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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
20/59

511-540

511【これだけは嫌い】

「おはよ、兄さん」

「ああおはよう、ボクの愛しい妹よ」

「体調は?」

「そんな事より愛しいシャオ、キミは今ボクへの愛を語ってはいなかったかい!?」

「気のせいよ」

「ボクが愛しいキミの言葉を聞き違えるとは思えないよ」

「じゃあ、夢でも見てたのね」

「夢、何て幸せな夢だろうか」

「それで良いのか」




512【願いがかなうなら】

「ボクの愛しい妹の言葉を疑うのも愚かな話でしょう」

「そうか。当人同士が納得しておるなら、当方がこれ以上とやかく言うても意味が無い話だな」

「いえ、心配いただいて嬉しく思います」

「そうか」

「そうです」

「兄さんがまともに話してる」

「マオが関わらないシオンは前からああだよ」

「悪い夢だわ」




513【 嘘なら尚良い 】

「でもマオ。マオが居ない時でも愛しいシャオがボクの妹がって、延々あのテンションで語り続けるよりは良いんじゃない?」

「そんな状態と比較するならそりゃあ今の方が断然まともだけど、なんか論点がズレてる気がする」

「それは否定しないけどね。さて、僕も論点を戻すけど」

「何?」

「仔猫は居た?」




514【みつめるその先に】

「それが居ないのよ。ランと兄さんが戻ってくる直前まで、そこら辺に居た筈なのに」

「そう。ユン」

「そこもと等以外に出入りした気配は察知しておらんぞ」

『ワタシも気付かなかったわ』

「僕ら全員に認識されず、すり抜けて外に出た可能性は?」

「低かろうな」

「だよね」

「ラン」

「何、マオ」

「居たわ」




515【たったひとつ壊せないもの】

「ほら、あそこ」

「あれが?」

「そう。こねこ」

『何てコト』

「レディ?」

『シオン、あぁシオン』

「どうしたんだい、チェズ。落ち着いて」

『古株のが見落とす筈だわ』

「ほう?」

『ワタシが気にかけるべきだったのに!』

「チェズ!?」

『ごめんなさい、可愛い子』

「お姉さま?」

『力を貸してちょうだい』




516【君が笑うから】

「勿論ですお姉さま!」

「待ってマオ」

「何よラン、まさか助けるなって言うの?」

「そうじゃないけど、先に説明してもらうべきだよ。なぁ、シオン?」

「そう、だね。チェズ、頼めるかい?」

『シオン』

「事情が分からないままの助力は、失敗を招く。キミを助けるのに失敗しては、ボクは生涯悔いが残る」




517【 授業が終わったあとの教室 】

『ありがとう、シオン』

「礼を言われるような話じゃない。ただボクが後悔したくないだけの事だ」

「シオン、マオから自分は愛らしくないって否定されたらどう思う?」

「すまないチェズ、ボクはキミに惨い事を言ってしまった」

『ふふ』

「なんか、ごめんなさいお姉さま」

『いいえ、それでこそシオンだわ』




518【 無理しちゃって 】

「さて。精霊殿が落ち着いたらしき所で良いかな?」

「え?」

「あっ」

「こねこ!」

「明らかに話の要な上に、見失っては誰も見付ける術が無いというのに放っておかれて、当方は大変驚いた」

「ユン、よく捕まえられたな」

「逃げる素振りも無かった故な」

「そこじゃなくて」

「ラン?」

「お前、猫ダメだろ」




519【 背中を押してくれたのは 】

「でもユンちゃん、あたしや兄さんと普通に会話してるわよ?」

「猫と猫族は違うのだろう?」

「確かにそんな事言ったけど」

「そこもと等は猫ではない。故に、問題は無い」

「マオ、仔猫引き取ってやって」

「ラン?」

「さっきからユンの発言が簡潔になってる。あれ多分、相当テンパッてる」

「そういえば」




520【 恋人のつもりで 】

「何、猫ではなく猫族の幼児だと思えば問題無い」

「他人様の子供の首元をつまんでぶら下げるのかお前は」

「いくら猫族でもその持ち方はしないわね」

