16話・自分の強さ
目の色が違う。
言ってしまえば、それだけ。
人間だって目の色は人種によって違う。
目の色どころか髪、肌の色だって。
だからその程度だと思っていた。
「ウオオオオオオンッ!」
「っ、速い、ですっ!」
ウルフマンの咆哮。
空気が振動し、僅かだが動きの初動が遅れる。
恐らくそういうスキルなのだろう。
ウルフマンが個体によって時折持つスキル。
このスキルを受けた時、無理に動こうとするのは得策ではない。
硬直時間が伸びて、動きの精度が落ちる。
何度も戦っているので俺は知っていた。
しかし、凛音は違う。
彼女は強引に動きウルフマンへ斬りかかる。
まずい、早く加勢しないと。
そう思って剣を–––いや、待て。
これは絶好のチャンスだ。
見た所、他にモンスターはいない。
索敵にも反応は無いようだ。
索敵は便利だが、使うと魔力が減り続ける。
なのでさっきは丁度索敵をオフにしていた。
そこを狙われたが、今度は大丈夫。
奇襲するにもそれなりの距離が必要だ。
ウルフマン一体なら楽に倒せる。
なので、ここらで確かめよう。
俺以外……調達班の戦闘は、どんなものなのか。
勿論危なくなったら直ぐ助ける。
「ふっ、はっ!」
凛音の刀がウルフマンを斬り裂く。
が、ウルフマンはそれをギリギリで躱す。
両手の爪でカウンターを狙っている。
彼女もそれは分かっているのか、深く踏み込み過ぎず、適度に距離を保って攻撃を加えていた。
しかし、そのせいで決定打が足りない。
攻撃が当たっても擦り傷程度。
刀のリーチがある分、凛音の方がやや有利か。
けれど、体力はウルフマンの方が優っている。
長引けばどんどん、凛音は不利になるだろう。
「高橋くん、君は戦わないのか!?」
「いえ、ウルフマン程度なら凛音一人で大丈夫かと」
「それはそうかもしれないが……」
伊藤さんも、ウルフマンの強さの認識は同じ。
ただ、だからと言って凛音一人に任せる理由にはならない。
「伊藤さんは、南雲さんや木村さんを見て来てくれませんか? 合流するのに少し遅過ぎて、不安です」
「……む、確かにそうだね」
これは本当だ。
幾ら何でも遅すぎる。
何かあったと考えるべきだ。
「分かった、私は二人を探してくる」
「お願いします」
そう言って伊藤さんは去って行く。
残ったのは、俺と凛音。
彼女はウルフマンと戦いを続けている。
俺が加勢しない事に、文句は言ってこない。
「ワオンッ! グ……ルアアアアッ!」
「またっ……!」
ウルフマンは動きを鈍らせる咆哮を放つ。
肉薄していた凛音は、咄嗟に逃れようとする。
ガクンと、ゲームのバグのように固まる凛音。
頃合いだな……
俺はウルフマン目掛けて走り出す––––その時だ。
「ウオオオオオオオオオオオオオッ!」
な、何だ!?
突然、ウルフマンが聴いた事の無い咆哮を発する。
その瞬間、ウルフマンの体が銀色に発光した。
何だか嫌な予感がする!
俺は強引に、凛音とウルフマンの間に割って入った。
「と、突然何ですか!」
「ごめん、後で謝る。今はちょっと、危ない」
「……ルルゥ」
眩い閃光が数秒続く。
終わった時、ウルフマンの姿が変わっていた。
全身の体毛は逆立ち、爪も牙も鋭く。
更に銀色のオーラを纏っていた。
「おいおい、聞いてないぞ……」
「グルアアアアアッ!」
「っ!」
殆ど勘で剣を構える。
丁度そこに、ウルフマンの爪が振り下ろされた。
恐ろしいスピードだ。
本来のウルフマンが成せる攻撃ではない。
理由は不明だが、ウルフマンは強くなってる。
これは本気で戦った方がよさそうだ。
「いくぞ……!」
まずはウルフマンの正面に剣を振り下ろす。
当然あっさりと避けられるが、読み通り。
踏み込みの勢いを利用して回転蹴りを与える。
が、これも避けられた。
ウルフマンは爪を交差させながら攻撃してくる。
回転の影響で避けられない。
なので、爪が迫る直前に剣で振り払う。
そのまま体当たりをしてウルフマンの体勢を崩す。
「グルアッ!?」
「まだだっ!」
体当たりで前のめりになった。
右手を突き出し、持っている剣で突き刺す。
ようやく命中した。
剣の切っ先が、ウルフマンの肉を抉る。
「……早すぎて、割って入れない……」
ポツリと凛音の声が聴こえる。
だが、今は気にしてられない。
剣を引き抜き、連続攻撃を仕掛ける。
ウルフマンは必死にガードするが、こちらも反撃の隙を与えないよう、丁寧に攻撃を加えていく。
考える暇なんて与えない。
圧倒的な速さと力で、押し通す……!
「う、らあああああああああっ!」
「グルアアアアアアアアアアッ!」
そして––––ウルフマンは、血を流しながら倒れた。




