アシレマ【6】
「───で、分身君は、何でこんなところにいる訳?」
私達は注文した目にも鮮やかなカラフルかき氷を前に、額を突き合わせるようにして密々と話し始める。
木製の丸テーブルに、ライカちゃん、私、カイル氏、ファーマンの分身の順で並んでいた。
「それは主と『逆転の魔女』の命に従い、目的を果たすために彼奴を追ってアシレマに辿り着きまして───」
ファーマンの分身 は本家に負けず劣らず洗練された仕草で話し始めると、また新たに注文し直したレインボーな蛍光ピンクのかき氷を一口優雅に食す。
「真夜さん───とにかく、かき氷食べながら話しませんか?」
なぜか今回の可愛い見習い魔導師は、そんな分身を胡散臭げな表情で眺めながらそう言った。
それでも眼の前のキャンディポップなパステルカラーのかき氷を美味しそうに頬張るのは忘れない。
それもそうだな、と思い、私も注文した蛍光イエローのソースの掛かったカラフルな星型のトッピングが乗ったかき氷を一口食べる。
途端に雷激が脳天を突き抜けていったような衝撃を受けた。
「………うんまっ!」
思わず声が出るほどの美味しさであった。
爽やかな甘さで微炭酸、トッピングの星も食感が良く、脳が歓喜するようなとろける美味さなのだ。
「ですよね! 絶対真夜さんエルッパェニップ味が好きだと思ったんですよ」
満面の笑顔で嬉しそうにライカちゃんは私に軽く体をぶつけてくる。
ごめんね、ライカちゃん……ちょっと疑ってしまって。
私の背中は煤けてます。
でも、エルッパェニップ味って、何……?
この世界では食べ物も人も動物も種族も、みんな見た目とは違う事なんてザラだ。
何でもそうだけど、見掛けで判断しちゃいけない───って言うか、出来ないのだろう。
その最たる権化が、目の前にいるファーマンの分身君になる訳なのだが。
美女エルフの話だと、ファーマンの分身のベースは、私が召喚したアイシュールの野良精霊との事で───何せ、アイシュールはトスリッチ教という敬虔な一神教の国で、それ以外の宗教は邪教として完全に排除されてしまっているらしく。
故に、本来あった精霊信仰はすっかり廃れてしまい、一部の庶民が隠れて細々と信仰している状態なのだという。
しかしその中でも更に忘れ去られてしまった古の精霊が私の呼びかけに応え、ファーマンの分身として顕現してくれたのだ。
そんな分身君がレインボーな蛍光ピンクのかき氷を完食したのち、溜め息混じりで言う事には───
「アイシュールでのファーマン本体との戦闘の最中、また本体は反転の魔女が出現した事で自分に旗色が悪くなるや否や、さっさと姿を晦ましてしまいましてね」
それを聞いて、里和ちゃん達が似たような話をしていたのをぼんやりと思い出す。
尻尾を掴みそうになると、忽然と姿を消す、と。
更に関わった人々の記憶まで消したり操作改竄したりする念の入れよう───なので、精神に異常をきたしたり廃人になってしまう人も少なからずいたという。
そのたびに美女エルフはそんな人々を魔法で治療し、今でも尻拭いに奔走しているのだそうだ。
何だろう、その理解不能な終わりの見えないイタチごっこは……。
そりゃ忙しくてじっとしてなんかいられないよね。
「じゃあ、今ファーマンはセレグナ・ソルに?」
また地味に微修正してます
後半に追記してます
【’24/04/06 微修正してます】
【’24/04/06 れてれて修正(笑】




