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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
35/59

961-990

961『 歪んだ世界 』

「まって、まって!?」

「如何した娘御よ」

「白姫も~、同胞だと思ってた相手が精霊だった~みたいなびっくり顔して、どうしたんです~?」

「何そのとてつもなくビミョーな例え気になる……じゃなくて! 自称ユノちゃん貴方、男なの!?」

「はい、そうですよ~」

「言ってよ! 最初に! 教えてよ!」




962『 反逆行為 』

「でもお嬢さんだって性別言ってませんよ~?」

「あたしは見たまんまだから良いの! ランだって一応男のヒトっぽさがあるから分かるの! でも! 貴方は! 全っ然分かんなかったの!」

「あら~」

「あるじゃない肩幅とか喉仏とか声のカンジとか! 何そのめっちゃ素敵なお姉さんボイス! ズルい!」




963『 私じゃない 』

「娘御の言うておる男の部位は、ユピは巧く隠しておるだけだと当方は思うがなあ。その派手な上衣の襟が立っておるのは喉仏を隠す為、毛羽立っておるのは肩幅を分かり難くする為だろうて」

「ちょっとお師匠、少しは言い方を選んでくださいな~。派手な上衣などではなく、煌びやかなマント、ですとか~」




964『 なーに泣いてんの 』

「ツッコミどころは服装の表現だけなの!? ていうかやっぱり声よ。確かにちょっとハスキーだけど、女性にしてはってだけで、男のヒトの声にはどう頑張っても聞こえないわよ」

「それはですね~、これなんです~」

「首に、魔方陣?」

「変声の魔方陣を作って常時展開させてるんです~」

「スゲェなおい」




965『 終わらない復讐 』

「おじーちゃんすら感心するって事は、凄いの?」

「ジジイ言うな。俺すらたぁどういう意味だ」

「おじーちゃん、術式好きじゃないんでしょ?」

「別にキライでもねーよ。だからジジイ言うな」

「肉体言語が好きなんだよな、お爺ちゃんは」

「否定はしねぇが、ランまでジジイ言うな」

「楽しそうだからつい」




966『 巡り巡って 』

「俺をジジイ呼ばわりするよりだな、隕石はどーしたよ隕石は」

「わたくし、その為にこちらに参ったんです~」

「ここに落ちるんだったよね?」

「その通りです白姫!」

「おい」

「まあまあランよ、このねーちゃ、いやにーちゃんか。どっちでも良いけどよ、喧嘩も制裁も後にしてくれや。話聞くのが先だろ」




967『 送信ボタン 』

「ありがとうございます、白鷲さん~」

「おうよ。で、アンタは何でわざわざこっち来たんだ?」

「手短にお伝えしますと~、別所に集まっている鳳凰種でそこそこ大規模な魔方陣の行使を計画したんです~。後はタイミングを見て解放すればいいんですけど~」

「そのタイミングを見る係って事か」

「はい~」




968『 一生敵わない 』

「大規模って、何するの?」

「隕石をはね飛ばそうかな~って思いまして~」

「賛成しかねるな」

「何故ですかお師匠~」

「何処ぞに墜ちるのは同じだろう。どの程度の石を想定してどの程度の威力を練っておるかは知らんが、最悪集落に直撃しかねんぞ」

「ですけど~」

「いっそ反転させて沈めたらどうだ?」




969『 削られるこの命 』

「またお師匠はそういう事をさらりと言うんですから~」

「ラン、どういう事?」

「んー、盾で防御しようとしてる人に、どうせなら敵を斬っちゃえば二撃めが来ないよってアドバイスしてるのに近いかな。しかも装備に剣は無し」

「ムチャクチャね」

「それができるのがユンだけどね」

「ムチャクチャね!?」




970『 大切だった人 』

「沈めるとは衝撃と質量と毒と炎を殺す事で~、衝撃を逆噴射すれば良いだけの術式とは全くの別物です~。相変わらず彼我の差を把握する事だけ異様に鈍いんですからお師匠は~」

