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37.人待ちと恐怖体験:危


ちょっとだけ勢いの小さくなった焚き火に木を放り込んで、まだだろうか、まだだろうかとじりじりと燃えていく火を眺める。追加した木の先端からゆっくりと燃え広がる火が時間の経過を表しているようで、中途半端な恐怖が体を支配した。

実際のところ、全面的に押し出された恐怖、というのはなかったりする。よく分からない動物への恐怖なんて持ち続ける事なんてできない。どれだけ思い出そうとしても、鎌首もたげた蛇とか蜂くらいしか野生の恐怖に縁がなかったわけで。野良犬も昔は凶暴だったらしいけど、今じゃ大人しい物くらいしか見ることもできないし。

「怖いんだか怖くないんだか」

誰も居ないのに口を開くのは怖がってる証拠なのかな?無意味に自己診断を下しながら火のついた長い棒をくるくる回した。


カサッ


ちっちゃい、本当に微妙な音だったのに思わず過剰反応。あああ、やっぱり怖いですすみませんレームさん達早く帰ってきてええええ!未知なるモノへの恐怖は無限大でした!

ちなみに音がしたのは川の反対側。つまり絶対ビィが帰って来た音じゃないわけで。回してた火の棒を強く握り締めて、音のした方をじっと見る。

無音。とにかく無音。無駄に気を張りすぎてたんだろうかと棒から力を抜いて、ため息をつく。ああフラグ?と胸の中で馬鹿の事を一瞬考えた、その時。


「ッ!!!!」

草むらから飛び出てきた、なんか焦げ茶の塊。詳しく表現なんてできるわけが無い。とりあえず牙とギョロッとした眼!それしか見えるものが無くて体が硬直する!悲鳴なんてあげる暇も無く飛び掛かってくるそれはストップモーションもかくやと言うほどリアルで、っていうか目の前なんだからリアルで当たり前で。……あ、やばい。

こういうときこそどうでもいい言葉しか出ないのかということを初めて知った。なんてやっぱり無駄な事を一気に考えて。


「ガァ!?」

私の目の前でなんだか間抜けな悲鳴をあげて墜落した焦げ茶の塊を眺めた。

……………!?何何何何何何!?

混乱している私を尻目にしたのかなんなのか、襲い掛かってきたらしい動物はあっという間に草むらに逃げ込んでいなくなってしまった。えっと、何。

思った以上に錯乱してたらしい。焦げ茶の塊はいなくなった、とりあえず大丈夫だった、と現状と結果を自分に言い聞かせたら今更ながら震えが来た。

大丈夫だった、つまり私は肉食動物に襲われかけたってことで。

「こここここ、怖かった、結界張ってるなら言ってくださいレームさんお願いです怖かったああああ」

人間、恐怖体験というのはきっちり脳内に保存されちゃうらしい。バイト先で片付けてる皿を持ったまますっ転んだ時の、お客さんの目と落下する皿と、割らないように庇わなきゃ!っていいう思いがきっちり残ってるのと同じように。受身を取らずに皿を選択した所為で膝の皿を割りかけた、なんてオチのついた思い出だけど。

とりあえず犬みたいな動物に襲われたその瞬間をばっちり思い出せてしまった。犬みたいというか四足動物だったというか。

野生全開のスレた眼って本当に怖い、よくわかった、うん。飼い犬とか飼い猫とか、日本の野良犬はホントに優しい目をしてたってことを思い知りました。

「痛!?」

呆然と言うかぼんやり、さっきあったことを思い出していたら木の棒の燃えカスが手に降ってきてしまった。慌てて振り払ったからたいしたことはなかったけど。

心臓バクバク、上半身が焚き木みたいに熱くて頭がうまく回ってない。こういうときは深呼吸、とどこかで聞いたマニュアルみたいな事を考えて実行する。過呼吸にならないように注意して、やや浅めに吸ってやや深く吐く。

