プロローグ: 見知らぬ砂浜
横たわった状態で空を見上げると、突き抜けるような青とまぶしい光が飛び込んできた。
空だ。吸い込まれるような程高く、どこまでも広がっている。
「…ここは…?」
上半身を起こそうとして全身に痛みを感じた。口の中も塩っぽく、のどは焼けるように乾いている。
周りを見渡すと真っ白な砂浜、輝く海、砂浜の奥には生命力にあふれすぎて怪しく危険な感じの深い原生林が目に映る。
砂浜は綺麗で人気スポットになってもおかしくないが、人気はない。というかどこを見渡してもガードレール、電柱一つも見当たらない。人工的なものがなく、人の気配を感じない。
「…本当に誰もいないの?」
いや、一人いる。足元に目をやると波打ち際で力なく横たわる白い塊が目に入る。
それは一人の少女だった。
潮風に揺れる薄い色の長い髪、波に濡れて肌に張り付いた真っ白なワンピース。
白い肌と細身の体で、砂浜に打ち上げられた姿はクラゲのようだ。いやそれは違うか。
ピクリとも動かない姿に最悪のケースが頭をよぎる。
「ちょっと、しっかりして!」
膝をつき、彼女の胸元に触れる。かすかではあるが、確かに上下運動はしている。
細くか弱そうな体ではあるが、無事だったようだ。
よく生き延びたものだ。
いや、それはそれは私も同じか。
私も本当よく生きているものだ。
うっすらとだが、彼女を抱えて必死に泳いだ記憶がある。いや泳いだというか、波に流されるままだったので、砂浜にたどり着いたのは奇跡としか思えない。
「…さて、どうしてこうなったんだっけ」
私はこめかみを押さえて、目を閉じあの船旅のことを思い返しはじめた。