「ねえラン、あたしもう自称ユノちゃんが何言ってるのか分からない」

「自分の力量を把握しろって叱られてるんだよ、ユンが」




971『 夜明けの空気 』

「お師匠にはまだお説教すべき点がありますが~」

「弟子に叱られる師匠って」

「マオ、細かい事は気にしちゃダメ」

「細かいの?」

「細かいかどうかとか気にしたら負けだよ」

「負けるのは嫌ね!」

「ん、じゃあ気にせず行こうか」

「分かった!」

「チョロいな嬢ちゃん」

「ガーディ煩い」

「時間切れです~」




972『 焦った顔 』

「時間切れ?」

「皆様、何か気付きませんか~?」

「んー?」

「あら可愛いお嬢さん、何かお気付きですか~?」

「分かんないけど、さっきと何かが違ってる気はするのよね」

「もう一息ですね~」

「あ!」

「はいお嬢さん、どうぞ~」

「影が濃い!」

「それも変化ではありますけど~、副次的な変化ですね~」




973『 頼むから 』

「待った」

「はい白姫~、少しなら待てますよ~」

「マオ、影が濃いって?」

「え、うん。さっきよりくっきりしてる気が……ラン、何でいきなり上向いたの?」

「見ても分からない、か」

「白姫は正解ですね~」

「なぜ分かった?」

「白姫が遊んでくれません~」

「後でいくらでも搾ってやるからすぐ答えろ」




974『 夕日に照らされた頬 』

「はね飛ばそうとした都合上、今も隕石の捕捉を続けておりまして~」

「そんな情報流れてないけど」

「わたくしも術式維持に参加していますから~」

「……ユン?」

「出来るだろうな」

「そっか、あり得るか」

「わたくしの信用がない事を悲しみたいところですけど~、皆様お互いのお顔をご覧くださいな~」




975『 「泣きたいの?」 』

「ラン赤っ」

「マオもだよ」

「おじーちゃんも赤っ」

「ヤメロそれ飲んだくれジジイみたいに聞こえるから、ヤメロ」

「こんな時でもツッコミを忘れないなんて、良い芸人になれるわおじーちゃん」

「ならねぇよ!」

「ユンちゃん、は分かり難い!」

「当方黒尽くめ故な」

「おい聞け、ヒトの話はちゃんと聞け」




976『 「食べちゃうぞ」 』

「わたくし達だけが、隕石の影響を受けてるんですよ~」

「赤いのと、影が濃いのが?」

「隕石とは燃える石ですから~」

「なんであたし達だけなの?」

「あら可愛いお嬢さん、ここが何に成ろうとしている土地なのかお忘れですか~?」

「あ、そっか。死なずの森なら、そりゃ隕石の影響なんて受けないわね」




977『 蘇ったいつかの君 』

「じゃあ、死なずの森に墜ちた隕石はどうなるの?」

「どうなるんでしょうね~?」

「ラン」

「うーん、気のせいだと思うよ。多分だけど」

「て事は、わざとの可能性もあるって事よねシメる」

「ダメです」

「ランのケチー」

「はいはい、全部解決したら止めないから」

「ホント?」

「何なら手伝ってあげるよ」




978『 崩れ落ちた秩序 』

「お二人で何のお話です~?」

「自称ユノちゃんをシメる話」

「何故に!?」

「さっきの、どうなるんでしょうね~って言い方が小さい子に対する言い方みたいでイラッとしたから」

「気のせいですよぅ~、ですよね白姫~」

「僕は嫌な呼び名を改めないキミの援護はしないって決めてるから」

「しらひめぇ~」




979『 心臓を撃ちぬいた 』

「ユピよ」

「この姿の時はユノだと何度も申し上げている筈ですよお師匠!」

「それだ」

「どれですか」

「己が呼び名に拘る割に、他者の拘りには頓着せんから要らん軋轢を生んどるんだぞ」

「だって白姫は白姫じゃないですか~」

「相手の意思は尊重してやった方が円滑だが」

「それをお師匠が言うのですか」




980『 みんなのアイドル 』

「お師匠ほど自由奔放な人物、わたくし出会った事がありませんよ~」

「鳳凰種って皆フリーダムなんじゃないの?」

「それは違いますよ可愛いお嬢さん~わたくしのように和を尊ぶ者もいるんですよ~」

「ものすごく説得力があるわ」

「でしょう~?」

「鳳凰種が皆ぶっ飛んでる証拠として」

