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必殺、大いなる一撃

「なんとぉっ!?」


 初撃を躱せたのは奇跡に近い。

 唖然としていた私は溜息を吐いていたので見ていなかったのだ。

 ふと、床に煌めく何かを見付けてしゃがみ込む。


 お金かと思ったからしゃがんだんだけど1円玉だった。

 何だ1円か。と思った私の頭上を何かが薙いで行った。

 思わず転がって距離を取り、自分を襲った何かを見れば、スケルトンドラゴンが狭い室内でくるりと回転して尻尾を叩きつけていた所だった。


 背後に存在したデスクを破壊し、トランクを地面に落下させる。

 まさに化け物だ。

 これ、防犯システム以前に殺人システムだよ?


 聖戦士に成れていなければ、私この回収中で死んでたかもしんない。

 野中さん、もしかしてここで私を無き者にして金をせしめる気だったんじゃ?

 これはもう、500万程度で済む問題じゃないね。

 野中さん、悪いが1000万程追加させてもらうよ!


 さすがに咆哮が聞こえる事は無かった。

 骨格標本なので基本脆いようだが、その巨体から繰り出される尻尾の一撃が非常に厄介だ。

 振り返る際こちらを見ていないスケルトンドラゴンだが、目算付けて振って来るので避けるも一苦労。

 当ればデスクのように粉砕されかねない。


「紗那螺ッ!」


 キーワードを口にして武器を出現させる。

 さぁて、魔物相手じゃないけれど、ルミナスナイトとやらの実力を見せて貰おうか。

 試してみたいのもあるしね。


 振われた尻尾を屈んで避けつつ私は走る。

 一回転するスケルトンドラゴンがこちらを向く前での間に相手の懐に潜り込むと、紗那螺で一撃叩き込む。

 さすがに巨大なだけあって骨の強度が厚い。


 蹴りを叩き込む。

 ダメだ。効いてる感じがしない。

 馬頭鬼でさえ吹き飛んだ一撃をくらったのに折れないとか、どんな骨だよっ!?


 ……ってぇ!? この骨、チタン製じゃない!

 わざわざ成形した上に塗装までして普通の骨みたいにしてやがる。

 どんだけ手間掛けたんだあの人は。


 仕方なく骨と骨の間に蹴りを叩き込む。

 さすがに骨同士の結合は弱いらしく、少し歪みが発生した。

 しかしそれだけだ、これでもなんとかする事が出来ないらしい。


 物理攻撃は諦めて神聖技を使った技を試す。

 紗那螺をくるりと回して銃口を向けると、爪を振り下ろしてきたスケルトンドラゴンを避けつつ接近する。

 背後の尻尾付根辺りに飛び付き、そのまま背骨を走ってスケルトンドラゴンの真上にやってきた私。

 銃口を背骨に接触させて神聖技を溜める。


 むず痒さを思い浮かべながら私は銃の引き金を引く。

 接射での連撃に、さすがのスケルトンドラゴンも声にならない悲鳴を上げた。

 行ける。

 浸透性の裁きの鉄槌である。


 射程は短いしダメージは極微量。それでも連射すればダメージは格段に上がる。

 そして、これがもしも馬頭鬼としてシュミレートした場合、傷の出来具合では殺し切れるかもしれない。人間相手には使わないようにしないと大変だこの銃器。


 背中を穿たれたような衝撃が走った。一瞬意識が飛びかけた。

 マズいと思った時には私に向い二度目の尻尾攻撃。

 咄嗟に身をひるがえして二度目をやり過ごす。


 暴れ出した。

 それはもう、癇癪おこした奴みたいに、そこいらじゅうを破壊して回りだした。

 そして、それは起こるべくして起きた。


 暴れ狂うスケルトンドラゴンは、あろうことか足踏みを始め、その足に象が乗っても大丈夫みたいな言葉が売りのアタッシュケースをふんづけたのである。

 思わずあっと声をだして踏みとどまる。


 アタッシュケースは重みに耐えきれなかった。

 グシャリと南京錠がしっかりと嵌めてあったアタッシュケースは見事なまでに粉砕され、中身のお金が散らばった。

 さらに風圧を仕掛けて来た際に、札束達が舞いを踊りつつ空へと飛んで行く。

 諭吉さんが、諭吉さんが……私の(・・)諭吉たちがッ!!


