プロローグ
城壁の上に一人の少年が立っていた。
未だ未熟なその身体は物々しいもので包まれている。
かなり軽量化された皮の鎧。
その身の丈と同じくらいある無骨な長剣。
まだあどけなく言ってしまえば可愛らしい顔立ちをしている少年には不釣り合いだった。
「まったく、早すぎるだろ。もっと平穏に暮らさせてくれよ」
周りには誰もいないが少年は愚痴らずにはいられなかった。
「生まれ変わってみたらゲームの世界。生まれた場所は敵国との最前線の領主の三男。親父も跡を継いで欲しかった兄貴も死んじまった。最初からハード過ぎるだろ」
そこに一人の男が近寄る。
「シンク様、ここにおられましたか」
「ロンクー、準備はどうだ?」
「完了しています」
「そうか、………兄上は?」
「グシン様は王都に援軍を呼びに行くと」
「やっぱり逃げたか」
「………………」
ロンクーは答えない。
「このスレイヤードの危機にも立ち上がる気概でも見せれば違ったのにな」
「………我々はシンク様と共に」
「頼もしい。その忠誠に報いてみせる」
もはや逃げた者に構っている暇は無い。
階下に降りると兵士たちが整列していた。
「ここにいる勇士達にスレイヤードの名をもって感謝する!」
シンクは兵士すべてに届くように気炎を乗せる。
そして自身も騎馬に跨り号令をかける。
「出陣だ。ディーンの奴らにスレイヤードの恐怖を刻んでやろう!」
「「「「おおー!!」」」」
シンクは先頭となり駆け出す。
兵たちは我先こそとこれを追う。
「父上も兄上もそっちで見てろよ。この地もスレイヤードの家も俺が守ってやる」
シンクは軍の先頭で誰にも聞こえぬ誓いをする。
「だけど勇者がまだ村でのほほんとしてるのに殺伐とし過ぎだろ世界!!」
これから死地に向かうのに気負いは一切無さそうだった。