「そうか」

「自己暗示しなくて良いから、おとなしくマオに持ってもらいな」

「それがだな」

「ん?」

「体が動かん」

「早く言え!」

「ホントに苦手なのね」




521【 見つめていいかな 】

「さて。問題の仔猫は確保したし、ユンはほっとけば落ち着くだろうし。レディ、どう?」

『ええ、平静を取り繕える程度には落ち着いたわ』

「あんまり大丈夫に聞こえないなあ」

『大丈夫よ。ワタシのシオンは此処に居る。それが分かっていれば、大丈夫』

「うん、シオン。目を離さないでやって」

「勿論だ」




522【背が伸びた】

「できれば一晩休ませてやりたいところだけど」

『これ以上事態が悪化する前に手を打ちたいの。今話すわ』

「ふむ。契約者の在る精霊殿がこれほど狼狽えるなぞ、契約者絡みしか考えられぬのだが」

「あ、ユンちゃんも落ち着いた?」

「娘御よ。悪いが少々距離をだな」

「はいはい、こねこを離せば良いのね」




523【 一晩だけ 】

『シオン』

「何だい、チェズ」

『ひとつ、質問に答えてくれるかしら』

「ボクに答えられる問いならば」

『ありがとう。ワタシと初めて会った時を、覚えてる?』

「勿論だよ。死なずの森の日暮れ時だろう」

『あの時シオンは、あの森にどの程度滞在していたのかしら』

「ほぼ丸一日かな」

『そう。ありがとう』




524【 届かない距離にいて 】

『ワタシとシオンが出会ったのは、森の中でも限りなく中央部だったの』

「待ってください、お姉さま。死なずの森の真ん中へ一日でなんて」

『ええ。ワタシでも三日はかかるわ』

「鳥型精霊のレディで三日か。僕でも一週間は欲しいな」

「ボクは嘘など言っていないよ?」

「分かってるよ、だから問題なんだ」




525【 愛ならここに 】

『今の情報を踏まえて、今から話す事を聞いてちょうだい』

「もう結構な問題が発覚してるけど」

『本題はもっと厄介よ』

「聞くのが恐いな」

「でも聞かないわけにはいかないわ。兄さんに関する問題なんですよね、お姉さま」

『ええそうよ、可愛い子』

「ふむ。厄はこれからか被った後か。どちらだ、精霊殿」




526【 真っ赤なウソ 】

『両方ね』

「災難が複数あるって事ですかお姉さま」

『違うわ。もう起こった事であり、これから起こる事でもあるの』

「ああ、なるほど。だから死なずの森が増えたように」

『流石ね。正解よ、鳳の』

「こればっかりは外れて欲しかったよ」

『ワタシもそうあって欲しかったわ』

「二人だけで納得しないでよ」




527【 愛はここに 】

『どう説明すれば良いのかしら』

「難しいなぁ」

「説明しにくいの?」

「感覚がものを言うというか」

「鳳凰種の術行使みたいな?」

「説明が難しいって意味では、近いかも」

「じゃあ良いわ。何が起こるのか、何をすれば良いのかだけ教えて」

「マオ?」

「家族がかかってるのに、理解に時間かけたくないわ」




528【季節が変わったら】

『そこなのよね』

「レディ?」

『ワタシの目的はシオンを助けるコトで、その為には可愛い子の協力が不可欠。ここまでは確かなコトよ』

「特異点が見えておらんという事か?」

『惜しいわね』

「もしや、未だ定まっておらんのか?」

「それは良い事なの、悪い事なの?」

『両方ね。最良か最悪かの二択かしら』




529【ごはんができたよ】

「話の腰を折って悪いけれど、ひとまず食事にしないかい?」

「ホントに悪いわよ!」

「シオン、お前の話をしてるんだが」

「分かっているつもりだが、ボクの愛しい妹に食事を抜かせるわけにはいかないよ」

『そうね。食べてらっしゃい、可愛い子』

「でもお姉さま!」

『ワタシに考えをまとめる時間を頂戴』




530【みつめるその先に】

「チェズが考えても分からない事を、ボクが悩んだって仕方ないからね」

「お姉さまが解決できなかったらどうするの?」

「その時はボクががむしゃらに足掻いてみる番かな」

「楽天的なのか頼もしいのか」

「その阿呆と紙一重な性質が、精霊殿は気に入ったのだろうて」