大丈夫、冷静。

「お待たせミハルー!」

「うひょあああああ!?」

「!?」

お化け屋敷で一番怖いのは、最後に会う係員さん。小奇麗なスタッフさんがおつかれ様でしたと声をかけてきた瞬間にビクッと震えたことを思い出しながら、私は飛び掛ってきた動物と同じように間抜けな悲鳴をあげた。


「すまないミハル、てっきりレームが伝えていたとばかり」

「申し訳ありません、私もカストル殿が伝えたのでしょうと勘違いをしておりました」

「……いいです、はい。とりあえず何もなかったですから」

私が間抜けな悲鳴をあげた後、着崩した、というか服着掛けの美形が二人ほど飛んできました。目に毒です、セクハラです。良い筋肉した兄ちゃんがピッチリ体にフィットしたアンダーきてる姿とか眼福だけど色々やばい。ビィの時とはまた違う悲鳴をあげて、あわあわしている私にアワアワしだして川縁のほうに戻っていった二人。野生動物とは違う恐怖体験に思わず笑い出しそうになってしまって、怖かった瞬間の事をとりあえず忘れた。むしろ落ち着いてしまった。そんなこともあったから、申し訳なさそうにしている二人に落ち着いて返事もできた。

「今度からは教えてください。肉食動物とかの恐怖耐性ははっきり言って皆さんから見たら皆無ですので。心構えがあったほうがまだましだと思いですから」

今回みたいに盛大に悲鳴をあげたりはしないと思うし。

「分かりました。守りを張ったら私がお伝えします」

「はい、お願いします」

「落ち着いたら君も水浴びに行くと良い。さっぱりして気持ちよかったぞ」

「そうしますね」

乾ききってない、ストパをかけたような真っ直ぐな金の髪を手櫛でときながらカストルさんが言う。もふもふして無くても綺麗だなぁホント。ま、ともかく。

「私も行って来ます」



38.無駄な思考2と恐怖体験:思


ポイポイポイ、と投げ捨てるように服を脱いで川に足をつけた。流石に素っ裸になるのは勇気が要ったけれど、汗臭さに負けた。ちなみに焚き火と川との間には深い草むらと雑木が遮るように存在していて、足を伸ばさなければ覗きなんて事はできない。逆を言えば忍ばれたら絶対分からないってことなんだけれども、流石にあのメンバーで覗きに来る人は居ないだろう。中学生と同じ年齢のビィは、ませた日本ならやんちゃ盛りでも、あの子の精神年齢はちょっと下そうだし。なんとなく可愛い弟って風にしか見れないから仕方ないけど、本人に言ったら怒られるだろうなぁ。

そんなこんな思いながら川の水をちょっとずつ体に掛けていく。いきなり水につかると心臓に悪いというプールの知識が役立つ事に、なんて思いながら、少しずつ冷たさになれていった。

思い切ってちゃぷん、と水につかりながら、水底をしげしげ。川上から流れてきたのか削れたのか丸い石がゴロゴロ、ところどころ水草、ビィたちが茹でた魚は私が入ったせいで散ってしまっている。当たり前だけど日本の川みたいに缶やビニルに入ったゴミなんて無かった。きれいだなぁ、と思いながら、やっぱり余計な事を考えてしまう。

ここまで人の手が入っていない土地がある。これだけの一等地なのにもかかわらず。本当に現地民なんて居るのだろうか、と不安を抱かせるには十分だとおもう。レームさんが言うには、こっちに向かっている人たちが居る、という事だからそれは無いのだろうけれど。

ぱしゃ、と無駄に水音を立てて、浩々と流れる川の音以外の音を作ってみる。

誰も居ない何も身につけてないただ自然だけがある。

これだけ何も無いと、何も知らない異世界でただ一人だけ転がり落ちたような恐ろしさが襲い掛かる。そうじゃないと、分かってるけど。

無意味な恐怖で、無意味な否定の言い聞かせ。何でこんなに怖くなってるのかそれすらいまいち分からん。昨日の夜、寝るときに思った「もっと慌てるものだろう」が一人になったから表に出てきちゃったとか? ………不毛だ。


