20話 俺と同じ景色を
「それは酷いですね。リオン様は何も悪くないではありませんか。許せないです!いつも清く正しいリオン様にそんなことをするなんて………その復讐お手伝いできること非常に光栄に思っています」
「ほんと、あいつらなんてことを!」
俺はタイミングもいいかと思って正直に今までにあったことをエリー達に話した。
二人とも俺に同情してくれた。
それからしばらくした時だった追放されたローエンが俺の宿を訪ねてきたのは。
「という訳で追放されてしまいました」
「それは大変だったな」
ただ、腕を組んで話し終えたローエンを見つめる。
別に報告されなくてもそんなことは知っているが、そう思いながらローエンの次の言葉を待った。
「私が違法薬物を育てていることは既に王国中に広まっていました。そんなことしていないのに………」
ぐっと拳を握りしめるローエン。
どの口でそんなことを言っているんだろうか。
「私があの辺境の村で浮浪者達と麻薬を作成していた、そして彼らは殺されたのではなくもう必要なくなった私が殺したという噂まで流れていました」
「あんまりだな」
一応同情しているような言葉を口にしておく。
「ここにはそんな噂信じるやつはいない。楽にしていくといい」
「っ!」
そう言うと面食らったような顔をしたローエン。
その後に涙を流し始めた。
「か、感謝しますリオン………神は私を見捨てていなかった」
「そうか。仲間だからな」
そう言ってから俺は本題を切り出すことにした。
「その噂を広めたやつを特定しよう。そうすればお前の悪い噂は無くなるはずだ」
「リ、リオン。そこまで手伝って頂けるのですか?」
「【仲間】が困っているんだから当然だよな」
そう言ってからエリーに石版を用意させた。
この石版は魔力を書けば字を書けるといったもの。
「先ず分かっていることをまとめていこう。とは言え噂を流したのはあの仮面の男だろうな」
「男は仮面をつけていてボロボロのマントをまとっていました」
そう言ったあとに黙り込んでしまうローエン。
ふむ。
やはり出す情報が少なすぎたか。
これ以上の情報は聞けそうにないし切り口を変えてみることにしよう。
「お前の話を聞く限り仮面は相当お前を恨んでいるようだが何か心当たりは?」
「あ、ありませんよ!そんなもの!私は神の使徒!そんな恨まれるような行動しませんよ!」
念の為聞いてみたが罪の意識もないらしい。
ティアラに目をやった。
「………」
黙って両肩を上げるだけだった。
恐らく彼女もこう思っているだろう『救えない奴だ、と。罪を認識していない』そう思っているはずだ。
それを見てからローエンに話しかける。
「以前仮面の男と交戦したという話はしたな?」
「えぇ。貴方が腹に傷を負った時の話ですよね?」
「その時に盗賊としての悪い癖が出てね」
そう言いながらアイテムポーチからとあるものを取りだした。
「手紙?」
「あぁ。妹からの手紙だ。いつも育ててくれていることを感謝する手紙で、今夜久しぶりに出会うそうでな、そこに乱入しようかと考えていたところだ」
「私も連れて行ってくれますか?」
「いいよ」
そう言って俺たちはローエンを伴ってあの場所に向かうことにした。
俺とティアラが地獄に落ちた場所だ。
その道中も話を続ける。
「前に話したよな。俺が冒険者になった理由について、あれ、実は恋人ではなくて殺されたのは妹なんだよ」
「私と同じなんですね」
何やら同情しているらしいローエン。
お前に同情などされたくないが、そう思いながら話を続ける。
「昔話でもしようか。その男はパーティに冒険者として所属していたんだ。何のスキルもなくてな。冒険者ならばスキルを持っていて当たり前の時代だ。足を引っ張っているのは自分でも理解していた。だからこそ努力をやめなかった」
そう言って鞘に入ったままの剣を手に取ると、ブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブン、と何度も何度も剣を素振りした。
その剣筋を見て何か引っかかったような顔をするローエンだったが答えには辿り着けないらしい。
「でも離される実力差。男はそれに気付いて脱退しようとした。しかし誰もがそれを止めた。一緒に頑張ってきただろう、と男はその言葉に救われた」
俺は脱退関係についてはあまり強くこいつに話していないからピンと来ていないらしい。
「いい仲間ですね」
「そうだよ。いい仲間だった」
そんな会話を続けていたらあの大穴の前まで辿り着いた。
「こ、ここは………」
ようやく何かに気付いたらしいローエン。
俺の方を見てきた。
「良かったなローエン………俺たちの再開に立ち会うことが出来て」
ザン!
ファイア剣を作り出してローエンの左足を切り落とす。
「がぁあぁあぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ローエンの絶叫が森に響いた。
芋虫のように地面に倒れて自分の左足の切断面を抑えようとしている。
俺も痛い場所があればやる行為だ。
「あぁ………あぁ………どうして………リオン」
しゃがみこんでローエンの髪を掴んで自分の顔を見させる。
そんな中頑張って口を開いたローエンを囲むエリー達。
「クズ」
「そうですね。死ねばいいのに」
エリーとリーナが口を開いてそう罵倒する。
その顔には憎悪が浮かんでいた。
「はっ………?」
その言葉を受けて首を傾げるローエン。
「だが男は裏切られ殺された。何故?答えは汚い金を欲しがったメンバーに殺されたんだよ。そこの穴に落とされてな」
「ま………まさか………」
ローエンが目を見開いて俺を見てくる。
その1本しか残っていない足はガクガクと震えていた。
それを見ながら俺はアイテムポーチからとあるものを取りだした。
「そ、その仮面は………」
「見覚えあるか?この仮面」
そう言って仮面を被る。
そうしてから俺は彼女の名前を呼んだ。
「───────シェラ」
「はい」
彼女は答えて俺の横に並んだ。
そして今まで被り続けていたそのフードと眼帯を外して顔を露わにする。
「シェ………シェラって………」
その名に聞き覚えがあるのかローエンは顔を上げて俺の目を見た。
「俺の妹だよ」
「な、なら貴方は………」
ようやく気付いたらしいローエンに笑う。
「くっくっくっ………はっはっはっは………」
「だ、誰か!誰かいないのか?!こ、殺される!!!」
ローエンが叫ぶ。
「はーい。ここにいますよー」
「た、助けてくれ!殺されようとしている!」
ローエンが声の聞こえた方に顔をやる。
しかしそこにいたのは
「あぁ………」
「なーんて人が来ると思いましたか?おバカ様ですね」
クスクスと笑うリーナの姿。
「そうだよ。ここは人が来ない。あなた達がここでリオン様を殺すことを決意したように、ここには人が来ない」
そう言ってローエンに近寄るエリー。
「あがっ………」
俺はローエンの首を掴んで持ち上げる。
宙ぶらりんになったローエンはそれでももがこうとするが
「がぁっ!!!」
「痛い?」
ザシュッ!
俺はローエンの頬を切りつけた。
「俺はもっと痛かったけどな」
「あなたは………」
「まだ分からないのか?シェラが妹ということは俺はシェラの兄になる」
そう言いながら俺は鼻まで隠したマフラーに指を当てた。
そしてそれを掴むと
「この顔に見覚えがないか?とは言え髪をかなり切ったから気付かないかもしれないが」
そう言いながらマフラーを下に下げてその顔を顕にした。
「!や、やはりサイですか………な、でも、どうして………あなたは死んだはず………」
目を見開いて俺を有り得ないものを見るような目で見てきた。
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