アシレマ【5】
*続きを読んで下さっている方へ*
話がつながらない場合、地味に前回に新たにお話を追記してありますので、お時間ございましたらお読み下さい
気になさらない方はそのままどうぞ
私が息を呑んで愕然としてそう口走ると、傍らの黒髪の青年が指で軽く私の頭を弾いてきた。
「痛っ!」
ちくしょー、めっちゃ女子の頭を弄りくさって。
カイルの頭の秘密、みんなにバラしちゃうよ!
デコピンではなかったが後頭部でもかなりの痛みがあったので、私は右手で弾かれた箇所を摩りながらキッと後ろにいる黒マスクの青年を睨んだ。
「阿呆、よく見ろ。あんたが召喚した分身だ」
え?
すると褐色の肌で金髪のファーマンの分身が、すっと立ち上がって私の元にやって来て、途轍もなく大仰な仕草で跪くと、溜め息をつきながら悲しげに口を開く。
「主、お見限り寂しかったですよ……その上、自分の事をお忘れになられてるとは、お労しい」
そしてそのまま、中世ヨーロッパの時代劇みたいな優雅な作法で私の手を取り、手の甲に軽く口づけしてくる。
ぎゃっ!?
本物のファーマンの異様さと纏う雰囲気の邪悪さがフラッシュバックし、その気障な行為に私が少し青ざめながら鳥肌を立てていると、ファーマンの分身の鼻先に白刃の剣が突きつけられる。
それに特別動じた風もなく、ファーマンの分身は多少困った風情で私から手を離し、両掌を肩口辺りまで上げ自分に敵意がない事を示す。
「メグに触れるな。それと、場所を弁えろ」
カイル氏がまたいつの間にか出した、柄頭に遊色が綺麗な石が嵌め込まれたバスタードソードを左手で構えていた。
あれっ?
私はてっきり、普段黒髪の青年が着ているフードつきの黒のマントに、その剣が収納されているものだとばかり思っていたのだが……。
何せ、私達が日頃着用しているフードやマント等の衣類は、全て美女エルフの魔法が施されており、特に外套系にはすぐ取り出さねばならない武器などが収納されている場合が多い。
それはさて置き、気づけば私達は店中の注目を集めていた。
女子たちのキラキラした熱視線が、グラビアから飛び出したようなイケメン二人に注がれている。
最初はダンディなファーマンの分身にうっとりしてる女性が多かったのだろうが、次にすらりと背高くモデルのように手足の長い、黒ずくめだが目元の涼しげなマスク青年が現れたのだ。
その二人がなぜか私を挟んで何事か揉めている訳で───その上、傍らには金髪でふわふわのウェービーヘアの美少女までいたりするし。
ライカちゃんの方はカップルの男性の方の視線を集め、一緒の彼女と思しき女性に蹴られたり抓られたりしていた。
そんな状況の中、私にはただただ嫉妬の視線が痛かった───
やばっ……!
私は焦って二人の間に割って入り、引き攣る顔に無理矢理笑顔を貼りつけ思わずこう叫んていた。
「やっ……やだなぁ! マイコーが先に君が頼みたかったかき氷先に注文してたからって、そんなに怒るなんて───ここは私がおごるから、みんなで味見し合って楽しく食べようよ〜」
上ずり気味の大声で白々しくそう言うと、今度は惘然とした表情でファーマンの分身を見上げていたライカちゃんの背を押しながら、先ほど分身が座っていた席にそそくさと移動するのであった。
気づけば、分身が頼んでいたかき氷は大分溶け、ガラスの器の中はカラフルなマーブル模様が出来上がっている。
それを見てつい、私は思ってしまう。
………ホントにこれ、美味しいんだろうか?
【’24/04/04 加筆修正してます】
【’24/04/05 微修正してます】
【’24/04/06 加筆してます】
【’24/04/12 微修正してます】




