッと現れた。
「お呼びですか〜?ハデス様ぁ♡」
「………」
それを見て無言で後ずさった。
そいつは俺を見て目をハート型にさせた。
「あらっ可愛い子。でも今は仕事だわねーん」
そう言いながらそいつはローエンの柵を粉砕した。
「ひ、ひぎぃぃいい!!!!」
叫び声を上げるローエンの服を破ると………後は見ていられなかった。
終始悲鳴を上げるだけのローエンを好きに弄び、やがて
「これが地獄の罰よ〜ん」
そう言いながら取り出すのは大きな包丁。
それでザンザンザンザンザンザン!!!!
「うぎゃぁぁあぁぁあ!!!!」
全身から血を撒き散らしながらローエンが切り刻まれていく。
まるで野菜のように。
「終わったわよハデス様」
「ご苦労兵士長」
これで終わりなのか立ち去り始めた兵士長と呼ばれた鬼。
「これが地獄っす!」
そう言って仁王立ちするハデス。
「いろんな意味で中々厳しい世界だな」
「そりゃそうっすよー現世での罪を認識させ反省させるのが地獄っすからー。私を住民Aにする原因を作ったのまだ許してないっすからね。お仕置は私に任せて欲しいっす」
そうやって会話をしていた時だった。
「うぅ………」
呻きながら牢屋の中で立ち上がる人影があった。
ローエンが蘇生を果たしたのだ。
「な、何故私は………ぐ!」
膝を着いて体内のものを吐き出すローエン。
「目覚めはどうだ?」
そいつに話しかける。
「私は死んだのでは無いのですか」
「残念。お前は死ねないんだよ」
「なっ………馬鹿な………」
「死んでも蘇生し無限に罰を受け続ける。それが今のお前だ」
そう告げると俺の顔を見て絶望の表情を浮かべるローエン。
「なっあなたの復讐は………終わったのでは………」
「むしろここからが始まりではないか?」
そう言うとこの地獄の説明をしてやった。
「なっ!では私は無限に苦しみ続ける、と?!」
「あぁ。それと1つ贈り物がある」
そう言うと俺はスキルを使いとある存在をここに呼び出した。
そうして現れたのは
「ク、クロエ」
かつての家族にローエンが呼びかけるが
「私の名前を気安く呼ぶな!このクズが」
そう叫んでローエンを睨んだ。
その対応に目を左右に泳がせるローエン。
「ク、クロエ?」
「最悪だなお前」
クロエは牢屋に近付いてローエンに向かってそう言い放つ。
「お前無実の師匠を裏切り殺したらしいなローエン」
その言葉には確かな怒りが込められている。
「そして、私達はお前のせいで殺された。お前のせいだ!お前が初めからあんな汚い金に手を出そうとしなければ!」
彼女がそう言った時他の数人の浮浪者も現れた。
「裏切り者のエセ神父が」
「裏切り者のローエン」
浮浪者達がローエンに向かってそう言い続ける。
「え?」
「お前のせいで俺達は死んだ」
「そうだそうだ。全部ローエンのせいだ。何が俺達を救いたいだこの嘘つき野郎が」
固まるローエンに次々に言葉を浴びせる男達。
しかしやがて
「あぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
叫び声を上げた。
「何ですか?!ここは?!本当に地獄だ!この人達がこんなことを言うはずが!」
「これは現実だローエン」
俺はそう言うとクロエにそして、ここについでに呼んだ浮浪者達に剣を持たせた。
「ローエン」
「覚悟しろ」
「お前のせいで俺達は皆殺しだ」
彼らはそれぞれの言葉を吐いてからその剣を持ち、ザンザンザン!
ローエンの四肢を切り落とした。
「ぎゃぁぁぁぁぁあ!!!!!」
芋虫のように地面に倒れたローエンに目を向けてから俺は口を開いた。
「お前はここで永遠に罪を責められる。決して癒えぬ苦痛を、俺と同じ苦しみを味わうがいい」
そう吐き捨ててエリー達を連れ俺はこの場を去ることにする。
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