21話 一人地の底へ
俺はローエンをゴミのように地面に投げ捨てた。
「がっ!」
「思い出したか?全部。お前たちが俺にしたことのすべて」
マフラーをもう一度鼻の辺りまで戻すと話し始める。
「どうして、こんなことするんですか?!サイ!」
ガッ!とその顔に蹴りを入れる。
「げふっ!」
「その口で話すなクズ。今宵───────ここにお前の神は在らず」
そう言い胸ぐらを掴むとその顔を覗き込む。
「ずっと待っていたのだこの時を、お前をこの手で粉砕出来るこの瞬間を」
「はぁ………はぁ………謝罪します」
「そんな言葉要らない。俺が欲しいのは」
ザン!
ファイア剣でもう片方の足も切り落とす。
「ぎゃぁあぁぁぁあ!!!!!!」
「お前の絶望だけだよ」
しばらく叫んだ後痛みが引いてきたのか涙を流して俺に声をかけてくる。
「ゆ、許して下さい………許してください許してください………はぁ………はぁ………」
そう言いながら必死に残った両腕で俺から1歩でも遠く離れようとする。
「何故許す必要がある?」
そう言うと俺は木陰に隠していたとあるものをローエンに向けて放り投げる。
「ク、クロエ?!クロエにまで手を出したのですか?!」
クロエも麻薬の件を知っていてこいつらの村にいた。
俺と別れた後にスラムに麻薬を売りに行くのを見た。そして中毒者達を見てほくそ笑んでいたところも。
「それがどうした?俺がお前たちが麻薬を製造していたのを知らないとでも思っているのか?俺は麻薬を作る奴らが憎い。どれだけの幸せを穢れた金のために奪ったと思っている?死んで当然だろう?」
「麻薬くらいで殺しますか?!貴方を本心から師匠とまで呼び慕っていたのですよ?!」
くらい、か反省の色は微塵も見えないようだ。
「俺の親友は麻薬で死んだ。それにお前らは完全に無罪のティアラにまで手を出しただろう?」
彼女も頷いて無言でローエンを睨む。
「最低ですよね。たかが汚れた金のためにリオン様どころかティアラ様にも手を出すなんて」
「ほんとよね。自分達から手を出しておいて自分のものには手を出すなって都合良すぎ」
その後にリーナ達も罵声を浴びせる。
「あ、あれは貴方がスキルを所持していないから!」
「俺のせいか?俺がスキルを持っていなかったせいか?」
髪を掴んで俺の顔を見させる。
「俺は何年も前からお前たちに脱退することを話していた。だがお前たちは俺を抜けさせることは無かった。穢れた金のためにお前らは俺を盛大に裏切った。俺はお前の今感じている絶望を感じたよ」
そう言って残っている右腕を切り落とす。
「がぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
叫ぶローエンを見ずにリーナに目をやった。
「リーナ、死なせるなよ。回復魔法を」
「はい」
そう答えてリーナが死なない程度に回復魔法をかけ続ける。
「も、もう許してください………私が悪かった………です」
「許されたいか?」
視点の合っていないローエンに俺を見させる。
「はい………死にたくない………リオン私はあなたを信じていたのに………私を孤立させたのは貴方の狙いですか?」
「そうだ。お前にあの時の俺と同じ絶望を感じさせたかった。他に行く場所もないのに最後の場所からも追放される絶望感」
そう言い俺はローエンを引きずると穴のすぐ側に置いた。
「あの時と同じだ。お前に選ばせてやる。どちらを選んでもお前は地獄行きだがなローエン」
この穴に落ちればどんな聖者とて地獄行きだ。
それはティアラが証明してくれた。
彼女が何をした。
何もしていない。それなのにこいつらは。
冷たい地の底で不安を抱えながら一人過ごしていた。
「か、神よ………」
しかし奴は何も選ぶことなく胸に提げた十字架を残った1本の手で握り始める。
「早くどちらかを選べよ偽りの神父。誰かが助けに来るかもしれないとか期待しているか?そんなものは現れない」
「これは報いですか?」
ヒューヒューと呼吸音を鳴らして俺を見るローエン。
「あぁ。報復だ。お前達は俺の全てを奪おうとした。だから今度は俺がお前達から全てを奪ってやる」
「………はぁ………」
「お前の大切な人達と地獄で再開出来ると思うなよ?浮浪者達はお前が行く地獄とは別の場所に向かうだろう」
地獄にもいくつか種類がある。
こいつほど罪の重くない奴らはそれほど苦しませないつもりだ。
「………」
「さぁ、選べよ」
そう言うと奴は残った最後の1本の腕で自分を抱こうとした。
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、死にたくない、生きていたい」
「そうか。なら俺が選んでやる。癒えぬ苦痛を、貴様に与えてやる」
そう言って俺はローエンの首を掴むと穴の上で宙ぶらりんにする。
「はぁ………はぁ………もう………許して………ください………もう十分絶望した。私にはもう帰る場所なんてない………ヒュオン達にも切られて、1番信用していた貴方にも裏切られた。もういいでしょう………ははは、私はもう一生晒し者だ」
「許すかどうかを決めるのはお前じゃない。それは理解できるな?」
俺はそう言うと指の先に込めていた手から力を抜いた。
「えっ………」
「俺が貴様を救うとでも思ったか?ローエン」
穴に、地獄に落ちていくローエンの顔はこちらを向いていた。
その瞳からは涙を滝のように流して俺に謝る。
「ご、ごめんなさい………私が悪かった………助け………」
「誰が助けるか」
そう吐き捨てて俺は穴から遠ざかる。
「ぎゃぁぁぁあぁぁぁああ!!!!!!」
背後から悲鳴が聞こえた。
「まずは1人」
そう呟いて俺はエリー達に目をやった。
「死んで当然だよね。あんな奴。麻薬まで作ってたなんて」
「そうですよ。何もしていないティアラ様にまで手を出すなんて許せませんよ」
静かな怒りを感じさせる声でそう呟いたリーナ達。
「もちろん、素敵でかっこよくて世界で一番お優しいリオン様に手を出したことも許されません。何を考えているのでしょうね」
そう言ってくれるリーナを見る。
俺は信頼出来る仲間を持ったんだな。
そう思いながら全員を見回す。
「とりあえず地獄へ向かおう」
俺たちは穴から飛び降りるのではなく俺の能力で地獄へ向かうことにした。
ハデスの奴が怠けていないか見に行かなくては。
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