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勇者なんて待てるかよ!!  作者: 星屑
第一章
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知識はあるされど記憶はない

一人称です



気づいた時にはこの世界にいた。

いや正確には生まれていたのだ。


(おいおい、なんだこりゃあ)


自分が認識できるようになった時には赤ちゃんの姿でベッドで寝ていた。

慌てて周りを見渡すがまったく見覚えがない。


(まじか、言葉も話せねえし)


出来ることは身体を少し動かす程度。

ここから動くことはできない。


(てかもっと驚けよ俺)


こんな状況でもあまり取り乱していない自分に人として何か抜け落ちていないかと不安になる。


(まあ悪いことでも無いしいいか)


あっさりと頭を切り替えて状況を整理してみる。



今の俺は赤ん坊、だが俺には20年間生きていた記憶がある。

大して変わった人生ではなかったが日本という国で確かに生きていた。


(転生、まるでゲームだな)


それが一番しっくりくる。

赤ん坊の姿と合わない記憶。

まさか自分が経験するとは思わなかった。


(となると次はここがどこかだ)


部屋の雰囲気から日本とは思い難いが可能性はゼロではない。

赤ん坊の部屋としてはかなり大きいし、金持ちの家って可能性はある。


(と言っても動かんから確かめようがない)


ここからじゃ窓の外も覗けなから景色から判断することもできない。


(となればやるべきことは一つ!!)





















「………………………ZZZ」


赤ん坊とっては寝るのが仕事だ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





結局ここは地球ではなかった。

目が覚めた後、両親や兄弟らしき人物が部屋を訪れ、彼らの様子から文明的には中世辺りだと解った。

それだけでは過去ということも考えられたが、


(何だあの道具は!?)


日常からその考えは吹き飛ばされた。

ただのアクセサリーかと思いきや母が何か呟くとろうそくに火がついた。

その場は混乱しかなかったが後に冷静になると一つの考えが浮かんだ。

ーーーーーーあれは魔法ではないか。

転生というものがある以上魔法もないとは言えない。

そう念頭に置いて観察するとどうやら当たりのようだった。


(異世界、魔法、まるでゲームだ)


この世界では魔法の道具を生活に取り入れている。

地球ではあり得ないことだった。




俺が生まれた家は結構身分が高いらしい。

家族の他に使用人の姿を見かけた。

というより普段は使用人が俺の世話をしてくれている。


家族では母が一番良く来てくれる。

ただ言葉が判らず何を話しているのかが掴めない。

英語ですらない謎の言語だがせっかく自我があるのだからと理解しようと努力した。

来る人来る人に話しかけ(赤ちゃん言葉)反応を引き出す日々。

おかげで少しずつ言葉がわかってきた。


まずわかったのは自分の名前。

シンク・スレイヤード。

それがこの世界での名前だった。

ちなみに前世の名前は思い出せない。

知識的な記憶は残っているのだが俺の人生に関する記憶は全く思い出せないのだ。

とはいえそれはいい。

これから生きていくのに必須ではないのだから。


次に理解したのはやはりというか家族のこと。

母の名前はシュリ。

まだあどけなさが残る顔立ちに透き通るような瑞々しい肌。

とても子供を産んだとは思えないほど若く可愛らしい。

父親の嗜好を真面目に心配するほどだ。

いつもの優しい表情が自然と好きになった。


そして父親ハードリック。

スレイヤード家の当主で中々威厳のある男だ。

忙しいのかなかなか来てはくれないが蔑ろにされている感じはしない。

単に当主の仕事が忙しいのだろう。

ただたまに母といちゃついているのを見るとロリ◯ン疑惑が深まる。

後にその疑惑は薄まるのだが消えることは金輪際あるまい。


兄である長男のバース

母と良く部屋に来ては話をしてくれるやさしい兄だ。

この段階でかなりのイケメンになる未来が見える羨ましい男だ。

順調にいけばバースが家を継ぐのだろう。


そして後二人家族がいる。

ハードリックのもう一人の妻カザリアとその息子グシン。

この二人は滅多にこの部屋に来ないので家族と気づくのが大分遅くなった。

どうもカザリアはシュリを目の敵にしている。

原因はまだ判らないがシュリの子であるバースを廃して自分の子であるグシンを跡取りにと考えている可能性がある。

何度か母に連れられ部屋の外で会ったことがある。

この時カザリアがシュリに強く当たっていたのが記憶に新しい。

シュリは優しい性格からか言われるがままだった。

まだグシンは2歳でよく分かっていないようだがこのままだと火種なりそうだと少し不安になる。


とりあえず落ち込んだ母を慰めてみたら目を輝かせて高い高いをしながら感謝してくれた。


なおカザリアは普通の女性だったので父親の名誉が回復したのもこの時だった。



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