帰る手立ては無い、だとか、本当に次元の狭間に落ちただけ、とか、生贄の為だとか、異世界から悪魔が来た、平和の為に殺せ、だとかなんだとか。


可能性のあるネガティブな現実。そのあたりはとりあえず投げ捨てよう。こっちに向かっているらしい人にとりあえず合流して、それから。それから。

とりあえずそれから。

結果、結論なんて出るわけの無い無駄な思考を切り上げて、水から上がる。手で擦るように水滴を払って、なるべく水気を落としてから鞄に入れていた布きんで体を拭う。予想してたけど冷たくて風が寒い。さっさと拭いてさっさと火の元に戻りたかった。

寒い思考を無かった事にするためにもね。

投げ捨てた服を着なおして、冷えたおなかを壊さないうちに暖めに焚き火の元に足を向けた。



「さっぱりしましたー」

「それはよかったです。冷えてしまったでしょうから火に当たっていってください」

「そうします」

大きく燃える火の側に寄って体を拭いた布きんも広げた。なるべくなら鞄に入れて持ち歩きたいので乾いて欲しい。じわじわと体に染みる熱にため息をついて。焚き火に手をかざした。ああ、ぬくい。

「川で、っていうか水浴び事態初体験でした。ホントに冷たかったです」

「そうなの?」

私の言葉にビィが首を傾げる。そそ、と肯定してお風呂事情を話そうかどうしようか迷う。説明しても詮の無いことだよなーと直ぐに止めて、ともかく体が冷えた、とだけ笑っておいた。

「ともかくビィも浴びに行って来きなよ。さっぱりするよ?」

「ん、分かった。頭もきっちり洗ってくる」

「はいはい、いってらっしゃい」

最後にビィ。帰ってくるまでに温もるかなぁ?とか思ってたら。どっぷん!としか表現できない大きな水音。

「ビール、飛び込んだな……」

……浅くも無いけど深くも無かったのに。川のほうから「足打ったー!レームー!」

という半泣きの叫び声が聞こえたのは、まぁご愛嬌というやつなのだろう。



「さて、流石に寄り道もここまでだな。ミハル、ビィ、体は十分温もったか?」

「はい、大丈夫です」

「暖まったよー」

時計を確認したら二時前。流石にちょっと足止めをしすぎた。ご飯食べて、小休止して、食べられそうな葉っぱ茹でて水浴びして。半分私のせいだったような感じだけど気のせいにしとこう、うん。

「なら、北北東に進路を戻すとしようか」

「えぇ。ミハルさん、ビィ。足が痛くなったらいつでも言ってくださいね」

「はい」

「うん!」

……元気よく返事をしたのは良いんだけど、水のあるここで駐留とかしたらだめかな。あんまり力を削らないレームさんの力を借りれば生き延びるのには事欠きそうに無いんだけれども。もしこっちに来てるらしい人たちが召喚地点(仮称)を目指しているなら、近くに来たときにそっちに向かうって手も使える。

「さっさと行くぞ」

ちょっとだけ考え込んでいた私をメンドそうに呼ぶディアに、まあ良いかとその選択を無かった事にした。

とりあえず、思い切り後悔したとだけ先に言っておこう。



39.大中りと小出しの知識


「ミ、ミハルさん大丈夫ですか?!」

ああ自分は今真っ青な顔をしていると思う。慌てて私を気遣ってくれているレームさんに返事をする余裕も無い。痛みに耐えてるから嫌な汗もきっと流れている。痛む部分を押さえてうずくまる私。嫌ああああああああああ、お願い勘弁して!!分かりやすい穿痛に呻く。

「流石にこれは私も治すことが……。そこの木までいけますか?ビィ、あの付近になるべく暖かい霧を」

「あったかい霧って作ったこと無いからちょっと怪しいけど、何とかするよ」

あの川から外れて二時間前後。特に何もあるわけでもなく、ゆっくり進路を歩いていた私たち。濃い緑もそこそこ、雑木林もそこそこ。川付近よりは薄くなっているけど、周りには植物が溢れていて。

