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混んでるとお一人様は並びにくい10

 ルルさんとフィデジアさんは前に紹介したので軽く。ジュシスカさん、ピスクさん、ルイドー君をメインに拙い英語でアマンダさんに紹介をした。


「ねえルルさん、私の英語力では神殿騎士って説明できないから、護衛って説明しても大丈夫かな」

「それでいいと思います。私はあなたの騎士ですが、他の者はアマンダ様もお守りすることになるでしょうし」


 ルルさんがまたサラッと乙女ゲーみたいな発言をしている。それは置いといて、ルルさんはアマンダさんに対してはちょっと距離があるというか、敬う感じの対応のようだった。


「えーっとアマンダさん、ゼーアー、ボディガード。プロテクト、ミーアンドユー。ウィーアーセーフ」


 訝しげな顔をしているアマンダさんは、繰り返すと理解してくれた。私の英語力が試されているというよりは、アマンダさんの理解力が試されているといっても過言ではないな。

 しかし、アマンダさんが喋ると私も理解力を試されるのでお互い様だということにしてほしい。もし今過去に戻れるなら中一から英語だけ本気出す。


 アマンダさんは、「ここにも危ない人たちが来るのか」的なことを訊いてきた。危ない人たちというのは、状況的にシーリース人のことだろう。かなり不安そうな顔なアマンダさんを見るとやはり良い待遇どころではなかったのだなと思う。


「えーっと……」

「リオ、彼女はなんと?」


 返答に困っていると、ルルさんが私に近付いた。

 身振り手振りと指文字で単語を伝え合っていたので近かったアマンダさんが、ルルさんを警戒して一歩退く。


「あのね、シーリースの人たちがここにも来るのかって。護衛がいるってことは、ここも危険なのかって訊きたいんだと思う。でもアマンダさんはすごく怖がってるし、ハイって答えて不安にさせるのもどうなのかなって……」

「襲撃されたのは事実ですから、それを伏せたところでもしまた襲撃があればより動揺するのではないかと。しかし我々は人間に負けるほどの腕前ではありません。それに、万が一のことがあっても、リオたちのことは神がお守りくださるでしょう」

「あっ、そうか。神様もいたね」


 ルルさんのアドバイスに従い、アマンダさんに説明を試みる。過去に襲撃されたことを話すとかなりアマンダさんは取り乱しそうになったけれど、犯人は捕まったこと、ルルさんたちがめっちゃ強いことを説明するとホッとした顔になった。ジュシスカさんのことをチラチラ見ていたので、シーリースから救い出してくれた強さがあるというのはアマンダさん自身もわかっているようだ。


 さらに神様も守ってくれると言うと、アマンダさんは微妙な顔をした。訊くと、アマンダさんはクリスチャンらしい。自分にとっての神は信仰する神ひとりだけだ、みたいなことを言っていた。


 この世界の神はキリスト教の神様とは違うのではと心配しているようだ。

 だが安心してほしい。神様は正真正銘地球の、というか地球を作った神様である。

 地球上の宗教において、あの神様がどの神様に当てはまるかとかはちょっと難しくて分かりかねるけれど、この世界の神様か地球の神様かというと混じりっけなしの地球の神様だと断言できる。


「イッツオーケー。ユアゴッド、イズ、ヒア。セイムゴッド。ノープロブレム!」


 グッと親指を立てると、アマンダさんの頬に「本当かよ」という文字が浮かんでそうな表情になった。

 安心させようと明日一緒に会いに行こうと誘うと、ますます疑うような顔に変わる。信じてアマンダさん。私も神様に会おうとか言われた立場になったら「こいつ頭やべーな」と思うだろうけども、事実だから。


 そんな感じで納得してもらい、紹介も済んだところで夕食が始まった。

 アマンダさんの左隣には私が座り、私の左隣にはいつのまにかルルさんが座っていた。アマンダさんの方に意識が向いていたのでルイドー君で防ぐの忘れてた。アマンダさんの右隣はフィデジアさんに座ってもらい、その隣にピスクさん。さらにジュシスカさん、ルイドー君が座ってテーブルは満員になる。


 私のお皿に料理を取り分けるルルさんに頼んで、アマンダさんの分も取り分けてもらった。アマンダさんはきょろきょろとたくさんの料理を見回していたけれど、私が食材を簡単に説明するとさほど躊躇うこともなく口を付けはじめた。

 ジュシスカさんによると、シーリースでは食事も質素だった上に旅の間も警戒してあまり食べなかったので、空腹だったのではないかということだった。ちょいちょいアマンダさんの待遇の悪さで悲しくなるので、お腹いっぱい食べてほしい。私のおすすめ料理も教えておいた。


「リオ、アマンダ様にばかり構わずに。料理が少しも減っていません」

「はーい」

「それはこの調味料に付けて食べてみても美味しいですよ。今日のパンは固いのでちぎりましょうか」

「いえ自分でできます」


 断ったのに、ルルさんはパンをちぎって、その上にハムっぽいものとソースを乗せて渡してきた。あれこれ食事の世話をされている私を、アマンダさんが食事の合間に見ている。大変気まずいこと山の如しである。


「ちょっとルルさん、アマンダさんが見てるから。あのね、私のいた世界では、大人になってもこうやって食べる世話とかされてるのはかなり恥ずかしいことといいますか、普通はありえないことだから。あと一人で食べれるから」

「リオの世界ではそうなのですか。我々の国には、『その地を踏みし旅人は、その地の人に耳を貸せ』ということわざがありまして。その土地の慣習や決まりを守るべきという意味なのですが」


 奇遇だなー。そういうことわざ日本にもあったなー。ことわざって異世界にもあるんだなー。


「いや他のみんなは自分で食べてるじゃん!」

「気にしてはいけませんよ」


 ルルさんが完璧な微笑みでにっこりと言った。顔がいいと、笑顔で言葉に説得力が出るのずるいと思う。

 アマンダさんを見ると、こっちを見ていたアマンダさんも笑っていた。ちょっと生温い笑顔で。


 せっかくの異世界仲間なのに、出会って間もないアマンダさんに変な印象を与えてしまったではないか。

 仕方ないので、ルルさんには常時食べたい盛りのヌーちゃんを押し付けておいた。






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