「何でですか~」




981『 もう会う事のない君へ 』

「協調性のあるヒトは他人の意見にちゃんと耳を貸すし、ヒトの嫌がる事はしないものでしょ?」

「わたくしがいつ嫌がる事をしたって言うんです~?」

「ランはずっと呼ぶなって言ってる」

「だって白姫ですし~」

「ほら、耳を貸さない」

「もういいよ、マオ」

「白姫ぇ~」

「一生会わなきゃ良いだけだから」




982『 泣き叫んだところで 』

「せっかくお近付きになれましたのに~」

「あたし、自称ユノちゃんはむしろ遠ざかったと思う」

「そんな~」

「ユピよ」

「何ですかお師匠~。わたくし今傷心なんです~」

「娘御に感謝する事だな」

「あたし?」

「昔のセイランの二度と会わないは、相手が存在しない状態を指しとったぞ?」

「ランが物騒!」




983『 過去に縋って 』

「ちょっと待とうか」

「だって、二度と会いたくないなーよし二度と会わない場所に送ろう、って事でしょ? これが物騒じゃないなら社会の大半は平和よね」

「え、現代社会は平和だよね?」

「ランが物騒!」

「ちょっとマオ!」

「ランはどうして物騒だと嫌なの? あたし一言も悪いなんて言ってないわよ」




984『 薄汚れた自分 』

「え」

「良いじゃない、ちょっとくらい過剰防衛しちゃっても。攻撃は最大の防御だって、うちの母さんも言ってたわよ」

「ちなみにお父さんは?」

「守ろうと思ったら負けだって」

「軍神がソレ言うと説得力ハンパねぇな」

「おじーちゃん、そうなの?」

「ジジイじゃねえ」

「それは良いから」

「よくねえよ」




985『 大丈夫だよ 』

「嬢ちゃん、軍神が何で軍神って呼ばれたか知ってるか?」

「知るわけないじゃない、二つ名持ってた事すらさっき知ったんだから」

「そりゃそうか。軍神はなぁ、任務達成率だけ見りゃむしろ低かったんだよ。だから侮るヤツらも多かった。だが一度でも一緒に仕事したら、もうそんな口きけなくなるんだよ」




986『 私の視界を奪った彼 』

「生存率が高いんでしょ? 一緒に仕事したメンバーの」

「何だ、知ってんじゃねぇか」

「さっき思い出したの。パパとオシゴトすると、どうしてだか死地が二、三転がってるんだけどぉ、どうしてだか誰も死なないのよねぇ、って凄くうっとりした顔で母さんが言ってたなあって」

「うっとり?」

「うっとり」




987『 ぶちのめしてやる 』

「吉祥から見ても死地が転がってたのか、軍神は」

「みたいよ。死にそうで死なないところがステキって、竜族の喧嘩の仲裁して帰ってきた父さんに抱き付きながら言ってたから」

「は?」

「何よ」

「嬢ちゃん、今なんつった」

「死にそうで死なないところが」

「その後! 誰の仲裁したって?」

「竜族だけど」




988『 裏切り者には制裁を 』

「まさかとは思うが念の為に訊くぞ。竜族夫婦の喧嘩の仲裁したんじゃねぇよな?」

「夫婦喧嘩じゃないわね」

「そうだよな」

「確か、他種族と恋に落ちて婿入りしたい息子と、自分の後を継いで族長になって欲しい父親の衝突だったから、親子喧嘩ね」

「さらにヤベェじゃねぇか!」

「そう?」

「そうだよ!」




989『 「ああ、うん、それで?」 』

「族長一族とかヤベェの最高峰だろ軍神マジ軍神だな」

「遠い目でそんな事言われても」

「スマン、ちと現実逃避をだな」

「ふーん?」

「嬢ちゃん分かってねぇな? 竜族ってのはヤベぇんだぞ?」

「ユンちゃんより?」

「そこ持ってくるかオイ」

「ね、どっち?」

「精霊の姐さん怒らせるよりゃマシかもなぁ」




990『 これで最期 』

「精霊怒らせるよりはマシ……ロクデモナイなって事だけは何となく理解したわ」

「そんだけ分かりゃあ充分だ。直に対面しないと実感すんのはキビシイが、しなくて良いなら避けといて損は無ぇ」

「結構向こう見ずなおじーちゃんが避けるレベルなのね」

「待て待て、誰が向こう見ずだ誰が」

「おじーちゃん」

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