臓器*トラックに引かれて異世界きたらクリーニング屋(僕の臓器は蜘蛛の糸となるか)
僕はトラックに引かれて異世界に来ていた。
また、これかと思われるかもしれない。しかし異世界はもう飽和している。
トラック界でも有能な若年者を異世界送りしないように対策がとられはじめた。
まず始めたのが大型トラックには必ずAEDと新鮮な臓器をそなえつけた。
いつでも心停止や臓器移植に対応できるようにだ。
それが仇となり始めた症例として僕が報告された。
トラックとの衝突の際に移植用臓器がぼくの気管に陥入したのだ。閉塞したのである。低酸素の場合、脳の血流は最後まで保たれるのだが、僕の場合は絶妙なタイミングでAEDが使われてしまった。
つまり高度低酸素脳症により脳死の状態だがAEDとトラックの訓練された心肺蘇生により臓器は保たれた。
かわりに僕の臓器が移植用臓器になったのである。
異世界に転生されたとき私はまず、自分の臓器があることを確認した。
そして異性界でクリーニング屋をはじめたのである。
異世界ではクリーニング屋はとても重宝されると思われた。
ダンジョンでは強力な装備は必須である。つまり装備のメンテナンスを請け負うのである。
異世界には頑固な汚れがある。スライムの体液。ドラゴンの火による焦げ付き。黒魔法汚れ。
それぞれ、汚れをとるのにコツが有るのだ。たとえば油汚れは油に溶けるように魔法汚れは魔法に溶ける。
しかし、異世界から転生してくることは何のメリットにもならない。
まず、異世界になれるのが大変だ。一年ぐらいかかった。もちろん魔法とかあるし、知識、経験はなにより常識や物理法則すらあてにならない。
そもそも異世界の人間のほうが優秀である。彼らはトラックでひかれても死なない。
その割に彼ら異世界の住人は馬鹿である。魔法なんかあったらダンジョンで魔物と戦って宝物を求めたりしない。そんなことより魔法でタービンを回したほうがいいだろう。
彼らは本気でないのだ。まるでいやいや下手くそな脚本家につきあって演技しているような。嘘くささがある。その割にモンスターやダンジョンの罠は本気で人を殺しにかかっている。
この世界はもしかして地獄の一形態ではないのだろうか。蜘蛛の糸をもとめてむらがる囚人の一人が私なのだ。洗濯のり片手に。
皆を地獄に落ちないように僕の臓器ががんばっていることを祈る。