「肩を貸そう、つかまると良い」

手を出してくれるカストルさんだけど、大丈夫です、自力で行きますと無理やり立ち上がる。体に掛かる負担にまた青くなりながらも、ビィが張ってくれたぬるい霧に入った。


……………要するに私は下痢になっていた。精神的に死にそうです。



「お騒がせしました……」

目をあわせられない。脱水症状を気にして、生暖かくなっていたお茶と塩分補給にポテチを数口入れて飲み込む。まだおなかに違和感があって微妙に息苦しいような気がする。

ああああ、しかしどうしよう、なけなしのポケットティッシュをかなり使ってしまった。次から枯葉とか使うの?!マジきつい。

「こればかりは仕方が無い。食料にも相性があるからな」

「いえ、それよりもあの時湯を沸かすべきでしたね。女性の体を冷やすのはよくありませんでした」

「……俺の採って来た青葉が中ったか?」

大分齧った俺は問題なかったんだが。小さく首を傾げるディア。

「多分カストルさんの言うように相性だと思う、あんたは悪く無いわよ。それに自分だけお湯をお願いするのは流石に我侭が過ぎましたから。色々仕様が無いです、はい」

多分青葉かなぁとは思うけど。あの苦かったやつ。時計を見て大体二時間程度。下剤の効くのが2時間から6時間くらいだし、あの葉っぱに私の世界の弛緩性だか刺激性物質だかなんだかと同じものが含まれていたに違いない。下剤飲まないからよく知らないけど。いや、カストルさんのとってきた木の実とか?でもみんな食べてたしなぁ。わけの分からない物質が多すぎて何が原因かも分からない。

単に私の体の持つ酵素が反応できないものが入ってしまっただけかもしれないけど。

「便秘よりはマシだと思っておきます……」

動物性タンパク質と脂質だけじゃ便秘になるだろうとは思っていたけど、ここまで劇的な変化は要らなかった。本当に居たたまれなくてアレだ。生理現象ばかりはどうしようもないとは分かっていても。あの川から離れなければ個人行動できて、排泄とか何も考えなくてよかったのに、とかはまぁ今更なんだろう。召喚主に苛立ちをぶつける要素がまた増えてため息が出る。

「ところでミハルさん、先ほどぽてちを口にしていたのですが何故なんです?お腹を壊したら何も取らない方が良かったのでは?」

「お茶もお腹冷える原因になっちゃうよ?」

とレームさんとビィ。

「なんといったか、確か下痢や嘔吐などの症状が出ると体の水分が減るから摂取した方が良いと医師が言っていたような気がするが」

「あぁ、まさしくそれですね。症状が酷いようなら薄い粥状のものを患者に飲ませていましたが」

ビィの疑問にはカストルさんとレームさんが答えてくれた。……ビィの世界の医療とかはそのくらい進んでいるのだろうか。色々不安とか疑問も尽きないけど。

「ポテチを食べたのもそれの延長ですよ。自分の汗を、と言うか皮膚を舐めればわかるんですけど、しょっぱいですよね?下痢とか嘔吐のときも同じで、ナトリウムとカリ、……あー、塩分が体の外に出ちゃうんですよ。ポテチを食べたのは塩を補う為ですね」

生理食塩水なんて作る方法なんて無いから簡易に、ってことで。菌類やウィルスみたいな本格的な症状の出るタイプじゃないから別にそこまでしなくてもとは思ったけど、まぁ念のために。

「塩分を補う……なるほど」

レームさんがなにやら神妙そうな顔で頷いている。なんだったかなー、皮膚に付着してる菌の培養する時に、脱脂綿を作った生理食塩水に浸した気がするんだけど。3%、は高すぎるから1%くらいだっけ?記憶が曖昧だ、帰ったら復習しなきゃ。