 まるで竹馬の友を失ったような悲しみが私を襲った。

 スケルトンドラゴンは意にかえさず私を殺そうと尻尾を振る。

 周囲の音は聞こえなくなった。


 殺す、コイツ殺す、殺してやる。

 拳を握り思い切り力を溜めて、握る。

 振われた尻尾が邪魔なので受け止める。


「この……クソ野郎がぁぁぁぁぁっ!!」


 説いてやりたい。テメェ、血はなに色だと。

 怒りと殺意の乗った右拳を、左腕で引っぱったスケルトンドラゴンに思い切り叩きつけた。

 赤い輝きを持つその一撃でスケルトンドラゴンは見事粉砕されていた。


「諭吉先生に謝りやがれこの腐れ外道がァ!!」


 即殺効果がついたまさに大いなる一撃。

 怒りから生まれた私の必殺技に出来そうな威力の一撃だった。

 うん。これは大いなる一撃。【グレイテスト・ストローク】と名付けよう。


 何か違う気がするが、必殺技を編み出した私は少し虫の居所が直ったようだった。

 お金を掻き集め、とりあえず数える。

 2000万。う、足りない。どこだ? あ、あったシャレコウベの下か。

登場人物


 ひじり 小影こかげ

  現在16歳、彼氏いない歴イコール年齢の少女。

  基本金かお茶にしか興味がないので、金貸しの回収を行う以外は緑茶をすすってぽけっとしている。

  特技に瞬間記憶を持ち、金貸し業の関係で覚えた指弾とデビルスマイルを得意とする。

  座右の銘はお前の物は俺のモノ。貸したら返せ命を掛けて。

  聖戦士になったようです。

  メルトに寄生されている。ルストが見つかるまでは共生するようだ。


 メルト

  原初の柱の一つであり地球外生命体の細菌。

  時空石と呼ばれる黄金に光る石の内部に存在していて地球へと降って来たらしい。ルストと共に地球へ飛来したが、長い年月を経てルストは行方不明となった。

  以来ルストを探しているのだが、空気感染型のルストとは違い飛沫接触感染型のメルトは自身を運べる存在がいなければ移動できない。

  人間をルストと共に造り出した神らしいが、生物に触れると相手を融解させてしまう特性を持つ細菌。生き物を媒介にする場合は特定の容器である必要がある。


 結城ゆいしろ 杏奈あんな

  現在16歳、彼氏無し。

  小影曰く、紫色に染めたけど、髪が伸びたせいで半分より下だけが紫色になっちゃったとっても可哀想な人らしい。

  不良生徒になりかけていたが、小影に打ちのめされて以降小影のツッコミ役にされる。

  姐御肌らしく悪態付きながらも手伝ったりする様が密かにクラスメイトから人気を集めている。


 神殺かみさつ 物未ものみ

  父と兄が死んだため神殺組組長となった少女。

  パックの緑茶が好きらしい。

  闇金融の蔓延を不快としていて彼らの殲滅を始めているが、今のところは弱小金融の成敗だけで大物を相手にする実力には届いていない。

  組員の殆どが警察に捕まったせいで弱体化を余儀なくされたらしい。


 増川健治

  渋いサングラスをかけた丸刈りの厳ついおじさん。闇金融をしている人。

  声がでかいので普通に話しかけると子供が泣き叫ぶ。

  金ラメや龍柄のシャツを好んで着ている。

  子供好きで野花を愛する性格だが、厳つい容姿のせいでよく通報される。


 ハニエル・ルーマヤーナ

  神の愛と称される大天使の一人。

  全ての愛される要素を内在し、顔は清楚に、身体は妖艶に。でも思考は限りなく幼児に近いある意味残念な存在。

 ただし内包する知恵と頭の回転は凄まじく、先見の明を持つため落ち零れとされる天使から大天使候補の原石を発見するのが上手い。


 ファニキエル・シュイタット

  ハニエルにより見出された落ち零れの天使。

  前回の天使試験で見習いのまま消失の危機を迎えていたが、ハニエルにより見出され付き人のような役割についている。

  未だハニエルが見出した実力は開花しておらず、実力は限りなく弱い。


 牛頭鬼

  黒い靄から発生した悪魔。

  黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。

  夜間の校舎内を見回る様に動いている。


 馬頭鬼

  黒い靄から発生した悪魔。

  黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。

  夜間の校舎内を見回る様に動いている。

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