「今まで何とかなってるのが問題よね」




531【 真実の色は? 】

「キミ達に問いたい。チェズはどう見えている?」

「鳥型精霊でしょ。キレイな紫のグラデーションのかかった」

「そこだよ、シャオ。キミが抱えている仔猫が、ボクにはチェズと同じに見える」

「つまり、毛並みが紫に見えるって事か?」

「こんなに真っ白なのに」

「僕は黒猫に見えるけど」

「え?」

「ん?」




532【 ないしょばなし 】

「やはりそうか。毛色が紫の猫など聞いた事もないから、おかしいとは思ったんだ」

「羽色が紫の鳥は良いの?」

「チェズはあくまでも精霊だからね。鳥型なだけで鳥ではないよ」

「ねえ兄さん」

「何かな、ボクの愛しい妹よ」

「父さんが連れてたあの子って」

「おや、シャオは知らなかったんだね。そうだよ」




533【 優しいのはあなたにだけ 】

「何の話?」

「あたしが言っていいか分かんないから、秘密」

「そう」

「そうよ」

「その秘密の話はまだ続きそう?」

「ううん、もう終わったわ」

「そっか。じゃあ話を戻すけど、この仔猫はレディと縁深い存在って事で間違いないかな」

「だろうね。詳しい事はやっぱりチェズに聞かないと分からないけれど」




534【 想いの果て 】

『古株の、食事は良いの?』

「当方すこぶる燃費が良くてな。当方よりも精霊殿だろう」

『アラ、心配してくれるの?』

「同輩に心を砕くのは、至極当然と思うのだが」

『ふふ』

「そこそこ調子が戻った所で、先に一つ確認しておきたいのだが」

『おそらく、正解よ』

「そうか」

『ええ。あの仔猫はワタシだわ』




535【傷ついても】

「つまり、ボクとも縁深いって事になるね」

「なるの?」

「なるさ」

「ラン、なるの?」

「なるよ」

「そっか」

「なぜ兄の言葉を信じてはくれないのかな、ボクの愛しい妹よ」

「やだ兄さん、気のせいよ」

「そうだろうか」

「うじうじするなら、ホントになるかも」

「元気だとも!」

「それで良いのか、シオン」




536【愛してた】

「ボクの愛しい妹が元気なボクが好きだと言うのに、元気であらずにどうあれと!」

「いや、お前がそれで良いなら良いけどさ」

「あたし、別に好きとは言ってないわよ」

「ボクは愛しい妹から嫌われてしまったのかい!?」

「いきなり絶望するな。思い返してみなよ、シオンを嫌いになるとも言ってないから」




537【音楽室でのひととき】

「ランはあたしの味方なの、兄さんの味方なの?」

「僕は僕の味方だけど、その二択ならマオかな」

「選んでくれて嬉しいけど、素直に喜べない選び方ね」

「そもそも選ぶ選ばないで判断するものでもないからね」

「それはそうね、ごめんなさい」

「素直でよろしい」

「ついでに兄さんの妹賛歌止めてください」




538【 胸騒ぎ 】

「それは僕には荷が重いかな」

「見捨てられた!」

「人聞き悪い事言わないの」

「夫婦と小舅の小芝居は済んだか?」

「誰が夫婦よ!」

「ユンこそ、レディとの密談は済んだのか?」

「そこで少々慌てる程度の若さも必要ではないかと当方思うのだが」

「僕の分までマオが慌ててくれるし」

「成程、一理あるな」




539【 はぐらかさないで 】

「一利もないわよ!」

「マオ、ちょっと落ち着こうか」

「落ち着いてるわよ!」

「そうかなぁ。ほら、シオンの妹の愛しさリサイタルも一段落しそうだし」

「何そのあたしにとって嫌すぎるコンサート」

「落ち着いた?」

「だから落ち着いてるわよ。ユンちゃんが何か誤魔化そうとしてる事だって分かってるし」




540【 そっと抱いて 】

「当方、特に誤魔化そうとした訳ではないのだが」

「でも、話を逸らしたわよね。ランだって、気付いててユンちゃんに乗ったんでしょ」

「後で問い詰めるつもりではあったよ」

「あたしに言えない話?」

「いや、レディがシオンに聞かせたくないのかなって」

「え?」

「ユンには言えたなら、そういう事だよ」

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