「あんまりたくさんとるのはよく無いですよ?本当にちょっと。一つまみくらい。熱中症なんかで脱水症状を起こした人とかにも有効ですね。その場合は糖類……えー、まぁ薄いおかゆとかに塩を入れても問題ないですけど」

スポーツ飲料を摂ればいいとはよく聞くけど、教授が言うにはあれでも糖度と塩分は高すぎるらしい。薄めて飲ませろ、って言っていたっけ。体温上がりすぎている熱中症の人が居たら水ぶっ掛けてでも冷やせ、とかなり暴論を言ってたことも思い出す。あんまり暴論でも無い、のか?どうなんだろ。

「言われてみれば訓練後に水や薄めたワインと一緒に塩気のあるピクルスなんかがよく添えられていたか」

そういう意味もあったんだな、とカストルさんがなるほどと頷いていた。よかった、なんで塩が必要なんだってレベルから質問されたら絶対回答お断りしてた。まぁ日本とかでも塩の必要性は昔から言われていたらしいし。

……話を逸らして少しは下痢から意識が遠ざかったかな、なんて打算的なことは思って無い。ホントに。チラッとでも脳裏に掠めたりしたわけでは無いけど、思ってないからね。




40.存在の奇跡と穴掘り


おなかの調子云々は記憶から抹消するとして。

異世界といっても、案外共通点はあるらしい。この世界のものを食べても、一応消化できてエネルギーとして使えている。塩が人間にとって重要だってことも、差異は無かった。これで塩って何?なんてことを言われた日には異文化コミュニケーションっていうレベルじゃなかっただろうなぁ。

ちょっと聞いたら、海から作ったり岩塩削ったりと作りかたも似通っていたようだし。今はイオン何とか法で塩を製造しているとか聞いたけど。講義中にその単語が出てきただけで何をどうして作っているのかさっぱりわからないが、まぁひとまずは。

同じ大気で呼吸でき、同じ栄養成分が消化吸収可能で、ホモ・サピエンス、つまり人間の見た目をしていて、生活習慣も生活用品製造方法もそれほど差が無くて。(多分)全員違う星出身というこの奇跡。地球とこの星含めて、地球人が生息できるであろう惑星が最低5つ。ちなみにこの星が誰かの故郷であるって可能性を加味してって事で。

正確な座標がわかれば宇宙開発系の研究についている人が居たらきっと大歓喜しているはずだ。惜しむべきは誰も信じてくれないだろうっていうことだけども。我々人類は孤独ではなかったのだ!っていうSF映画か何かのセリフを思い出す。何百年後かにあるかもしれない異星人との交流を先駆けた幸運に喜んでおくべきなのだろう。

あー、くだくだ考えてたら何が言いたいのか分からなくなってきた。とりあえず、飲める、食える、息できる、以上!って事よね、重要なのは。味覚のズレも無いのはいいことだと思う。食事、食文化の話題に困る事も無いし。

でも好きなものとか嫌いなものはなんですか?とかどうでもいい話をしたくても、ラウデペフフエが好きです、とか意味不明な単語が帰ってくるんだろうなぁ。ってかラウデペフフエってなんだろ?自分で適当に文字入れたのはいいけど本当に意味不明だわ。

「ちょっと休まない……?」

そんな馬鹿なことを思いながら調子よく歩いていたら。並んで歩いていたビィが足を止め、足首を回しながらそう口にした。ちょっと足が痛くなってきた、というビィに、直ぐに法術を施すレームさん。ありがと、とお礼を言いながら何度か屈伸を繰り返すビィを見たカストルさんが、

「背中を貸すぞ?」

とビィの前で屈んで拾い背中をぽんぽん、と叩いた。

「う~。カストルごめん、お願い」

腕を伸ばしてヒョイ、といった感じに背中にしがみつくビィ。それを確認して軽々と立ち上がるカストルさん。当然のごとくカストルさんのほうが体格も身長も大きくて、細身のビィを持ち上げても小揺らぎもしない。……見てる側はすごい違和感だけどね!

「どうした?暫くしたらミハルも運ぶぞ?」

「あー、いや、うん、いいです、私は大丈夫です」

ディアがレームさんをおんぶしたときと同じくらいの圧迫感と言うか違和感というか居たたまれなさというか?いい表現が見つからない。ともかくそんなことを考えて二人を見つめていたら、カストルさんが声をかけてきた。ディアの肝生食いのときも思ったけどどこをどう見たら羨望系のまなざしに見えるのだろうか。

「そうか?だが体というのは疲労の限度を過ぎると感覚すらなくなるからな。そうなる前に言ってくれ」

「えぇっと、はい」

調子よく歩く、つまりハイになってます。よくよく鑑みるとやばい気がする。微妙な私の表情をみてどう思ったのかは分からないけれど、レームさんが念のために、と私の足に治癒術をかけてくれた。何度も感じる、温泉につかるようなぽあっとしたぬくもり。

「何度もすみません」

「いえいえ。ミハルさんも痛みを感じたら直ぐおっしゃってくださいね」

なんども繰り返した返事をまたおこなって、治癒をかけてもらった足首を自分も回す。……ホントに感覚無かったみたい。痛みは最初から無かったけど、なんだろ、ズーンって言う重さが一気に足に来た。

「……ごめんなさい、ちょっと無理みたいです」

「ああやはり。そうではないのかと思いました」

落ち込み気味の私と仕方ないですよ、と笑うレームさんを見て首を傾げるビィ。

「つまりすでに限度が過ぎていたんだな?」

ました。すみませんと言うには何か違う気がして曖昧な顔して笑っていたら不可思議そうな表情をされてしまった。が、それも一瞬でなくしてビィをそっと下ろすカストルさん。

「ふむ、少々早いが今日はもう野営の準備をするか。日もそれなり傾いてきたようだし」

「集めるのは石くらいですね。あの雑木から燃料になるものは持ち運んできましたし」

そう、昼食の時に集めた木材がいくらか余ったため、ついでに夜の分も集めておこうと結構な量を溜めておいたのだ。それを淡々と運ぶディアとカストルさんをわき見に歩いてたけど、なんというかすごい状態だった。

荒縄みたいなので括った木材だけのカストルさんはともかく。大量に摂ってきた葉っぱと木材を抱え込み歩くディアは、鉄鋼を担ぎガテンの兄ちゃんを想像できる状況だった。

おそらく私の知らない素材なんだろう、薄く大きく頑丈な袋に菜っ葉をつめて、それを思ったより長い、剣を下げるために着けていたベルトを弄って手提げ代わりに肩に背負い。同じく荒縄もどきで括った木材を持つその姿。

とにかく、なんかすごい状況だった。思わず遠い目をしたくなる方向性の。


「あそこの木を目印にするか。あの下で昨日と同じようにミハルたちは準備を頼む。ビール、魔術で土は掘れるか?」

「できるよー。水で濡らして軟くなったのを風で浮かして火風の熱で乾かす、って感じだけど。直接土に『動け』って言うのは精霊魔術の分野だし」

「ああ、それで構わない。レームと集めた木の実を土の中に埋めておいてくれ、蒸し焼きにする。一緒にディアに渡した葉を泥除けに使ってくれれば良い。では行って来る」

木の実なんて一体いつ集めたんですか二人とも!?聞く前に走り出すカストルさん。ってかその方法で草取りすればよかったんじゃと今更ながら思ったり。

「どのくらいの深さで掘ればいいの……?」

色々、ツッコミが追いつかない。







お久しぶりです、生きてます。

とりあえず色々補足とか訂正とか突込みとか。

生理食塩水は0.9%塩分濃度です。

塩の精製方法はイオン交換膜法。

市販の下剤には弛緩系は無い、筈。むしろ弛緩系の下剤はあるのだろうか?

荒縄もどきは木の皮(蔦気味)を煮て皮をはいだらできる云々をカストルさんが見えないところで作業してくれました。


ウィキペディアとか参照したような気がしないでもないです。

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